無借金を勧める税理士vs借金を勧める税理士。後者の言い分

無借金を勧める税理士vs借金を勧める税理士。後者の言い分

無借金を勧める税理士もいれば、借金を勧める税理士もいるようで。

後者であるわたしが、後者の言い分についてお話をしていきます。

目次

ついに悪評が立ったのか?

先日、Googleアナリティクス(アクセス解析ツール)を眺めていたら。「借金を勧める税理士」というキーワードで、当ブログサイトをちょうど検索されているところでした。

あれまぁ、 もしや「借金を勧める税理士」として悪評でも立っているのかしら?

などと、ともすれば自意識過剰な心配をしていたわけですが。まぁ、どちらかと言えば「借金推奨派」の税理士であることは間違いない、と妙に納得をしたりもして。

いっぽうで、「無借金推奨派」の税理士というのもいるようですから。ここはひとつ、無借金推奨派の言い分について考えてみよう! と思い立ちました。

その言い分は、おそらくこのあたりに集約されるものと考えます ↓

無借金を勧める税理士の言い分
  • 無借金なら返済不能のリスクが無い
  • 借金すると格付けが悪くなる
  • 返済・利息の支払いで資金繰りが悪くなる

なるほど、なるほど。では、これらの言い分に対して、借金推奨派の言い分を対比させるカタチでお話をしてみましょうか。

ちなみに。無借金推奨派の税理士を非難する意図はまったくありません。言い分の違い、考え方の違いを明らかにする意図のみですからあしからず。

会社・個人事業者の方が顧問税理士を選ばれるときのご参考にもなるものと考えています。

本記事で言う「借金」は、「銀行からの融資」として話を進めます。 

 

無借金を勧める税理士の言い分

無借金なら返済不能のリスクが無い

会社が「無借金である」ということは、そもそも「返済」がないので、「返済不能」のリスクがありません。

返済不能で会社がつぶれる… ことがないわけです。

したがって、無借金であれば会社は安心だし、おカネを貸す側の銀行も安心だから融資をしたいと考えるはず。

だから、手元におカネ(現金預金)があるのなら、そのおカネで借金を少しでも早く返済をしてしまうのがよい。これが無借金推奨派の言い分です。

では、借金推奨派の言い分を

たしかに、借金をしなくていいのであれば、しないほうがいいのは間違いありません。けれども、借金が必要な会社・個人事業者もあります。

おカネ(現金預金)が無い、あるいは少ない会社・個人事業者です。

無借金ではあるもののギリギリのおカネでやりくりしている会社・個人事業者もありますが。たとえ黒字でも、資金ショートを起こしてしまえばおしまいです。

だから、まずは「借りてでもおカネを持つ」ことをおすすめしています。少なくとも、手元のおカネを減らしてまで借金を早く返済するのはおすすめできません(資金ショートの危険が高まるため)。

無借金を目指すのであれば、借金をしなくてもよいだけのおカネをじぶんで用意できるようになってから。具体的な目安としては、「平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の最低3ヶ月分以上の現金預金」を持ってからです。

なお、無借金の会社であれば、銀行も安心だから融資をしたがる。だから、いざというときにはおカネを借りられる。というのは「勘違い」です。

多くの場合、おカネを借りたいと考えるのは「赤字のとき」や「おカネが無い」ときです。そんなときにまで、銀行は「無借金だから安心」とは考えません。

そういう意味では、銀行からいつでも融資を受けられるような「優良企業」はまず無いのです。大企業に比べて信用に乏しい中小・零細企業はとくに、です。

銀行融資の基本は「借りられるときに借りておく」こと。いつか借金をするかもしれないというのであれば、「いま借りておく」ことを検討しましょう。

借金すると格付けが悪くなる

借金が増えると、いわゆる「格付け」が悪くなる。だから、銀行からの融資が受けにくくなる。

たとえば、自己資本比率。借金が増えると、自己資本比率は下がりますので、その分、銀行の格付けが低下する。

ほかにも、借金が増えることで悪化する財務指標もあるのだから、借金はしないほうがいい。返済できるおカネがあるなら、少しでも早く返済した方がいい。

これが無借金推奨派の言い分です。

では、借金推奨派の言い分を

たしかに、借金が増えると悪化する財務指標はあります。その点で、銀行の格付けに悪い影響を与えることは否定できません。

けれども、これには2つの反論があります。

まず1つめ。「借りてでもおカネを持つ」という借金であれば、実質的に借金は無いのと同じである、ということ。

たとえば、銀行から 1,000万円の融資を受けた場合。借金が 1,000万円増えますが、おカネ(現金預金)も 1,000万円増えます。

そのおカネを持っている限り、借金 1,000万円は無いのといっしょです。返済しようと思えばいつでも返済できるから。

わたしが借金を勧めるのは「ただただ借金をすること」ではありません。なんども繰り返しているとおり「借りてでもおカネを持つ」、そのための借金を勧めているだけです。

ただただ借金をする(借金をしたおカネを失くしてしまう)のでは、財務指標は悪化をするばかりですが、借りてでもおカネを持つ借金であれば、財務指標に「実質的な悪化」は見られません。

なお、自己資本比率について言えば。「借金を減らして改善する」よりは、「きちんと利益を出して内部留保を増やして改善する」のが本質です。借金があっても、利益があれば自己資本比率の悪化は防ぐことができます。

それからもうひとつ。2つめの反論は、財務指標や格付け以前に「資金繰り」がだいじだということ。

「黒字倒産」の言葉もあります。どれだけの黒字があったとしても、あるとき1円でもおカネ(現金預金)が足りなくなれば、会社はつぶれてしまうのです。

だとしたら、「財務指標を良くするために借金を早く返済する」のは本末転倒であることがわかります。財務指標は改善しても、手元のおカネが減った分、資金繰りは悪化するから、ですね。

財務指標の良し悪しがだいじじゃない、などとは言いませんが。まずは資金繰りです。もともとおカネが不足しがちな中小・零細企業はとくに、です。

目先の財務指標や格付けにとらわれていないか? 中長期的な資金繰りから借金の必要性を考えるようにしましょう。 

返済・利息の支払いで資金繰りが悪くなる

借金をすると、その返済と利息の支払いが必要になります。

したがって、その分だけ資金繰りが悪くなる。会社がつぶれてしまう可能性が高まるのだから、やはり借金はしないほうがよい。

できるだけ早く借金は返済してしまったほうがよい。これが無借金推奨派の言い分です。

では、借金推奨派の言い分を

たしかに。借金をすると、返済と利息の支払いが必要になります。銀行からの借入であれば、銀行への返済と利息の支払いです。

けれども。返済に関しては「借りたおカネをそのまま返すだけ」です。前述したとおり、借金をすれば、借金は増えますが同額のおカネ(現金預金)も増えます。

増えたおカネで返済をする、と考えれば。返済に困る、資金繰りに問題が起きることはないはずです。

そうは言うけど。借りたおカネはなにかしらに使うものではないのか? と思われるかもしれません。そのとおりです。

とはいえ、消えてなくなるわけではありません。

借りたおカネを、利益を生み出す資産の購入や費用の支払いにあてるのであれば、いずれ利益となりおカネとなり回収されるはずだからです。

また、わたしが借金を勧めるのは「借りてでもおカネを持つ」、つまり、「いますぐ使わないをおカネを借りてでも持っておきましょう」ということです。

万一の天災を含め、いざというときのためにおカネを備えておくことが、会社・事業の持続や成長の助けになります。

そのようなおカネを借りてでも持っている限りは、返済は「借りたおカネをそのまま返すだけ」ですから資金繰りに問題は起きません。

これに対して、利息は「一方的」に支払いが必要になります。借りたおカネとは別に、自社・じぶんで用意をしなければいけません。

ですが、いまは低金利ということもあって、「それほど大きな金額ではない」とも言えます。

仮に、1,000万円を2%の金利で借りたとしたら。当初の年間の利息は 20万円です。ひと月にすると 1.6万円。1日すると 555円です。

これを高いとみるか安いとみるか、ではありますが。多くの中小・零細企業にとって、手元に 1,000万円のおカネがあるかないかは大きな違いでしょう。

手元に 1,000万円あるほうが安心だ、と考えるのであれば。1日 555円の利息は「それほど大きな金額でもない」との見方もあるはずです。

表面的な金利だけではなく、やはり、中長期的な資金繰りから借金の必要性を考えるようにしましょう。

 

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まとめ

無借金を勧める税理士もいれば、借金を勧める税理士もいます。

どちらが絶対的に正しいということはなく、言い分の違い・考え方の違いがあるだけです。

会社・個人事業者の方が顧問税理士を選ばれるときには、そのあたりの違いも確認しておくとよいでしょう。

無借金を勧める税理士の言い分
  • 無借金なら返済不能のリスクが無い
  • 借金すると格付けが悪くなる
  • 返済・利息の支払いで資金繰りが悪くなる
無借金を勧める税理士vs借金を勧める税理士。後者の言い分

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