これから先、会社は銀行から融資が受けづらくなるものと考えます。
そこで、これから借りづらくなる銀行融資に対する3つのポイントについてお話をしていきます。
いまは特別に借りやすいだけ、というハナシ。
いま現在(2019年10月29日現在)において。会社はこれまで、銀行から融資を受けやすい状況にあったと言えます。
おもな理由の1つは、「世の中の景気がそれほど悪くはなかった」ことです。良くはなかったかもしれないけれど、そこまで悪くはない。
結果として、銀行からの融資残高を減らし、自己資本を増やす(あるいは維持できる)会社が多くありました。すると、決算書の内容も悪くはないので、銀行からの融資が受けやすくなります。
(※ 基本的に、銀行は決算書の内容が良い会社を好み、悪い会社を嫌う。内容が悪いと、貸したおカネが回収不能になる可能性が高いから)
いっぽうで。決算書が良くなれば、つまり、業績が良くなれば。会社は銀行からおカネを借りる必要もありません。
すると、銀行は貸出先がなくなりますから「どうにか貸したい、どこかに貸したい」と考える。結果として、借りる側は借りやすくなります。
ところが。このような状況が、これからも続くとは限りません。むしろ、続かないのではないか? これからは銀行融資が受けづらくなる、と考えられる要素があります。こちらです ↓
- 世の中の景気が悪くなる
- 信用保証協会付き融資が厳しくなる
消費税増税、オリンピック景気の終了、少子高齢化など。これらを背景に景気が悪くなれば、会社の業績も悪くなりがちです。決算書の内容が悪くなりますから、銀行からの融資は受けづらくなるでしょう。
加えて、2018年の中小企業信用保険法の見直し以降、信用保証協会付き融資は厳しくなる傾向にあります。
これまでは、借りる側も貸す側も「保証協会付きならダイジョーブ」という感覚がありましたが、これが変わりつつあるのがいまです。
なんでもかんでも保証協会付きではなく、各銀行もみずからリスクをとりなさい。もっとプロパー融資をしなさい。というのが、法の見直しが求めているところです。
プロパー融資となれば、銀行も甘い審査はできません。なにかあったら責任を取るのは保証協会ではなく、じぶんたち銀行だからですね。審査を受ける会社側としては、融資を受けづらくなることでしょう。
したがって。これまでのような「銀行から融資を受けやすい状況」ではなくなるだろう、というのがわたしの考えです。
そこで。
これから借りづらくなる銀行融資に対して、会社はどうしたらよいのか? そのポイントについてお話をしていきます。次の3つです ↓
- 決算書の内容を良くする
- 事業性評価に取り組む
- 借りられるときに借りる
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
借りづらくなる銀行融資に対する3つのポイント
《ポイント1》決算書の内容を良くする
これからの銀行は「もっとプロパー融資」という観点から、審査が厳しくなる。と、前述しました。
銀行が融資審査をするうえで、会社の「決算書」は大きなウエイトを占めるものです。その決算書が、より厳しく審査されることになります。
これからは景気が悪くなる、会社の業績も悪くなりがちだ、とも前述しました。これまでは融資を受けられていた会社も、決算書の審査で問題が生じる可能性が高まると言えるでしょう。
したがって、会社は「いかに決算書の内容を良くするか?」を考えなければいけません。
銀行が決算書の良し悪しをはかる指標はいろいろありますが。大きく見れば、次の3点に集約されます ↓
- 税引後利益+減価償却費 > 0(大きいほど良い)
- 資産の額 > 負債の額(資産の額が大きいほど良い)
- 借入金残高 ÷(税引後利益+減価償却費)<10(小さいほど良い)
なお、上記3つの指標を高める方法は「利益を出す」ことです。利益を出すほど、3つの指標は良くなります。決算書は良くなります。
利益を出すだなんてあたりまえのハナシだ、と思われるかもですが。税金を納めたくないばかりに利益を圧縮する考え方は、そこかしこにあるものです。
ほんとうは出せるはずの利益を出し惜しむ → 決算書が悪くなる → 融資が受けられない、という負の連鎖にハマる会社は少なくありません。
これから借りづらくなる銀行融資のなかで、みずから負の連鎖にハマるようなことがないように気をつけましょう。
《ポイント2》事業性評価に取り組む
いま、銀行業界では「事業性評価(による融資)」という言葉が話題になっています。その「事業性評価」とは、
財務データ(決算書など)や担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の「事業の内容」や「成長可能性」を適切に評価すること
を言います。このような「事業性評価(による融資)」を、金融庁が銀行に求めているのです。
これまでの融資は、まず決算書ありき。決算書の内容が悪ければ、担保・保証ありき。担保・保証もなければ融資をしない。ゆえに、「貸し渋り・貸し剥がし」との批判もありました。
そのような融資のカタチを変えていこう、というのが事業性評価です。
この点で。「事業の内容」や「成長可能性」は、決算書にあらわれるようなところではなく、銀行が会社の協力なくして評価することは困難です。
会社からの情報提供がなければ、銀行としても事業性評価を進めることは難しく、事業性評価による融資も進まないことになります。
いっぽうで。会社みずからが積極的に事業性評価に取り組むのであれば、銀行としても事業性評価を進めやすくなります。結果として、会社は事業性評価による融資を受けやすくなるでしょう。
2019年12月には、これまで銀行がよりどころとしてきた「金融検査マニュアル」の廃止も予定されており、事業性評価はますます加速するであろう流れにあります。
これからも銀行融資を受けたい・受けようと考える会社にとって、事業性評価への取り組みは欠かせません。具体的な取り組みについても、ぜひ押さえておきましょう ↓
ちなみに。事業性評価によって、決算書の内容が悪くても融資が受けられる、担保・保証は絶対に必要ない、というわけではありません。
あくまで「必要以上に依存しない」だけであり、決算書の内容がだいじであることは依然変わらず、合理的理由があれば担保・保証が必要であることも依然変わらず、です。
《ポイント3》借りられるときに借りる
銀行融資に関する「原理原則」として。「(会社が)借りたいときに借りられるわけではない」が挙げられます。
にもかかわらず。多くの会社が、借りたいときに借りようとしています。
なお、「借りたいとき」とは、おもに「赤字のとき」や「おカネが無いとき」です。会社が「困ったなぁ…」というときに借りようとしている。そいういうことです。
しかし、銀行は困った会社を助けるのが仕事ではありません。貸したおカネを返してくれる会社に融資をするのが仕事です。
したがって、困ったとき(=借りたいとき)に融資を受けにくい・受けられないのは当然だと言えます。
ではどうするか?
借りられるときに借りておくことです。赤字になったり、おカネが無くなってから、あわてて融資を受けなければならない… なんてことがないように。
銀行が「貸したおカネを返してくれる会社だ」と見てくれるうちに、あらかじめ借りておく。
具体的には、黒字が出ているうち、おカネを持っているうち。銀行が「おカネを借りませんか?」と言っているうち、です。
多くの会社が「おカネは必要ない、融資は必要ない」と考えているときこそが、実は融資を受けるべきタイミングなのです。
これからは借りづらくなる銀行融資、と冒頭で言いました。
であるならば。ますますだいじになるのが「借りられるときに借りる」という考え方です。前述した2つのポイント「決算書」と「事業性評価」とともに押さえておきましょう。
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まとめ
いま現在において。会社はこれまで、銀行から融資を受けやすい状況にあったと言えます。
ところが、それも特別なことであり。これからは銀行融資が受けづらくなるものと考えられます。
これから借りづらくなる銀行融資に対して、会社はどうしたらよいのか? そのポイントを押さえておきましょう。
- 決算書の内容を良くする
- 事業性評価に取り組む
- 借りられるときに借りる