決算書の損益計算書を見ると、「販売費及び一般管理費」には勘定科目がずらりと並んでいます。
なかでも、銀行がよく見ている勘定科目についてのお話です。
あまたある勘定科目のどれを見る?
会社が融資を受ける際、銀行からは決算書の提示を求められます。
その「決算書」について、銀行が見ているポイントはいろいろなのですが。なかでも、「販売費及び一般管理費」は、どこをよく見ているのか?
損益計算書を見れば、「販売費及び一般管理費」には内訳として「勘定科目」がずらりと並びます。
そのなかでも、銀行がよく見ている勘定科目が次の5つです ↓
- 役員報酬
- 従業員給与
- 減価償却費
- 交際費
- 租税公課
これらの勘定科目について、銀行はどのようなことを考えながら見ているのか? 決算書を見られる側の会社としても、知っておくとよいでしょう。
決算書を通じて、銀行からどのように見られているかがわかりますし。また、決算書の内容を銀行に説明するときのポイントにもなります。
それではこのあと、5つの勘定科目を順番に見ていきましょう。
銀行がよく見ている「販売費及び一般管理費」の勘定科目5選
《その1》役員報酬
役員報酬の金額が多すぎないか? あるいは、少なすぎないか? という目で銀行は見ています。
中小零細企業では、役員も株主も「社長とその一族」であることが多く、役員報酬の金額を社長が自由に決められる状況が少なくありません。
したがって銀行は、その金額が適正かどうかを心配しているわけです。
もし、役員報酬の金額が多すぎると。会社のおカネと社長一族のおカネとがいっしょになっている、つまり、公私混同が考えられます。
逆に、役員報酬の金額が少なすぎると。会社の利益を水増し(粉飾)するために、少なくしているのではないか? との疑いが生じます。
多すぎるにしても少なすぎるにしても、銀行からは「良い目では見られない」ということです。
なお、なにをもって「多すぎる・少なすぎる」とするのかは、基本的に「同業他社平均との比較」になります。銀行は同業他社のデータをたくさん持っていますので、そことの比較です。
銀行から「多すぎる・少なすぎる」と見られるようであれば、会社としては、役員報酬は「適正」だと説明することが大切になります(適性でない場合にはしかたありませんが)。
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《その2》従業員給与
前述の役員報酬も含めて、いわゆる「人件費」が販売費及び一般管理費に占める割合が高い会社は少なくありません。
よって、人件費の「多い・少ない」が会社の利益に大きな影響を与えることから、銀行は「従業員給与」にも注目をしています。
では、人件費の「多い・少ない」はどこで見るのか?
まずは「売上高人件費率」です。算式としては「人件費 ÷ 売上高」。人件費には、役員報酬と従業員給与に加えて、法定福利費や福利厚生費も含めるのが一般的です。
その「売上高人件費率」を同業他社平均と比べたり、その会社の過去の推移と比べたりして、銀行は人件費の「多い・少ない」を見ています。
結果、「多い(売上高人件費率が高い)」ということであれば、「人件費の割に売上が少ないなぁ(非効率)」と考えられる。
「少ない(売上高人件費率が低い)」ということであれば、「人件費の割に売上が多いなぁ(効率的)」とも考えられます。
いずれにせよ、次に見られるのが「従業員ひとりあたり給与」です。算式で言うと「従業員給与 ÷ 従業員数」。
これで、従業員の給与水準がわかります。
もし、会社が意図して「従業員ひとりあたり給与」を高めているのであれば、「売上高人件費率が高い」のは必ずしも悪いことではありません。
また、「従業員ひとりあたり給与」が低いのであれば、「売上高人件費率が低い」ことを手放しでは喜べません(従業員にとって不幸)。
このあたりを会社自身が把握しておき、銀行に説明できるようにしておきましょう。
《その3》減価償却費
減価償却費を「不足なく費用計上しているか?」を銀行はチェックしています。
具体的には、法人税法が定める限度額いっぱいまで減価償却費を計上しているかどうか、です。
限度額未満しか費用計上していない会社は、「利益を水増し(粉飾)するために、わざと計上を少なくしているのだろう」と、銀行からは見られます。
なお、不足があるときの不足金額は、法人税申告書に含まれる「別表十六」という書類の記載事項です。
法人税申告書は決算書といっしょに銀行へ提示するものですから、銀行は「別表十六」を見て、不足があるかどうかを確認できることになります。
じゃあ、記載をしなければいい。などというハナシも見聞きしますが、銀行は銀行で独自に減価償却を計算していたりもしますからやめましょう。姑息な悪だくみは火に油、です。
《その4》交際費
交際費は、「冗費(ムダな費用)」の代表として見られるところです。ゆえに「交際費が多すぎる」となれば、よい印象はありません。
とくに中小零細企業は、交際費を使うのも社長の自由ですから。あまり交際費が多いと、会社のおカネと社長のおカネの「公私混同」とも見られてしまいます。
では、なにをもって交際費の「多い・少ない」を見るのか? ひとつの指標になるのが「売上高交際費率」です。算式で言うと「交際費 ÷ 売上高」。売上高に対して、どれだけの交際費を使っているか。
その「売上高交際費率」を、同業他社平均や過去の推移と比べてみて、交際費の「多い・少ない」を銀行は見ています。
この点で、会社自身が「交際費が多い」との自覚があるのであれば、交際費の必要性や効果などを銀行に説明することも大切です。そのあたりは説明がないと、外部の者にはわかりません。
一般に、「交際費=冗費」とのイメージがありますが、必ずしもそうではない。自社にとっては「交際費が売上向上・持続のカギである」という会社もあるはずです。そこを理解してもらえるように説明しましょう。
また、似たようなところでは「広告宣伝費」が挙げられます。
交際費と同じく、銀行はじめ外部の者には、必要性や効果がわかりにくいところです。実際、交際費と言えるものが広告宣伝費に混じっていたりもします。
したがって、広告宣伝費に対する銀行の眼は意外と厳しく、「多すぎないか?」は見られているものです。
こちらも指標としては売上高に対する割合として「売上高広告宣伝費率」が使われます。算式で言うと「広告宣伝費 ÷ 売上高」です。
前年など過去の推移に比べて「売上高広告宣伝費率」が上昇しているような場合にはとくに、銀行に対してていねいな説明を心がけましょう。
《その5》租税公課
租税公課のなかには、会社が支払うさまざまな税金が含まれています。
一般的には、消費税(税込経理の場合)、印紙税、登録免許税、固定資産税、償却資産税、自動車税、不動産取得税など。
さらに、延滞税や延滞金、交通反則金など「ペナルティ的なもの」まで含まれます。
この点で。一般的な税金は問題ないにしても、ペナルティは問題です。
よって、租税公課の金額が多いときなどは、「ペナルティが含まれていないかどうか」という見方も出てきます。
ただし、決算書だけを見ていてもペナルティの有無はわかりません。どこを見ればわかるのかと言うと、法人税申告書の「別表五(二)」という書類です。
別表五(二)には、租税公課の内訳を記載することから、ペナルティの有無を知ることができます。
その結果、ペナルティがある・ペナルティが多いとなれば。「この会社はだいじょうぶなのかなぁ?」と、銀行からは不安・不審に思われることでしょう。
租税公課は、会社・社長の姿勢や行為があらわれるところですから、日ごろからじゅうぶんに注意が必要です。
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まとめ
決算書の損益計算書を見ると、「販売費及び一般管理費」には勘定科目がずらりと並んでいます。
そんなたくさんの勘定科目のなかでも、銀行がよく見ている勘定科目はどれなのか? また、その勘定科目について、銀行はどのようなことを考えながら見ているのか?
決算書を見られる側の会社としても、知っておくとよいでしょう。
決算書を通じて、銀行からどのように見られているかがわかりますし。また、決算書の内容を銀行に説明するときのポイントにもなります。
- 役員報酬
- 従業員給与
- 減価償却費
- 交際費
- 租税公課