預金平残が大きいと、銀行からの融資が受けやすくなる。と、言われています。その理由についてのお話です。
よきんへいざん、ってなんですか?
預金平残が大きいと、銀行からの融資が受けやすくなる。という話があります。
ちなみに「預金平残(よきんへいざん)」とは、「預金の平均残高」のことです。ある一定期間における預金の平均残高。
たとえば、2019年10月の預金平残を計算しようとした場合。
2019年10月1日から2019年10月31日まで、毎日の最終預金残高を合計します。その合計額を31(10月はぜんぶで 31日なので)で割った金額が、2019年10月の預金平残です。
このようにして、各銀行は融資先の「預金平残」を計算しています。
冒頭の話に戻って。預金平残が大きいと、銀行からの融資が受けやすくなるのはなぜなのか? その理由は次の3つです ↓
- いざというときの担保になる
- 実質金利が高くなる
- 取引があるとムゲにはできない
これらの理由を理解していれば、銀行に対して自社の「預金平残」を戦略的に利用することもできるはずです。
というわけで。3つの理由について、このあと順番に見ていきましょう。
「預金平残が大きい」と銀行融資が受けやすい理由
《理由1》いざというときの担保になる
冒頭、各銀行は融資先の「預金平残」を計算している、と言いました。
当然ながら、各銀行が計算している預金平残は、じぶんの銀行の預金平残です。他の銀行の預金平残までは知りようがありません。
たとえば、A会社におけるB銀行の預金平残が 1,000万円だという場合。A会社におけるB銀行の預金は日々変動してはいるものの、平均して 1,000万円はあるということになります。
これを見たB銀行が考えるのは、「1,000万円までの融資であればそれほど心配はないかなぁ」ということです。
つまり、1,000万円の融資をしたとしても 1,000万円の預金で返してもらうことができる。正式に担保にとっているわけではなけれど、担保みたいなものだ。銀行はそのように考えます。
なお、1,000万円の預金しかないから 1,000万円までしか融資が受けられない、というわけではありません。
決算書(業績)の良し悪しなど他の評価もありますし、信用保証協会付き融資でリスクを回避することもできるからです。
ただ、銀行自身がリスクをとる融資(プロパー融資)、なかでも無担保での融資となると、預金平残の金額がひとつの目安となるでしょう。
さきほどのA社で言えば。1,000万円の預金平残ですから、「1,000万円までの無担保融資であればだいじょうぶかなぁ」と銀行は考える。そういうことです。
したがって、プロパー融資や無担保融資を受けようとする銀行に対して預金をあずけることが、会社にとっての戦術となります。
《理由2》実質金利が高くなる
各銀行は「預金平残」を計算している、とお話をしました。銀行が計算をしているものとして「実質金利」も挙げられます。
実質金利とは? を具体例で計算してみましょう ↓
- A社に対するB銀行の融資 … 融資額 2,000万円、金利 年2%
- A社におけるB銀行の預金 … 預金額 1,000万円、金利 年0%
↓
実質金利
= (借入金利息-預金利息)÷(借入金-預金)
=(2,000万円 × 2% − 0万円)÷(2,000万円 − 1,000円)
= 年4%
低金利のご時世なので、預金金利は便宜的にゼロとしました。そのうえで、実質金利を計算すると、上記のとおり年4%になります。
B銀行は「実質的に 1,000万円しか貸していない(2,000万円 − 1,000万円)」のであり、だとしたら 「1,000万円に対する金利はいかほどなのか?」ということにポイントがあります。
結果、実質金利は 4%でした。これに対して、融資条件としての2%という金利を「表面金利」と呼びます。その差は実に2%。
表面的には2%の金利で融資をしているようではありますが、実質的には4%の金利で融資をしている。割がいい! と、考えるのが銀行です。
よって、融資を受けている銀行に対する預金平残が大きいほど、銀行にとっては割がいい融資、おいしい融資ができることになります。
おカネを借りるA社側にとってはシャクに触るかもですが、そこは逆手にとって考えてみましょう。
B銀行の表面金利が2%・実質金利は4%。もうひとつの取引銀行であるC銀行の表面金利が2%・実質金利は3%だとしたら?
実質金利の話をしてB銀行に金利の引き下げ交渉をすることができます。
B銀行は実質金利が4%なのだから、実質金利3%のC銀行よりも表面金利を下げる余地がありそうですよね? という交渉です。
あからさまには口にしないまでも、「金利を下げてもらえないのであれば、預金をC銀行に移してしまう方法もあるんだよなぁ」との追い打ちをかけることもできます(あからさまにやると銀行との関係が悪くなるので注意)。
同じ表面金利2%でも、実質金利を理解しているかどうかで金利交渉に差が出ることを覚えておきましょう。
《理由3》取引があるとムゲにはできない
「預金平残が大きい」に加えて、その預金口座で「取引が多い」と、その銀行からの融資は受けやすくなります。
ここで言う「取引」とは、売上代金の入金や仕入代金の支払い、従業員の給与振込、その他経費の支払いなど。
これらの取引について、銀行はじぶんの口座であれば日々確認をすることができます。確認を続けることで、その会社の状況をより理解できるようになりますから、より融資がしやすくなるのです。
会社の業績が悪いときでも融資を断ってしまえば、たくさんの取引に支障をきたしてしまうことがわかっていますから、「ムゲにはできない」との思いが銀行には生じます。
逆に、このような取引が無い場合。銀行が会社の状況を知る方法は、会社が提示する決算書や試算表、資金繰り表などを見ることに限られます。
ところが、それら決算書などが「ほんとう」かどうかは、銀行にしてみれば疑わしいところです(実際に粉飾決算もある)。
この点で、口座の取引を見ることができれば、ほんとうかどうかを確かめるのに有効な材料になります。だから、会社の状況がより理解できて、より融資がしやすくなるわけです。
したがって、融資を受けたい銀行に対しては「預金平残を大きくする」のと同時に「取引も多くする」のが、会社にとっての戦術となります。
ただ融資を受けるだけではなく、プロパー融資を受けたい、金利を引き下げたい、経営者保証を外したいなど、融資条件の改善を検討する場合にも同じです。
なお、取引を増やすことで、銀行には「振込手数料」などの手数料収入が増えるというメリットもあります。
利息収入に加えて手数料収入も増えるのですから、よりだいじな「お得意先」と見られる点で、融資先の業績が多少悪くなったとしても「ムゲにはできない」との思いも銀行にはあるでしょう。
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まとめ
預金平残が大きいと、銀行からの融資が受けやすくなる。と、言われています。
その理由を理解していれば、銀行に対して自社の「預金平残」を戦略的に利用することもできるはずです。3つの理由を押さえておきましょう。
- いざというときの担保になる
- 実質金利が高くなる
- 取引があるとムゲにはできない