税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと

税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと

税理士として銀行融資のお手伝いをしているわたしから、銀行対応について社長にお伝えしたい3つのことをお話します。

目次

やってはいけないのにやってしまっている社長

いまこうして、税理士としてお客さまの銀行融資をお手伝いしているなかで。また、税理士として 22年のあいだ、いろいろな会社・社長を見聞きしてきたなかで。

あらためて、銀行対応について社長に伝えたいことを考えてみました。次の3つです ↓

税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと
  1. 決算書を税理士任せにしない
  2. 税理士に「節税」ばかり言わない
  3. 「借りるときだけ」の銀行付き合いをしない

これらは、社長が「やってはいけないこと」をまとめたものです。

いっぽうで。わたしが知る限り、現実には「やってしまっている社長は少なくないなぁ」と感じるところでもあります。

つまり、誤った銀行対応をすることで、みずから銀行融資を難しくしている社長が少なくない、ということです。

そこでこのあと、「税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと」として、順番にお話をしていきます。

 

税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと

決算書を税理士任せにしない

会社が年に1度つくる「決算書」に、社長はどれだけ関わっているでしょうか。

この点で。決算書の作成は税理士任せ、できあがった決算書をサッと確認するぐらい。というのであれば気をつけなければいけません。

このような税理士任せの決算書は、「税金計算的にはじゅうぶん」だとしても「銀行融資を受けるには不十分」なケースがあるからです。

たとえば、同じ 1,000万円という利益の決算書だとしても。かたや「融資を受けやすい決算書」、かたや「融資を受けにくい決算書」ということがありえます。

誤解を恐れずに言えば、決算書には「銀行融資に強い見せ方」があり、「銀行融資に弱い見せ方」もあるのです。

税理士は税金の専門家として「税金計算」を考えて決算書をつくりますが、「銀行融資に強い見せ方」まで考えているかはわかりません。税理士しだいです。

そもそも、会社が税理士に依頼をしているのは「税務」であって、銀行融資はまた別のハナシだ、とも言えます。

したがって、社長は決算書を税理士任せにしてはいけません。銀行から融資を受けたい・受けなければならないと考える社長はとくに、です。

できあがった決算書は、税金計算的にじゅうぶんであることはもちろん、銀行融資を受けるうえでもじゅうぶんか? という目で見れるようでなければいけません。

ネットや書籍、セミナーなどで勉強をする。あるいは、顧問税理士に「ウチの決算書は銀行からどう見られているの?」などと聞いてみて教えてもらうのもおすすめです。

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いずれにせよ、決算書は「会社のもの」です。税理士がつくる(お手伝いをする)としても、税理士のものではありません。会社のものである以上、社長自身が、銀行融資の視点を持って決算書を見るようにしましょう。

ちなみに。決算書ができあがってからでは遅すぎます。できあがったものを修正することはできないので、決算書を見るのであればその前です。

税理士に決算書の作成をしてもらっているのであれば、税務署に提出する前に確認をして、必要があれば修正をしてもらうようにしましょう。

税理士に「節税」ばかり言わない

銀行から融資を受けるうえで大切なものはなにか? と聞かれたら。いろいろありますが、いちばん大切なものは「利益」です。

利益があるからこそ、会社は返済と利息の支払いができる。銀行はそのように考えていますし、実際にそのとおりだからです。

また。会社は利益を出すことで「内部留保」を増やすことができます。言い換えると「自己資本比率」が高まります。

自己資本比率は安全性をはかる指標のひとつであり、銀行も重視をするところ。利益が増えて、自己資本比率が高まることで、銀行融資は受けやすくなるのです。

にもかかわらず。税理士に向かって「節税、節税」ばかりを言う社長がいます。

せっかく利益が出ているのに、税理士から税額を聞くと「そんなに税金を払うくらいなら経費を使う!」と言う社長。

もちろん、節税もだいじなことですが、少なくとも「税金を払うくらいなら経費を使う」という発想はよくありません。

たとえば 1,000万円の利益で、税金が 300万円の会社があるとします。税率は 30%です。これを見た社長が「税金 300万円はイヤだから 500万円経費を使う」と言ったらどうでしょう。

利益は 500万円になり、税金は 150万円になりますね。税金が 300万円から 150万円に減りますから社長の思惑どおりです。

ところが、税金を支払ったあと手元に残るおカネはどうでしょう?

経費 500万円を使う前は 700万円です(利益 1,000万円 − 税金 300万円)。いっぽうで、経費 500万円を使ったあとは 350万円です(利益 500万円 − 税金 150万円)。その差は実に 350万円。

その「手元に残ったおカネ(税引後利益)」が返済原資になるので(利息支払は経費だが、元金返済は経費ではないので)、会社は 500万円の経費を使うことで 350万円の返済力を失ったことになります。

銀行は「税引後利益の10倍ていど」を融資上限額と見ていることから、3,500万円の融資を受けることができなくなった、と言い換えることができます。

税金を 150万円減らすことを選ぶか、3,500万円の融資を受けることを選ぶか? それは社長の考え方しだいですが、中小零細企業にとって、3,500万円の融資は決して無視できるものではないはずです。

ともすれば、「税金が少なくてよかったですね、社長」と言ってくれる税理士がいるかもしれないけれど。銀行融資という観点では、ちっともよくないということを理解しておきましょう。

「借りるときだけ」の銀行付き合いをしない

銀行融資を受けている・受けようとしている会社の銀行付き合いを見聞きしていると。「借りるときだけ」の付き合いをしている会社が少なくありません。

つまり、ふだんは銀行とろくろく話もしない。銀行が話をしようとしても、「用は無い」と追い返していたりもする。ところが、いざおカネが必要だとなると、銀行に話を聞くよう一方的に迫る… そんな会社があります。

これでは、銀行から「なんて勝手な会社なんだろう」と思われてもしかたがありません。そう思われてしまえば、よいお付き合いができないことは言うまでもありません。

ではどうするか? 銀行とは「ふだんからお付き合いをする」ことです。

具体的には、毎年決算の報告をする。決算書ができたら銀行に持参して、その報告と今後の見込みとを伝える。これが最低限です。

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できることなら、定期的に試算表も提示することで、定期的に会社の状況を伝えるようにするのがベストです。

このようにして銀行との接点を持つなかで、いろいろな話をすることができて、銀行は会社をより理解することができます。

理解してもらえるからこそ、会社が「いざおカネが必要だ」というときにも積極的な融資が期待できるというものでしょう。逆に、「借りるときだけ」のお付き合いでそれを期待できるものではありません。

ところで、銀行とは具体的にどのような話をしたらよいのか?

まずは「数字」です。決算書なり試算表なり、数字で状況を伝えることです。数字もなしに感覚だけで、良いだの悪いだのを伝えても説得力がありません。

なお、数字を伝えるにあたって不安があるのであれば、そこは顧問税理士のチカラを借りるのもおすすめです。同席してもらったり、事前にレクチャーを受けるなどして、銀行に伝えるべきポイントを押さえましょう。

それからもうひつ、銀行に話をしたいのは「商売」についてです。

自社がなにを売っている会社なのか?また、どこへどのように売っている会社なのか? いわゆる「ビジネスモデル」を銀行が理解していないケースは少なくありません。決算書からはわからないことだからです。

銀行が、融資先の商売やビジネスモデルをわかっていなければ、融資がしづらくなってしまいます。「数字」の話に加えて、ぜひ「商売」の話をするようにしましょう。

銀行と話をするときにも「数字」ばかり、という社長は意外と多いものです。

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まとめ

税理士として、いろいろな社長の銀行対応を見聞きしているなかには、「誤った銀行対応」が少なくありません。

誤った銀行対応をすることで、みずから銀行融資を難しくしてしまうことがないように。とくに以下の3点に気をつけましょう。

税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと
  1. 決算書を税理士任せにしない
  2. 税理士に「節税」ばかり言わない
  3. 「借りるときだけ」の銀行付き合いをしない
税理士の僕が銀行対応について社長に伝えたい3つのこと

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