借金が増えるのは良くない、悪いことだ! と思われるかもですが。必ずしも、悪いわけではありません。
ということで、銀行が見る「良い借入金の増加」と「悪い借入金の増加」についてのお話です。
借金が増えるのも悪くない
借金が増える、と聞くと。「それは良くない、悪いことだ!」と思われるかもしれないけれど。
実は、必ずしも悪いことだとは言えません。借金にも良し悪しがあるのです。
この点について。おカネを貸す側の「銀行」から見て、「良い借入金の増加」と「悪い借入金の増加」とがある、というお話をしていきます ↓
- 現金預金も増えている
- 売掛金やたな卸資産が増えている
- 事業に関係がある固定資産が増えている
- 社長からの借入金が増えている
- 投資や投機が増えている
- 赤字が増えている
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行が見る「良い借入金の増加」
現金預金も増えている
会社の借入金が増えているが、現金預金も増えているという場合。銀行は、その借入金の増加を悪いものだとは考えません。
たとえば、1,000万円の借入金が増えたとしても。現金預金も 1,000万円増えていれば、「借入金は無いのと同じ」だからです。
手元の現金預金に余裕を持たせるために借入をしているケースがこれにあたります。
いっぽうで。借入金が減っていても、現金預金も減っているという場合。結果として、あまりに現金預金が少なくなるようだと問題です。
言うまでもなく、資金繰りが破たんする可能性が高まるからです。
目安は平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の1ヶ月分。これよりも現金預金が少ない会社を銀行は警戒しています。
少しでも借金を減らしたいという気持ちはわかりますが、「現金預金を減らしすぎてまで借入金返済を優先する」ことがないように注意しましょう。
売掛金やたな卸資産が増えている
借入金が増えた分、売掛金やたな卸資産が増えているという場合。銀行は、原則、その借入金の増加を悪いものだとは考えません。
売掛金やたな卸資産はいずれ現金化されるものであり、増えた借入金の返済原資と見ることができるからです。
ところが、売掛金のなかに不良債権や架空債権がある、たな卸資産のなかに不良在庫や架空在庫があるとなれば、現金化に問題が生じます。
したがって銀行は、売掛金やたな卸資産が増えているのは「原則OK」としながらも、「不良」や「架空」の有無には細心の注意を払っていることは心得ておきましょう。
言い換えると。売掛金やたな卸資産が増加したときは、それらがたしかに現金化できるものであることを銀行にアピールしましょう。ということになります。
事業に関係がある固定資産が増えている
借入金が増えたいっぽうで、事業に関係がある固定資産が増えている。たとえば、店舗設備や工場の機械設備などの固定資産が増えている。
この場合、銀行はその借入金の増加を悪いものだとは考えません。固定資産があらたな利益を生み出す(返済原資にもなる)、と見ることができるからです。
ただし、ほんとうに利益を生み出せるものなのかどうか? 銀行にはよくわかりません。
そこで会社は、銀行に対して「事業計画書」を提示するのがよいでしょう。事業計画書へのおもな記載事項は次のとおりです ↓
- そもそも投資の必要性があるのか(なぜいま投資するのか)?
- 投資の内容は妥当か(たとえば高性能すぎる機械でないか)?
- 投資による利益はじゅうぶんか(いくらの利益を見込んでいるか)?
- 利益できちんと返済ができるか(何年で返済できるか)?
計画は計画でしかなく、現実はまた別のハナシではありますが。計画がない会社の現実と、計画がある会社の現実と、銀行に対してどちらに説得力があるかは言うまでもありません。
社長からの借入金が増えている
借入は借入でも、銀行からの借入ではなく、「社長からの借入(役員借入金)」が増えているというケースがあります。
この場合、銀行はその借入金の増加を悪いものだとは考えません。
多くの中小零細企業がそうであるように、オーナー社長であれば、会社に対して「早く返せ」「〇月〇日までに返せ」などとは言わないものです。社長からの借入は、極端を言えば返さなくてもいい。
であるならば。借金というよりは実質的に資本金だよね、と銀行は見ているのです。資本金の増加と見るのですから、自己資本比率アップなど財務に対する評価も良くなります。
この点で、銀行が「社長からの借入」と「銀行からの借入」とを確実に見分けることができるように、決算書上の表記には気をつけましょう。
具体的には、社長からの借入は「役員借入金」という勘定科目を使い、銀行からの借入とは完全に区分することです。
銀行が見る「悪い借入金の増加」
投資や投機が増えている
銀行からの借入金が増えている。これに対して、前述したような「現金預金」「売掛金やたな卸資産」「事業に関係がある固定資産」が増えているわけでもない、という場合。悪い借入金の増加を疑うことになります。
銀行から見た「悪い借入金の増加」のひとつが、投資や投機が増えているケースです。
たとえば、株式や投資信託など「値上がり狙い」の有価証券が増えている。値上がり狙いは「イチかバチか」であり、おカネを借りてまでやるものではありません。それでも借りるのは、悪い借入金の増加です。
イチかバチかの投資、ましてや投機に対して、銀行は融資をしないことを理解しておきましょう。
また、「事業に関係がない固定資産の増加」も似たようなものです。いますぐ使う見込みのない土地、ステータス目的の事務所や高級車など。借入ばかりが増えるうえに利益を生み出すものではなく… 返済原資に苦労をすることが少なくありません。
加えて、仮払金や立替金、社長に対する貸付金の増加なども挙げられます。
実際のなかみは、投資や投機、事業に関係がない固定資産、その他ムダ使い… が散見されるところです。
借入金が増加している場合はもちろんですが、そもそも、「仮払金や立替金、社長に対する貸付金」は銀行に嫌われることを覚えておきましょう。
赤字が増えている
借入金が増えているのに対して、なんらの資産も増えていないという場合。借り入れしたおカネは「赤字の補てん」に使われた、と見ることになります。
赤字によっておカネが減っていく。おカネが減るのを補うためにおカネを借りる。当然、良いことではなく、悪い借入金の増加です。
そうなると、銀行としても融資をしづらいところになりますし、場合によっては回収を急ぐことにもなるでしょう。
いずれにせよ、会社としては困ってしまいますから、「赤字は改善できる」ことを銀行にアピールすることが大切です ↓
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まとめ
借金が増える、と聞くと。「それは良くない、悪いことだ!」と思われがちではありますが。必ずしも悪い、とばかりは言い切れません。
おカネを貸す側である銀行から見た場合にも、「良い借入金の増加」と「悪い借入金の増加」とがあることを押さえておきましょう。
- 現金預金も増えている
- 売掛金やたな卸資産が増えている
- 事業に関係がある固定資産が増えている
- 社長からの借入金が増えている
- 投資や投機が増えている
- 赤字が増えている