審査が速く、入金が速い! が売りの「オンライン融資」。
そんなオンライン融資を受けたいのであれば、あらかじめやっておくべき「準備」がありますよ、というお話です。
審査が速く、入金が速い!のは魅力的。
海外での急成長とともに、日本国内でも広がりを見せている「オンライン融資」。
オンライン融資とは。その名のとおり、「申し込みから審査・入金までオンライン(インターネット)を利用して行う融資」です。
銀行口座の取引履歴や会計ソフトなどの膨大なデータを、「AI(人工知能)」によって分析・審査するところに特徴があります。
ゆえに、「人」を介する「従来の銀行融資」に比べて、より迅速に融資を実行できる。と、言われているのがオンライン融資です。
実際、「審査が速く、入金が速い!」というのは、オンライン融資の売り文句にもなっています。
そんなオンライン融資を、会社・個人事業者が受けたいと考えるのであれば、あらかじめやっておくべき「準備」があります。次の3つです ↓
- 所定の銀行口座を持つ、所定の会計ソフトを使う
- 銀行口座での取引を「明瞭」にする
- 会計ソフトでの処理を「正確」にする
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
そもそも、「急いで融資を受けなければいけない」という状況には問題があります。「審査が速く、入金が速い!」からと言って、オンライン融資の多用は禁物です。こちらの記事も参考にどうぞ ↓
オンライン融資を受けたいならやっておくべき3つの準備
《準備1》所定の銀行口座を持つ、所定の会計ソフトを使う
ひとくちに「オンライン融資」と言ってもいろいろあります。そこで、例としていくつかのオンライン融資を挙げてみましょう ↓
サービス名 | 銀行系 | ノンバンク系 | ||
みずほスマートビジネスローン | Biz LENDING | ALTOA | Biz Accel | |
提供企業 | みずほ銀行 | 三菱UFJ銀行 | アルトア | マネーフォワードファイン |
融資金額 | 1,000万円以内 | 300万円以内 | 300万円以内 | 500万円以内 |
返済期間 | 12ヶ月以内 | 6ヶ月以内 | 12ヶ月以内 | 13ヶ月以内 |
金利(年利) | 1〜14% | 15%未満 | 2.8〜14.8% | 4.8〜18.0% |
最短審査期間 | 2営業日 | 翌営業日 | 即日 | 3営業日 |
資金使途 | 運転資金 | 運転資金・設備資金 | 運転資金・設備資金 | 運転資金・設備資金 |
担保・保証 | ・担保不要 ・代表者の連帯保証要 | 不要 | 不要 | 不要 |
融資対象 | ・法人 ・みずほ銀行に口座がある | ・法人、個人事業者 ・三菱UFJ銀行に口座がある | ・法人、個人事業者 ・弥生会計またはやよいの青色申告を利用 | ・法人、個人事業者 ・マネーフォワード会計または確定申告を利用 |
上表の最下段にある「融資対象」を見てみると。まずは、「銀行口座」があることを必要とする「銀行系」のオンライン融資があります。
具体的には、みずほ銀行の「みずほスマートビジネスローン」と、三菱UFJ銀行の「Biz LENDING」です(表の左側2つ)。
それとは別に、「弥生会計」や「マネーフォワード」などの「会計ソフト」の利用を必要とする「ノンバンク系」のオンライン融資があります。
具体的には、アルトアの「ALTOA」と、マネーフォワードファインの「Biz Accel」です(表の右側2つ)。
このように、「銀行口座があること」や、「会計ソフトを利用していること」が求められるオンライン融資がある点に注意しなければいけません。
それぞれのオンライン融資の「貸付条件」を確認すると。銀行口座については、たとえば、「一定期間以上のあいだ、入出金履歴がある口座を持っていること」といった記載があります。
会計ソフトについては、「12ヶ月以上の会計データがあること」といった記載です。
したがって、所定の銀行口座も持たずに、あるいは所定の会計ソフトの利用もなしに、オンライン融資を受けることはできません。
銀行口座にしても会計ソフトの利用にしても、一定期間の「時間」が必要になりますから、あらかじめ準備が必要であることを覚えておきましょう。
《準備2》銀行口座での取引を「明瞭」にする
オンライン融資では、銀行口座の取引履歴を審査されることはお伝えをしたとおりです。
ゆえに、銀行口座での取引は「明瞭」にするよう気をつけなければいけません。
たとえば。現金の入金や出金は、それ自体が「不明瞭」です。「現金の入金」という取引だけでは、それが売上代金なのか、経費の返金なのか、などがわかりません。
同じように、「現金の出金」という取引だけでは、それが経費の支払いなのか、手元現金の引き出しなのか、などがわかりません。つまり、「現金の入出金」が多いと、取引内容がわからずに不明瞭になる、ということです。
したがって、売上代金については現金で受け取るのではなく、銀行口座に振り込みをしてもらう。経費の支払いであれば、銀行口座から振り込みをするなどして、銀行口座を見るだけで取引がわかるようにしましょう。
加えて、売上代金の入金遅延、仕入代金や経費の支払遅延にも注意が必要です。「遅延」もまた、貸し手にとっては「不明瞭」な取引のひとつになります。
たとえば、得意先のA社から、毎月末に売上代金の入金があるという場合。あるとき以降、A社からの入金が翌月以降にズレ込んでいる… すると、A社に対する売掛金(未回収の売上代金)は不良債権化している、と見られます。
不良債権が増えれば、当然、自社の資金繰りにも影響をきたすのですから、貸し手としては「融資をするのは危険だ」という判断をすることでしょう。
では、仕入先のB社へ、毎月末に仕入代金の支払いをしているという場合はどうでしょうか。あるとき以降、B社への支払いが翌月以降にズレ込んでいる… すると、期限に支払いができないくらい資金繰りが厳しい、と見られます。
あるいは、期限を守ることができないダメな会社だ、と見られるかもしれません。いずれにせよ、貸し手としては「融資をするのは危険だ」という判断をすることでしょう。
危険だと判断されれば、融資が受けにくくなる。融資が受けられたとしても、融資条件(融資金額や金利など)が悪くなることが考えられます。
入金遅延がないように、与信・督促をきちんとやる。支払遅延がないように、支払期限・資金繰りに気をつける。
オンライン融資では「銀行口座の取引履歴」を見られるのですから、銀行口座での取引を不明瞭にしないこと。日ごろから、取引は明瞭にするようにしましょう。
《準備3》会計ソフトでの処理を「正確」にする
会計ソフトのデータを審査するオンライン融資の場合、当然ながら、会計ソフトでの処理が「正確」であることが重要です。
たとえば、現金の残高がマイナスになっている日がある、という処理があるとすると。会計のルールとして「現金の残高がマイナス」は間違いであり、その会社の経理処理は「不正確」だと見られてしまいます。
不正確な処理の会計データは信用できませんから、貸し手としては「融資をするのは危険だ」という判断をすることでしょう。
同じように、売掛金や買掛金の残高がおかしい、合っていないなども「不正確」として見られるはずです。
オンライン融資では、膨大な会計データであっても、AIが短時間のうちに、しかも的確にチェックします。人の目では見逃してしまうようなことでも、見抜かれると考えておいたほうがよいでしょう。
不正確という点では、「粉飾(利益の水増し)」も挙げられます。銀行から融資を受けたいあまり、粉飾をしてしまう会社があるため、貸し手は警戒をしているところです。
その粉飾についても、AIであれば、より見抜かれる確率は高くなるものと考えられます。売上の架空計上や、架空在庫の積み増し、債務の簿外化なども、過去の推移や他社比較からあぶり出されることでしょう。
そういう意味では、「オンライン融資の審査は、従来の銀行融資以上に厳しい」と言えます。粉飾をしてはいけないのはもちろんですが、厳しい目で見られていることは覚えておきましょう。
また、会計データの審査では、バックデート(日をさかのぼる)による経理処理についても見られる可能性があります。
会計ソフトには、データの入力日や修正日の情報が記録されているものもあることから、バックデートによる経理処理を把握することもできるのです。
たとえば。きょう、2月10日の取引を、3ヶ月も4ヶ月もあとになって「入力」をしているとしたらどうでしょうか。タイムリーに経理をしていない、あるいはできない、「管理能力が低い会社」として見られるかもしれません。
いちど入力した取引を、3ヶ月も4ヶ月もあとになって「修正」をしているケースも似たようなものです。修正自体が悪いわけではありませんが、修正がいくどとなく行われているようだと、なんとも疑わしいばかりでしょう。
このように、会計ソフトでの処理に不正確があると、融資が受けにくくなる。融資が受けられたとしても、融資条件(融資金額や金利など)が悪くなることが考えられます。
日ごろから「正確」に処理をするよう、気をつけておきましょう。
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まとめ
審査が速く、入金が速い! が売りの「オンライン融資」。
そんなオンライン融資を受けたいのであれば、あらかじめやっておくべき3つの「準備」があることを覚えておきましょう。
いずれの準備も、いざとなってからでは遅すぎます。
- 所定の銀行口座を持つ、所定の会計ソフトを使う
- 銀行口座での取引を「明瞭」にする
- 会計ソフトでの処理を「正確」にする