銀行融資を受ける会社の社長には、できれば「担保・保証は無しにしてほしい、外してほしい」という思いがあるでしょう。
そこで、銀行融資の担保・保証はいつ外せる?どう外す?のポイントについてお話をしていきます。
できれば無しにして欲しい担保・保証
会社・事業における銀行融資について。金利や返済期間など、数ある融資条件のひとつに「担保・保証」が挙げられます。
具体的には、不動産担保や経営者保証など。これらは融資を受けるためにはやむを得ないこともありますが、できれば「担保・保証は無しにしてほしい、外してほしい」というのが社長の思いでしょう。
そこで、銀行融資の担保・保証はいつ外せるのか?どう外すのか?5つの事例でお話をしていきます。こちらです ↓
- 経営者保証ガイドラインを目安にする
- 所要運転資金を計算する
- 実質無借金をアピールする
- 他の銀行からの提案を活かす
- 他の銀行にしかける
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資の担保・保証はいつ外せる?どう外す?のポイント5選
《ポイント1》経営者保証ガイドラインを目安にする
会社が銀行から融資を受けるときには、社長の連帯保証や社長個人の資産を担保に求められることが少なくありません。いわゆる「経営者保証」です。
この点で、「経営者保証ガイドライン」というものがあります。このガイドラインは法令ではなく、強制力こそないものの、「経営者保証が必要か否か」の目安として存在をしているものです。
したがって、ガイドラインに示されている項目にもとづいて、銀行に担保・保証を外してもらうよう働きかけることを検討してみましょう。具体的な項目はこちらです ↓
- (1)法人と経営者との関係の明確な区分・分離
- (2)財務基盤の強化
- (3)財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
なんのこっちゃ?と思われるかもですが。補足をすると、
(1)は、会社から社長に対して私用目的の貸付けをしない、とか。プライベートな支払いが会社の経費に混じっていない、とか。社長やその家族の給与が高過ぎない、とか。
(2)は、借入を返済できるだけの利益をしっかり出すこと。言い換えると、「借入金返済額<税引後利益+減価償却費」。そして、多少の業績悪化では傾かないように、利益を溜め込んでいる(内部留保がある)こと。自己資本比率 20%以上が目安になります。
(3)は、粉飾などせずクリーンな決算書をつくっている、月次決算も毎月やっている・銀行にも提示する、計画を立てて事業見通しも把握している、といった感じです。
これらの項目をクリアしているときが、担保・保証を外すタイミングになります。経営者保証ガイドライン、という言葉を出して交渉してみましょう。
《ポイント2》所要運転資金を計算する
「所要運転資金」という言葉があります。経常運転資金や正常運転資金などとも呼ばれます。算式にすると、
- 所要運転資金 = 売上債権(売掛金・受取手形) + たな卸資産(在庫) ー 仕入債務(買掛金・支払手形)
上記算式中の「売上債権(売掛金・受取手形)」と「たな卸資産(在庫)」は、おカネが入金されるのを待っている状態のもの。
仕入債務(買掛金・支払手形)は、逆におカネを支払うのを待ってもらっている状態のものです。
結果として、両者の差額である「所要運転資金」分のおカネが無いと、資金繰りはもたない(経費の支払いなどができない)ことになります。
所要運転資金とは、「会社・事業を続けていくにあたって必要なおカネ」を言うのです。
したがって、会社は「所要運転資金分のおカネを用意するべく、銀行から融資を受ける」というのが財務の常套手段です(自己資金で準備をするのはなかなか困難なので)。
この所要運転資金分の融資について、もしも担保・保証がついているのだとしたら。理屈で言えば「おかしな話」になります。
なぜなら、所要運転資金に含まれる売上債権やたな卸資産は、近い将来に現金化するはずのものだからです。銀行がとりっぱぐれる可能性は小さく、売上債権やたな卸資産は担保のようなものだ、とも言えます。
にもかかわらず、担保・保証をとるのであれば。それはやりすぎだ、とのアピールをすべきところでしょう。そのためには、自社の「所要運転資金」の金額を計算して把握しておくことです。
ただし。会社の業績が悪いなど、信用不安がある場合にはアピールもしづらくなる。説得力がなくなることは覚えておきましょう。
《ポイント3》実質無借金をアピールする
次のような会社があるとします ↓
- 現金預金 3,000万円
- 売掛金 2,000万円
- たな卸資産 2,000万円
- 買掛金 2,000万円
- 銀行からの借入金 5,000万円
この会社がもし、担保・保証をとられているのだとしたら、「ちょっとおかしい」と考えるべきところです。では、なにがおかしいのか?
まずは、前述した「所要運転資金」を計算してみましょう。売掛金 2,000万円+たな卸資産 2,000万円 − 買掛金 2,000万円、よって所要運転資金は 2,000万円です。
所要運転資金については、売掛金・たな卸資産が担保みたいなものなのですから、ほかに担保・保証をとるのはやりすぎ。というのは、先ほどお話をしたとおりです。
そう考えると、「銀行からの借入金 5,000万円」のうち、所要運転資金分の 2,000万円については担保・保証は不要だと言えます。残りの借入金は 3,000万円です。
次に、現金預金に注目してみましょう。3,000万円あります。借入金 3,000万円と現金預金 3,000万円。その気になれば返済できてしまうのですから、借入金はないのと同じだ、と言えます。
これでも担保・保証は必要になりますか? という話です。所要運転資金や現金預金によって「実質無借金」なのであれば、銀行にアピールをしてみましょう。
《ポイント4》他の銀行からの提案を活かす
たとえば、自社が3つの銀行から融資を受けているとして。それぞれの銀行の融資残高は次のとおりだとします ↓
- A銀行 ・・・ 7,000万円
- B銀行 ・・・ 2,000万円
- C銀行 ・・・ 1,000万円
A銀行は融資残高シェア 70%、圧倒的です。このような状況では、B銀行やC銀行は、シェアを奪いたいところでしょう。
すると、B銀行やC銀行から、「融資提案」を持ち込まれることがあります。その提案が「担保・保証は無し」の融資であれば、A銀行との交渉に活かすことができます。
A銀行のような圧倒的シェアの銀行が、担保・保証をガチガチにとっていることは少なくありません。圧倒的シェアでもあることから、会社がチカラ関係で負けているのです。
そこで、B銀行やC銀行からの提案を、A銀行に伝えてみましょう。つまり、「他の銀行は担保・保証は無しでと言っている。A銀行が担保・保証を外してくれないのであれば、他の銀行に借り換えも検討しなければいけない」と、そんな話です。
A銀行が「借り換えは困る」と考えれば、A銀行が担保・保証を外すことに応じてくれる可能性があります。ただし、A銀行からの評価が悪く、「お好きにどうぞ」ということになる可能性もあります。
借り換えは銀行に対する「裏切り行為」に当たるため、慎重な対応が必要です。借り換え後は、A銀行からの融資は難しくなることを前提に考えておきましょう。
《ポイント5》他の銀行にしかける
いましがた、他の銀行からの提案を活かす、という話をしました。これに似た話として、会社のほうから他の銀行にしかける、という方法もあります。
さきほどと同じ例で言えば、B銀行やC銀行に対して、会社のほうから「提案」を持ちかけるのです。
たとえば。「担保・保証無しの融資を考えてくれるのであれば、A銀行からの借り換えを検討している」とか。B銀行やC銀行は、シェアを奪いたいわけですから、提案に応じてくれる可能性があります。
このとき、全額について担保・保証無しが難しければ、「一部は保証協会付き融資でもOK」とするのもよいでしょう。そう考えると、日ごろから保証協会の枠を空けておくのは大事なことです。交渉事に使えます。
B銀行やC銀行が提案に応じてくれるようであれば、その話をA銀行に伝える。というところから先は、さきほどの《ポイント4》と同じです。
ただし、こちらから提案をした以上は、どちらかと言えば「借り換えが前提」になるでしょう。「A銀行が担保・保証を外してくれると言うから、やっぱりA銀行で」となれば、提案に応じたB銀行やC銀行としてはおもしろくありませんので。
もちろん、それでもやっぱりA銀行だというなら、それはそれです。
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まとめ
銀行融資を受ける会社の社長には、できれば「担保・保証は無しにしてほしい、外してほしい」という思いがあるでしょう。
とはいえ、銀行は担保・保証を外したくはないものです。
したがって、銀行融資の担保・保証はいつ外せるのか?どう外すのか?を押さえておくこと。そのうえで、担保・保証を外せるタイミングを逃さず、こちらから銀行に交渉していくことが大切です。
- 経営者保証ガイドラインを目安にする
- 所要運転資金を計算する
- 実質無借金をアピールする
- 他の銀行からの提案を活かす
- 他の銀行にしかける