安易に「負債の計上を見送る」という会社があります。
結果として、銀行からの評価が下がる。融資が受けにくくなる。その事例をお話していきます。
負債の計上を見送る会社、負債の計上を求める銀行。
会社が融資を受けるときに、銀行から提示を求められる決算書。その決算書について、安易に「負債の計上を見送る」という会社があります。
えっ、どういうこと?
と言うのであれば、安易に負債の計上を見送っているのかもしれません。結果として、銀行からの評価が下がる。銀行からの融資が受けにくくなる。
そんなことにならないように。安易に「負債の計上を見送る」と銀行からの評価が下がる事例を押さえておきましょう。こちらの5つです ↓
- 締日後の給料
- 社会保険料
- 仕入・その他費用
- 引当金
- 借入金
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
安易に「負債の計上を見送る」と銀行からの評価が下がる5事例
《事例1》締日後の給料
たとえば、給料が「毎月15日締め、25日払い」で、3月決算の会社があったとします。
決算のときには、3月16日〜3月31日までの給料が「未払金」として掲載される、というのが正しい姿です。決算日時点では、3月16日〜3月31日までの給料が「負債」として確定しているから、ですね。
ところが。
締日後の給料をわざわざ計算するなんて面倒だ、と未払金の計上を見送る会社があります。すると、締め後の給料分だけ「費用」が少なくなる。費用が減った分だけ「利益」が増える。
これを見た銀行は「利益を水増し(粉飾)したのかな?」と考えます。実際、利益を水増しするために「締め後の給料(未払金)」の計上を見送る会社もあるからです。
当然、利益の水増し(粉飾)は銀行からの評価を下げることになるので、安易に未払金の計上を見送るのはやめましょう。
どうせ、給料の額は毎月ほとんどいっしょなのだから、未払金を計上しようがしまいが、経費はそれほど変わらないだろ? というのは会社のヘリクツであって、銀行の理屈には合いません。
《事例2》社会保険料
さきほどと同じく、給料が「毎月15日締め、25日払い」で、3月決算の会社があったとします。この会社の社会保険料について考えてみましょう。
3月分の社会保険料は、翌月の4月に支払う給料から天引きされるのが社会保険料のルールです。よって、3月25日に支給する給料から天引きされるのは2月分の社会保険料、ということになります。
これを受けて、決算のときには、3月分の社会保険料が「未払金」として掲載される、というのが正しい姿です。決算日時点では、3月分の社会保険料が「負債」として確定しているから、ですね。
ところが。
社会保険料の未払金の計上を見送る会社があります。すると、社会保険料の分だけ「費用」が少なくなる。費用が減った分だけ「利益」が増える。
これを見た銀行はやはり、「利益を水増し(粉飾)したのかな?」と考えます。たとえ、利益を水増しする意図などなくてもです。もちろん、意図してやっても水増しを見抜かれるばかりです。
ルールを守らない経理・会計処理は、銀行からの評価を下げることを覚えておきましょう。
どうせ、社会保険料の額は毎月ほとんどいっしょなのだから、未払金を計上しようがしまいが、経費はそれほど変わらないだろ? というのはやっぱりヘリクツです。
[ad1]《事例3》仕入・その他費用
決算のときには、仕入代金の未払いがあれば、「買掛金」を計上するのが正しい姿です。消耗品費や通信費、水道光熱費など、経費の未払いがあれば、「未払金」を計上するのが正しい姿です。
ところが。
これらの買掛金や未払金の計上を見送る会社があります。すると、見送った分だけ「仕入」や「費用」が少なくなる。費用が減った分だけ「利益」が増える。
もういいですよね。銀行は「利益を水増し(粉飾)したのかな?」と考えます。
実際、買掛金や未払金の計上を「利益調整」に使っている会社もあるわけですが。銀行は、毎年の決算書を並べてみて、買掛金や未払金の「推移」をチェックすることで「利益調整」を見極めています。
通常、商売に大きな変化がなければ、買掛金や未払金の額はそう変わらないはずです。それが、毎年バラバラ… ということになれば利益調整を疑われることになります。
費用の未払金計上については、「どこまで細かくやるか?」の問題もあるでしょう。そこは「会社しだい」でもあるわけですが、そのときどきで「基準」を変えないようにしましょう。
ある年は消耗品費の未払金を計上して、ある年はしない。安易にこういうことをしていると、毎年の未払金の額にバラツキが出てしまいます。
なお、税込経理をしている会社については、「未払消費税」の計上は必ずしましょう。その決算期分の消費税は、その決算期の費用として計上するのが会計のルールです。これを守らないのであれば、明らかに「粉飾」と見られます。
《事例4》引当金
決算書に「売掛金」の掲載があるのに、「貸倒引当金」がまったく計上されていない。という決算書は少なくありません。
とくに、赤字のときには、費用(引当金繰入)を増やす必要もない(これ以上費用を増やしても税金は減らない)ことから、しばしば引当金の計上は安易に見送られます。
税金計算としてはそれで問題はないのですが、会計のルールとしては問題です。赤字だろうが黒字だろうが、計上すべき負債(引当金)は計上するのが会計のルールです。
また、毎年決まって賞与を支払うような会社であれば、賞与引当金の計上が必要になります。
たとえば、6月と12月に賞与を支給すると決めている、3月決算の会社があったとして。決算のときには、6月に支給する賞与のうち、3月までに負担すべき分は引当金として計上することになります。
このあたり、各種引当金が計上されていない決算書を見た銀行はやっぱり、「利益を水増し(粉飾)したのかな?」と考えます。銀行からの評価は下がり、融資は受けにくくなるのですから気をつけましょう。
ちなみに。賞与引当金を計上する場合には、その賞与分に対応する社会保険料も負債(未払費用あるいは社会保険料引当金)として計上する必要があります。
ただし、賞与引当金の計上も、それに対応する社会保険料の計上も、税金計算上の経費にはなりません。あくまで、「会計上の費用にすべき」とのハナシをしています。
このあたりは少々わかりづらいところであり、よくわからなければ、顧問税理士に相談をしてみましょう。
《事例5》借入金
「負債」が多い決算書は、銀行からの評価が下がります。それを知っている会社が、借入金の一部を隠そうと考える。
とくに、銀行以外からの借入(ノンバンク、闇金など)は隠しがちです。銀行からの信用にかかわる(銀行からは借りれないほど状況が悪いと見られる)から、ですね。
隠していることがわかれば、当然、銀行からの評価は下がります。では、銀行はどのように、隠された借入金を見抜くのか?
方法はいろいろです。たとえば、「平均金利」を計算してみる。平均金利とは、算式で言うと「年間の支払利息 ÷(期首の借入金 + 期末の借入金)」になります。
この平均金利が、市中金利よりも相当に高いときには「借入金を隠して、その利息だけを経費に入れているからでは?」と銀行は考えるわけです。
借入金を隠しているのが事実であれば、そう考えられてもしかたがありません。けれども、「誤解」であれば困ります。隠してなんかいないのに、というケースです。
たとえば、どこかの銀行から「期中」に借入をして、「期中」のうちに返済をした場合。つまり、短期の借入をした場合。
その短期の借入金は、さきほどの平均金利の算式の「期首の借入金」にも「期末の借入金」にも含まれないことになります。いっぽうで、短期の借入にかかる利息は、算式の「年間の支払利息」に含まれます。
結果として、平均金利は市中金利よりも高めに計算されることになる。ということは覚えておきましょう。そのようなケースでは、銀行に決算書を渡すときに、きちんと説明をしておくのがおすすめです。
説明を怠れば、借入金を隠している? と疑われてしまうかもしれませんので。
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まとめ
決算書について。安易に負債の計上を見送っている会社があります。結果として、銀行からの評価が下がる。銀行からの融資が受けにくくなる。
そんなことにならないように。安易に「負債の計上を見送る」と銀行からの評価が下がる事例を押さえておきましょう。
- 締日後の給料
- 社会保険料
- 仕入・その他費用
- 引当金
- 借入金