ちまたでは、コロナ融資は「借りやすい」とのハナシがあるようです。けれども、「借りやすい」のはコロナ融資が特別だから。
そこで、「コロナ融資」と「通常の融資」との3つの違いについてお話をしていきます。
コロナ融資が「借りやすい」のは特別だから。
本記事の投稿日現在(2020年4月20日)、新型コロナウィルスの影響によって、多くの会社・個人事業者が資金繰りに苦しんでいます。
これを受け、国・地方自治体主導のもと、各種の融資が進められているところです。
おもなところでは、公的金融機関である日本政策金融公庫の「新型コロナウィルス感染症特別貸付」、民間金融機関を利用する「セーフティネット保証」が挙げられます。
これら「コロナ関連の融資(以下、コロナ融資)」について。ちまたでは「借りやすい」とのハナシがあるようです。コロナ融資は借りやすい。
たしかに、コロナ融資には「借りやすい」という一面がある。けれどもそれは、コロナ融資が「特別」だからです。通常の銀行融資、平時の銀行融資に対して、コロナ融資は「特別」な位置付けだからです。
この理解を誤ると、いずれコロナが収束したあともなお、「融資は借りやすいものだ」との勘違いをしてしまいます。
そんなことはありません。通常の融資は、コロナ融資ほどに借りやすいものではありません。その理由として、コロナ融資と通常の融資との「違い」についてお話をしていきます。
次の3つです ↓
- コロナ融資は、利益が無くてもOK
- コロナ融資は、書類が無くてもOK
- コロナ融資は、急ぎでもOK
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「コロナ融資」と「通常の融資」との3つの違い
《違い1》コロナ融資は、利益が無くてもOK
「コロナ融資は借りやすい」と言える理由の1つとして、「利益が無くてもOK」ということが挙げられます。
利益が無くてもOK。これは、「コロナ融資」と「通常の融資」との大きな違いだと言ってよいでしょう。
通常の融資では、銀行は「利益がどれだけあるか?」に注目をしています。具体的には、「年間返済額 < 年間利益」という関係が成り立つかどうかです。
「返済原資は利益」が銀行の理屈であり、「利益が出ていない会社=返済ができない会社」。ゆえに、利益が出ていない会社には貸さない、となります。
ここで言う「利益」とは、厳密には「将来の利益」をあらわすわけですが、将来のことを予測するのはなかなかに困難です。そこで、「過去の利益」を参考にします。
過去の利益、つまり、決算書(あるいは試算表)の利益です。
決算書の利益を見て、「年間返済額 < 年間利益」であればだいじょうぶそうかな、と考える。逆に「年間返済額 > 年間利益」であれば融資は危険、と考える。
もちろん、コロナ融資に関しても、将来の利益が出ることは前提です。将来の利益で、返済をするという前提です。けれども、将来の利益をはかるために過去の利益(決算書)を問うか? と言えば、そうでもない。
言うまでもなく、コロナの影響によって、決算書(あるいは試算表)に記された「過去の利益」はボロボロだからです。「過去の利益が無いから貸さない」などと言っていたら、貸し先がなくなってしまいます。
通常の融資の原則「年間返済額 < 年間利益」に反してまで融資をするのは、コロナ融資が特別だからにほかなりません。コロナ融資は、国や地方自治体のバックアップがあってこその特別な融資です。
したがって、コロナ収束後、通常の融資を受けるにあたっても「年間返済額 > 年間利益」で借りられる、などと考えてはいけません。コロナ融資と通常の融資を混同しないように気をつけましょう。
《違い2》コロナ融資は、書類が無くてもOK
コロナ融資と通常の融資との違いについてお話をしています。続いて、違いの2つめ。それは、「コロナ融資は、書類が無くてもOK」です。
まったく無くてもだいじょうぶ、とまでは言えませんが。それでも、通常の融資に比べると、必要書類が大幅に少なくなっています。
コロナ融資は「緊急」だからですよね。みな、あすの資金繰りを心配しているのに、ああだこうだと書類を求めていたら、書類を準備しているあいだにつぶれてしまいます。
だから、コロナ融資を受けるための書類は「必要最低限」なのです。これに対して、通常の融資に必要な書類はそれほど少なくはありません。
わたしが考える、「融資をより受けやすくする、より良い条件で融資を受ける」ために必要な書類は、
- 決算書、前月までの試算表
- 資金繰り表(実績3ヶ月+予測12ヶ月)
- 借入金一覧表
これらの3点です。必ずしも銀行から要求されないものもありますが、どれも銀行が見たいもの・知りたいものばかりです。よって、これらの書類があれば「融資をより受けやすくする、より良い条件で融資を受ける」ことができます。
また、赤字のときには、上記3点に加えて「経営改善計画書」も必要です。
現状で利益が出ていない会社に対して、銀行は融資をしない・したくない。これは、さきほどもお話をしたとおりです。
だったら。「赤字からどうやって利益を出せるのか?」を示すことができなければ、融資は遠のくばかりだと言えるでしょう。
赤字を脱するためになにをするのか、ほんとうにできそうなことなのか、できた結果どうなるのか? それらをまとめた書類が「経営改善計画書」です。
コロナ融資を受ける会社・個人事業者の多くは、現状で赤字。本来であれば「経営改善計画書」の提示が求められるところです。それでも求められないのは、コロナ融資が特別だから、緊急だからです。
通常の融資であれば、赤字でも「借りやすい」なんてことはありません。原則、赤字で受けられる融資はない、と心得ておきましょう。
[ad1]《違い3》コロナ融資は、急ぎでもOK
通常の融資を受けるときに、銀行に対して言ってはいけない言葉のひとつ。それは「すぐに貸して」です。急いでいるから早く貸して。これは言ってはいけません。
なぜなら、「すぐに貸して」という状況が「無計画」をあらわしているからです。銀行からすると、「なんでもっと早く借りようとしなかったの?」と。
ですから、通常の融資では、余裕をもって計画的に借りることが重要になります。
いっぽうで、コロナ融資はどうかと言うと。みな急ぎです。すぐに貸して、と言っても借りられます。コロナの発生が「不測の事態」であり、無計画の借入というわけではないからですね。言い換えると、やむを得ない状況。
それでもほんとうは、「不測の事態」もふまえて、資金繰りをしておくこと本質です。不測の事態に備えて、手元のおカネを増やしておくことが本質です。
そう考えると。コロナだからと言って、急いで借りるのは「やっぱり無計画だ」と言えなくもありません。
とはいえ。多くの中小企業は、手元のおカネが少ないままに経営をしているのが現状であり、そのすべてを「無計画だ!」と追い返していたのではみなつぶれてしまいます。
だから、国や地方自治体のバックアップのもと、急ぎだとしても融資をしている。無計画に思えても融資をしている。やはり、コロナ融資は特別なんだと理解をすべきところです。
いずれコロナが収束したのち、通常の融資を受けるときにまで「すぐに貸して」と言ってはいけません。「コロナのときは貸してくれたじゃないか」と言ってはいけません。
コロナ融資と通常の融資とは違います。
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まとめ
ちまたでは、コロナ融資は「借りやすい」とのハナシがあるようです。けれども、「借りやすい」のはコロナ融資が特別だから。
「コロナ融資」と「通常の融資」とには、3つの違いがあることを押さえておきましょう。違いがわからないと、いずれコロナが収束したあともなお、「融資は借りやすいものだ」との勘違いをしてしまいます。
- コロナ融資は、利益が無くてもOK
- コロナ融資は、書類が無くてもOK
- コロナ融資は、急ぎでもOK