銀行に対して、試算表を定期的に提出することは一般的ではありません。けれども、提出をすることで得られる「効果」がある。
そこで。試算表を定期的に銀行に提出することで得られる効果についてお話をしていきます。
一般的ではないからこそやってみる価値がある。
会社・事業における銀行融資について。
決算書を銀行に提出することは「一般的」なことですが。試算表を提出する、とくに、試算表を定期的に提出することは一般的とは言えないでしょう。
そのような現状に反して。
試算表は定期的に銀行に提出するべきっ! と、わたしはおすすめをしています。なぜなら、それによって得られる「効果」があるからです ↓
- 赤字にも理解が得られる
- 管理能力をアピールできる
- コミュニケーションが深まる
- 運転資金の変化を知ってもらえる
- 粉飾決算の疑いを晴らすことができる
これらの効果が得られれば、銀行からの融資が受けやすくなることにつながります。融資が受けやすくなるのは、当然、融資を受ける側にとってはメリットです。
というわけで。試算表を定期的に銀行に提出することで得られる5つの効果について、このあと順番に見ていきましょう。
理想は「毎月」です。でも、はじめから毎月はたいへんですから、おすすめは「四半期(3ヶ月ごと)」になります。
試算表を定期的に銀行に提出することで得られる効果
《効果1》赤字にも理解が得られる
銀行は赤字(利益がマイナス)を嫌います。言うまでもなく、赤字の会社は「危ない」からです。貸したおカネを返済してもらえないかもしれない… との危険を感じるからです。
とはいえ、会社・事業を続けていれば赤字のときだってあるわけで。そのときに、「どれだけ銀行の理解を得られるか」はひとつのポイントだと言えるでしょう。
ここで言う「理解」とは。赤字になった「経緯」がわかる。赤字の「原因」がわかる。そんなところです。
この点で。毎年、年に1回だけ決算書を銀行に提出している会社はどうでしょう? もしも前年まで黒字で、今年は赤字の決算書だとすれば。銀行としては、「え、なんで? どうしちゃったの?」と驚くばかりです。
これに対して。銀行に試算表を定期的に提出している会社はどうでしょう? 銀行は、1年に1回だけ決算書を見るよりも、「経緯」や「原因」をつかみやすくなるはずです。
また、試算表を提出するときに、会社が「原因に対する解決策」まで話ができれば。赤字とはいえ、銀行は「一定の安心」を感じることでしょう。結果として、赤字だからといって毛嫌いされることはなくなります。
決算書だけを見ていたのでは、その赤字は回復傾向にあるのか、それともまだ赤字が続きそうなのかはわかりません。いっぽうで、試算表を定期的に見ていればわかります。
ほんとうは回復傾向にあるのに、「まだ赤字が続くんじゃ…」と見られるのは損ですよね。試算表の有無で、銀行の「決算書に対する理解力」に差が出ることを覚えておきましょう。
《効果2》管理能力をアピールできる
冒頭、「試算表を定期的に提出することは一般的ではない」と言いました。多くの会社は、試算表は銀行に言われたときにだけ提出をしています。
その理由のひとつは、試算表を毎月つくっていないから。ヘタをすると1年に1回、決算書をつくっているだけ。だから、試算表を定期的に提出することなどできない。
また、試算表をつくってはいるけれど、かなりの不定期(数ヶ月ごと…)であったり、かなりの遅れ(1ヶ月以上前…)があったり、もあるでしょう。
厳しい言い方をすれば、ちょっと「いい加減だなぁ」とも言えるこのような状況は、中小零細企業には意外と「あるある」です。
だからこそ、試算表を定期的に提出する会社は、それだけで目立ちます。ほかの会社とはちょっと違うぞ、と銀行に思わせることができる。
つまりは、毎月きちんと試算表をつくることができる。その試算表を遅れなく提出することができる「管理能力がある会社」との評価につながります。
もちろん、融資を受けるにあたってはプラスの評価です。
まわりもやっていないからやらない、ということではなく。まわりがやっていないからこそ、あえてやってみる。ということを考えてみましょう。
[ad1]《効果3》コミュニケーションが深まる
試算表を定期的に提出することで、銀行(員)とのコミュニケーションを深めることができます。
試算表を提出できる状態になったら、銀行の担当者に会社まで取りに来てもらうのがおすすめです。担当者も、融資先の近況は確認しておきたいところですから、基本的には来てくれることでしょう。
すると。試算表を渡しがてら、会社は銀行に対していろいろと伝えるチャンスになります。いやいや、なにを伝えれば…? と思われるかもですが。
ひとことで言うと、自社の「商売」についてです。自社がなにをしている会社か、なにを売っている会社か、そういう話です。
そんなことは銀行もわかっているだろう? と思われるのであれば違います。商売については、決算書や試算表を眺めるだけではわからないことです。
にもかかわらず。銀行に対しては、決算書や試算表を「渡すだけ」という会社は少なくありません。商売についての話をしていないのです。
たしかに。銀行が融資の審査をするときのいちばんの材料は「数字(決算書や試算表)」ではあります。けれども、それだけではありません。会社・事業の「将来性」にも目を向けます。
決算書や試算表に掲載される数字は「過去」を示すのみであり、「将来」のことまではわかりません。将来性をはかるには、会社の「商売」を理解する必要があります。
繰り返しになりますが。自社がなにをしている会社か、なにを売っている会社か、です。もっと言えば、他社と同じなにかを売っているとしても、どこへどのように売っているか? も商売の違いです。
そういうことを銀行が理解できなければ。会社の将来性はわかってもらえない。過去の数字ばかりで見られてしまいます。
試算表の提出をきっかけに、自社の商売について伝えましょう。これができれば、銀行とのコミュニケーションはぐっと深まります。
《効果4》運転資金の変化を知ってもらえる
会社が銀行から融資を受けるときの「資金使途(借りたおカネの使いみち)」は大きく2つ。設備資金と運転資金とがあります。
このうち「運転資金」について。その金額を、銀行は次のように計算しています ↓
売上債権(売掛金・受取手形)+ たな卸資産 − 仕入債務(買掛金・支払手形)
この計算式から求められる金額の範囲内であれば、銀行としては運転資金の融資になっとくできるところです。
では、1年に1回、決算書だけを提出する会社について、運転資金の金額を考えてみましょう。銀行は決算書に掲載された「売上債権」や「たな卸資産」、「仕入債務」の金額から運転資金を計算しますよね。
ところが、です。決算書に掲載されたそれらの金額は、「決算日」という瞬間をとらえた金額でしかありません。
なにを言いたいのか、というと。「売上債権」にしても「たな卸資産」にしても、「仕入債務」にしても、金額は絶えず変化しているということです。季節変動の大きな商売をしている会社であれば、とくにです。
そのような会社がもし、決算日時点では運転資金が小さく、1年の途中では大きな運転資金を必要とするようであればどうでしょう?
決算書だけを見ている銀行には、そのことがわからず。会社が必要な運転資金の融資を求めたとしても、銀行としては「多すぎる」ということになりかねません。必要な融資が受けられない。
これが、試算表を定期的に提出していればどうでしょう? 銀行も、試算表から「運転資金の変化」を把握することができます。決算書の金額のみをもって判断されることがなくなります。
試算表にはこのような効果があることも理解しておきましょう。
《効果5》粉飾決算の疑いを晴らすことができる
銀行が嫌うもののひとつに「粉飾決算」があります。平たく言うと、ウソの決算書をつくることです。ほんとうは赤字だけれど、黒字のように見せかける… とか。
もちろん、銀行としてはそのような会社に融資をするわけにはいきません。なので、決算書に粉飾がないか? という目で見ています。
この点で。試算表を定期的に提出している会社は、粉飾決算がしづらいものです。なぜなら、試算表と粉飾をした決算書とでの整合性をとりづらくなるから。
たとえば。決算日近くになって赤字の会社が、黒字にするために売上高を水増しする(粉飾決算)とします。このとき、定期的に試算表を提出していた会社が、急に売上高を増やしたら銀行に気づかれますよね。
逆に、試算表は提出せず、決算書しか提出していない会社であれば。銀行には気づかれにくいことでしょう。
だから、粉飾しても気づかれにくいように、決算書だけしか提出しないほうがいい。というハナシではありません。
試算表を提出していない会社は、提出している会社よりも、粉飾決算を疑われやすい。だから、粉飾決算を疑われたくなければ、試算表を提出しておくほうがいい。そういうお話です。
最近では、融資先が倒産したあとになって粉飾をしていたことに気づく… ということが銀行業界では問題にもなっています。よりいっそう、粉飾決算に対する警戒感が高まるはずです。
そういうこともふまえて。粉飾決算の疑いを晴らす効果がある、試算表の定期的な提出を検討してみましょう。
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まとめ
銀行に対して、試算表を定期的に提出することは一般的ではありません。けれども、提出をすることで得られる「効果」があります。
その効果の大きさを理解して、ぜひ、試算表の定期的な提出をしてみましょう。銀行からの融資が受けやすくなるはずです。
- 赤字にも理解が得られる
- 管理能力をアピールできる
- コミュニケーションが深まる
- 運転資金の変化を知ってもらえる
- 粉飾決算の疑いを晴らすことができる