会社・事業を続けていれば、いつも良いときばかりではありません。
というわけで、赤字・資金繰り悪化で厳しいときにも融資が受けられた意外な要素についてお話をしていきます。
銀行が見るのは「数字だけ」ではない。
会社・事業における銀行融資について。
決算書が赤字である、とか。資金繰りが悪化している、とか。会社・事業の「数字」が厳しいときには、融資を受けるのは難しいものです。
しかし、そんなときにでも。「数字以外」の部分を銀行が見てくれたことによって、なんとか融資を受けられた… というケースはあります。
もちろん、銀行がまずはじめに見るものは「数字」であって、「数字以外」の部分を積極的に期待するものではありません。融資を受けたいのであれば、まずは決算書を中心に数字を良くすることです。
とはいえ。会社・事業を続けていれば、いつも良いときばかりではありません。厳しいときだってあるはずです。そのときのために、ふだんから「数字以外」の部分にも気をつけておく価値はあるでしょう。
というわけで、赤字・資金繰り悪化で厳しいときにも融資が受けられた意外な要素についてお話をしていきます。こちらです ↓
- 社長の資質・誠意
- 顧客リピート率・商品力
- 担当者以外との面識
- 日本政策金融公庫からの融資
- 社長個人の資産
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
赤字・資金繰り悪化で厳しいときにも融資が受けられた意外な要素
社長の資質・誠意
厳しいときにほど、「人の本性」があらわれる。というのは、こと経営の場面においても同じであるようです。
ある社長は、会社の厳しい現状を「他責」にします。景気が悪い、政治が悪い、従業員が悪い、などと「人のせい・周りのせい」にします。
いっぽうで。ある社長は「自責」です。厳しい現状にいたった原因は「必ずじぶんのなかにもある」と考えます。
他責の場合には、じぶんにできることはほとんどありませんが、自責の場合には、じぶんにできること・改善できることが見つかるものです。
だとすれば。厳しい現状を乗り越えられそうなのは「自責」の社長だ。どちらの社長にならおカネを貸してもいいか? と言えば、「自責」の社長だ。そんな話を銀行員の方から聞いたことがあります。
また、良いか悪いかは別にして。「じぶんの給料を下げても、従業員は絶対に解雇しない。仕入先にも遅延なく支払いをする。銀行の返済も絶対に遅れたくない!」との発言をする社長もいます。
実際に、雇用維持や、支払い・返済に遅延がないことを、銀行も評価するところです。
というように。社長の資質や誠意の差が、融資の可否に影響します。銀行には、そこまで見られているのだということを覚えておきましょう。会社・事業が厳しいときにはとくに、です。
顧客リピート率・商品力
他責はダメだ、という話をしておいてナンですが。世の中の不景気や、災害などの外的な影響を受けて、厳しい状況に陥ることもあります(その場合でも必ずなにかしらの自責はある、と申し添えます)。
それでも銀行が「融資をできそうかどうか」を判断する要素のひとつが、会社の「顧客や商品」です。
実際にあった具体的な事例で言えば。顧客リピート率の高さ、これは銀行から見たときの安心材料になります。いまは外的な影響を受けていても、いずれリピート客が戻るであろうと想像できるからです。
ある飲食店では、日ごろから取っていた「顧客リピート率」を銀行に提供できたことが融資につながりました。
また、商品力も銀行にとっての安心材料です。新聞や情報誌に紹介されたことがある。SNSでのフォロワーが多い、好評の口コミが多い。などの事実があれば、厳しい状況ではあっても「底堅さ」はあるものと想像できるからです。
ある小売店では、新聞やネットニュースの取材記事を銀行に提供することで商品力をアピール。厳しい状況のなかでも、融資につながりました。
同じ業種・同じ商品であっても、同業他社とはなにがちがうのか? これはほんとうによく銀行から聞かれるし、銀行が注目をしているところです。
同業他社との違い、つまり、差別化ができているかどうか。差別化は、厳しい状況を乗り越えるチカラになるものとして、積極的に銀行に伝えるようにしましょう。
担当者以外との面識
ご存知の人が多いことではありますが、融資の可否を決めるのは、いつも社長が話をしている「担当者」ではありません。
最終的に融資の可否を決める「決裁者」は、担当者の上司なり、支店長なり別にいます。担当者は、会社と銀行との「窓口」の役割を担うものです。
この点で。もし、担当者が「厳しい状況ではあるけれど、なんとかこの会社に融資をしたい。融資をしてもだいじょうぶなチカラがこの会社にはある!」と考えていたとしても。
決裁者が「NO」と言えば、NOです。融資はできない。
ではここで。会社のチカラが「ほんとうはある」のだけれど、担当者がその事実を決裁者に伝えきれていない… という場合はどうでしょう。当然、決裁者は「NO」と言いますよね。事実がどうかは別にして。
実際に、社長が担当者に話した「だいじな情報」も、決裁者まで届いていないということはあります。わたしも実際に体験をしていますし。
ただ、「だから、担当者が悪い!」というハナシをしたいわけではなく。決裁者まで届くようにしていないこちらも悪い。そういうことです。
では、こちらにできることはなにか?
担当者以外との面識を持つことです。担当者の上司なり、融資課長なり、支店長なりと面識を持てるようなはたらきかけをすることです。
具体的にできることとして「決算報告」が挙げられます。1年に1回、決算書ができたときに、その報告として銀行に伺う。すると、担当者だけではなく、その他の方も同席してくれる可能性があります。
同席してもらえれば。直接話ができるのですから、伝えたいことも伝わりますよね。こうして、ふだんからの「担当者以外との面識」が活かされて、厳しい状況でも決裁者が「あの会社なら!」と融資につながる例があります。
担当者ばかりでなく、担当者以外との面識も持てるようにしておきましょう。
[ad1]日本政策金融公庫からの融資
厳しい状況の会社への融資を、銀行は警戒します。言うまでもなく、返済してもらえない可能性が高いからです。
このとき、他の取引銀行からの融資がないようだとなおさら警戒します。ウチの銀行だけが支援しても足りないかもしれないし、その場合、ウチだけが損失を被ることになるし… と、銀行は考えます。
とくに、他に取引銀行がないケース。ひとつの銀行だけからしか融資を受けていないと、その銀行は困るものです。厳しい状況の場合には融資をしづらい。
結果として、銀行から「日本政策金融公庫から融資を受けませんか?」との話をされることがあります。日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する公的な金融機関です。
厳しい状況のなか、さすがに民間の銀行からあらたに融資を受けるのは難しいものがある。そこで、民間の銀行よりも柔軟な対応が期待できる(要は借りやすい)日本政策金融公庫を紹介しているわけです。
その日本政策金融公庫から融資が受けられれば、「日本政策金融公庫から支援を受けられた」ことを理由に、紹介をした銀行も融資を検討しやすくなります。
そう考えると。ふだんから取引銀行は増やしておくべきですし、とくに、厳しい状況でも柔軟な対応が期待できる日本政策金融公庫とはお付き合いをしておくようにしましょいう。
社長個人の資産
厳しい状況のなか、会社が銀行に融資を依頼すると。銀行から、社長個人の資産について聞かれることがあります。「社長個人の預金や不動産はありませんか?」と。
これを聞いて、「この期に及んで、また銀行は担保をとるつもりなのか!」と思われるかもしれませんが(事実、そういうときもあるのですけど)。必ずしもそうとは言えないケースもあります。
たとえば。会社が融資を受けようとする銀行とは別の銀行に社長個人の定期預金がある。このような場合には、その定期預金を融資を受けようとする銀行に移すことで融資が受けられた、ということはあります。
定期預金を担保にとるかと言えば、必ずしもそうではなく、担保にまでとらずともだいじょうぶなケースはあるのです。
それでも銀行としては、じぶんの銀行のなかに「いざというときの返済原資(=社長個人の定期預金)」を確認できることを理由に融資が進めやすくなります。
したがって、銀行から「社長個人の資産」について聞かれても、かたくなに教えないという態度では不利益を被る可能性があります。受けられるかもしれない融資を逃してしまうかもしれない。ということを覚えておきましょう。
ちなみに。会社が厳しいのであれば、社長個人の定期預金をおろして会社に入金すればいい、と思われるかもですが。それはさいごのさいごの手段として温存しておくことをおすすめします。
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まとめ
決算書が赤字である、資金繰りが悪化しているなど。会社・事業の「数字」が厳しいときには、融資を受けるのは難しいものです。
しかし、そんなときにでも。「数字以外」の部分を銀行が見てくれたことによって、なんとか融資を受けられた… というケースはあります。
いずれくるかもしれない厳しいときのために。数字以外の部分、銀行が見ている数字以外の要素についても、ふだんから気をつけておきましょう。
- 社長の資質・誠意
- 顧客リピート率・商品力
- 担当者以外との面識
- 日本政策金融公庫からの融資
- 社長個人の資産