有事における『固定費〇ヶ月分』の銀行融資 3つの注意点

有事における『固定費〇ヶ月分』の銀行融資 3つの注意点

有事における融資では、貸す側の融資金額の目安として「固定費 〇ヶ月分」ということはよく言われるところです。

その「固定費 〇ヶ月分」について。おカネを借りる側は、注意すべき点がありますから気をつけましょう、というお話をしていきます。

目次

いつ来るかもわからぬ有事のために。

会社・事業を続けていると、好むと好まざるとにかかわらず「有事」に巻き込まれることがあります。

たとえば、東日本大震災や新型コロナウィルスなど。巻き込まれた会社・事業は大きな痛手を被ることになります。

通常の営業が困難となり、しばらくのあいだ売上があがらない。いっぽうでは、給与や家賃など支払わねばならないものはある。結果として、おカネが足りない… 資金繰りが回らない…

そこで、有事の際には、国や地方自治体主導のもと、融資による支援が行われてきました。

そのような有事における融資では、貸す側の融資金額の目安として「固定費の〇ヶ月分」ということはよく言われるところです。つまり、「固定費の〇ヶ月分のおカネを貸しますよ」ということですね。

この「固定費 〇ヶ月分」について。おカネを借りる側は、注意すべき点がありますから気をつけましょう。

気づかずにいると、ほんとうはもっと受けられるはずの融資が受けられなかったり、そもそも融資が受けられなくなったりしてしまうからです。

では、「固定費 〇ヶ月分」の注意点とは。次の3つになります ↓

有事における「固定費〇ヶ月分」の銀行融資 3つの注意点
  1. 固定費だけでは足りない
  2. とりあえず〇ヶ月分、では足りない
  3. 固定費は削減努力が必要

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

 

有事における「固定費〇ヶ月分」の銀行融資 3つの注意点

《注意点1》固定費だけでは足りない

そもそも「固定費」とは。売上が多い・少ないにかかわらず、変わらずに支払わなければならない費用のことを言います。

たとえば、社員の給与。社員を雇っているからには、解雇をしない限りは給与を払わなければいけません(休んでもらうにしても補償の問題が生じます)。

また、店舗や事務所などを借りている場合には、家賃も支払わなければいけません。売上があろうとなかろうと、それが「固定費」です。

そんな固定費の「〇ヶ月分」のおカネがあれば、とりあえず〇ヶ月分はしのぐことができるよね。というのが、「固定費〇ヶ月分の銀行融資」の考え方になります。

たしかに。一見すると、固定費分のおカネがあればなんとかなりそうな…

けれども、実はそうでもない。固定費分だけでは足りないんだ、というのが1つめの注意点です。

まずは、「借入金の返済」です。すでに借りているおカネについて、毎月の返済額(とくに元金分)。これは、固定費のなかには含まれていません。

返済猶予(いわゆるリスケ)をしてもらわない限り、毎月の返済もまた、売上があろうとなかろうと支払わなければいけません。だから、固定費だけでは足りない。

それからもうひとつ、「変動費」です。変動費とは、固定費に対する費用であり、売上の多い・少ないに連動するような費用です。

たとえば、仕入や外注費。通常、売上が増えると、仕入や外注費は増える、という関係にあります。これが「変動費」です。

この点で。売上がゼロなら、仕入も外注費もゼロだろう? というのなら、そうとも限りません。売るにあたって、先行して支払う仕入や外注費だってあるでしょう。

また、自社にとって重要な仕入先・外注先であれば、そこを確保し続けるために支払うおカネ(たとえば前払金とか)もありえます。そう考えると、たとえ売上がゼロでも、仕入や外注費が必要になることもあるのです。

固定費だけを見ていると、そのあたりを見逃してしまいます。結局、融資は受けたけれど、「思ったよりも足りなかった…」となってしまいます。

じゃあ、どうするか?

固定費 〇ヶ月分、というよりも。「売上高 〇ヶ月分」のほうが、理にかなっていると言えるでしょう。

ここで言う「売上高」とは。有事の前、つまり平時における「平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)」のことです。

平時の売上で、変動費と固定費、そして借入金の返済ができていたのなら、売上高分のおカネを融資してもらえれば資金繰りに困ることはありません。

というわけで。「固定費 〇ヶ月分」との目安には気をつけるようにしましょう。借入金返済や変動費を考えると、借りる側は「売上高 〇ヶ月分」を説明・主張すべきところです。

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《注意点2》とりあえず〇ヶ月分、では足りない

「固定費 〇ヶ月分」の銀行融資について。とりあえず〇ヶ月分、との表現をされることがあります。たとえば、「とりあえず3ヶ月分の融資を考えましょう」みたいな。

けれども、その「とりあえず〇ヶ月」には、どれだけの「根拠」があるのかはよくよく考えておいたほうが良いでしょう。

たとえば、新型コロナウィルスの場合には。2020年2月あたりから、経済活動に影響がではじめて、本投稿日である 2020年5月末現在では、まだまだ影響が出続けています。

もし、「とりあえず3ヶ月分」という感覚で融資を受けていたとしたら足りません。

また融資を受ければいいじゃないか、と思われるかもですが。融資を受けるにも手間と時間がかかります。たいへんだし、間に合わないということだってあるでしょう。

だから、借りるときには「いちどで、できるだけ借りておく」ことが必要になります。

コロナに関して言えば、まさに未曾有の事態であり。もとに戻るのには6ヶ月かかるとも1年かかるとも言われています。むしろ、もとには戻らないとさえ言われているところです。

だとしたら、「とりあえず〇ヶ月分」ではなく、「少なくとも〇ヶ月分」という考え方をすべきでしょう。

私見では「少なくとも6ヶ月分」です。現状(コロナの影響が出始めたころから、ですが)、6ヶ月でもあやしいけれど。少なくとも6ヶ月で、緩やかな回復・改善を見込む、という考え方で銀行に説明・主張をする。

ほんとうに6ヶ月分を貸してくれるかは、もちろん銀行しだいですが。こちらから主張をしなければ、多く貸してくれるということもないでしょう。

ちなみに。飲食業や観光業など、とくに打撃の大きい商売の場合には、「6ヶ月分」と言わず、「12ヶ月分」を説明・主張することをおすすめします。

その際には、コロナ前の数字とコロナ中の数字とをとりまとめて持参するようにしましょう。コロナ前はじゅうぶんに売上・利益があったこと、コロナの影響は容易に収まりそうにないことを説明するためです。

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《注意点3》固定費は削減努力が必要

固定費 〇ヶ月分、さいごの注意点。それは、固定費は削減努力が必要だ、ということになります。

貸す側が言う「固定費」とは、基本的に「削減努力」を見込んでいるものです。たいへんな状況にあるのだから、できるだけ社長の給料を減額するだとか、家賃の減額交渉をするだとか、光熱費の見直しをはかるだとか。

そういった「削減努力」をしたうえでの「固定費 〇ヶ月分」であってほしい、というのが貸す側の思いです。

逆に。会社がたいへんな状況にありながら、なんらの削減もなく、「いままでどおりの固定費で」となると。そこには「誠意」が見えず、回復・改善への「情熱」も見えない、ということになってしまいます。

結果として、融資が受けにくくなる。

したがって。有事における融資の場面では、固定費削減の計画を銀行に説明するようにしましょう。「計画」と言っても、壮大なものをつくる必要はありません。

固定費のうち、どの項目(勘定科目)の削減をはかるのか。どのような方法によって削減をするのか。いつから、だれが責任者になってとりくむのか。結果として、どのくらいの金額の削減が見込めるのか。

このあたりをかんたんに文書にまとめましょう。ボリュームとしては、多くても A4用紙1枚ていどで収まるはずです(あまりボリュームが大きいと、見るほうもたいへんです…)。

なお、社長の給料(役員報酬)の減額は「必須」だと考えておくのがよいでしょう。有事に「巻き込まれた」とはいえ、経営責任は常に社長にあります。社長みずからが率先する姿を銀行は求めているものです。

もちろん、社員もまた社長の姿を見ているのですから。給与減額は痛いところですが、まずは率先することで回復・改善への「覚悟」を示すものと考えましょう。

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まとめ

有事における融資では、貸す側の融資金額の目安として「固定費 〇ヶ月分」ということはよく言われるところです。

その「固定費 〇ヶ月分」について。おカネを借りる側は、注意すべき点がありますから気をつけましょう。

気づかずにいると、ほんとうはもっと受けられるはずの融資が受けられなかったり、そもそも融資が受けられなくなったりしてしまいます。

有事における「固定費〇ヶ月分」の銀行融資 3つの注意点
  1. 固定費だけでは足りない
  2. とりあえず〇ヶ月分、では足りない
  3. 固定費は削減努力が必要
有事における『固定費〇ヶ月分』の銀行融資 3つの注意点

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