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銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にするな【別表四・五(一)・十(七)書き方付き】

銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にするな【別表四・五(一)、十(七)書き方付き】

倒産防止共済掛金について。「保険料」などの勘定科目で、「費用」として処理している決算書がほとんどです。

結果として、銀行融資が受けにくくなるので気をつけましょう。というお話をしていきます。

目次

銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にするな

会社が「取引先の倒産により連鎖倒産に見舞われる」のを避けるための制度として、「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)」があります。

公的機関である「中小企業基盤整備機構」が運営する、安心の制度です。

具体的には、同共済に加入して「掛金」を支払うことで、取引先の倒産時には共済金を借り受ける。これにより、連鎖倒産を避けることができるわけです。

その「掛金」について。「保険料」などの勘定科目で、「費用」として処理している決算書がほとんどです。つまり、掛金の分だけ利益が減る。利益が減るから融資が受けにくくなる。

銀行は「利益=返済原資」と考えますから、利益が多いほど融資は受けやすく、利益が少ないほど融資は受けにくくなるのです。

だから、銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にしてはいけない。というお話をしていきます。でも、そんなことをしたら、費用にしない分だけ税金が増えてしまうではないか?

だいじょうぶです。決算書では費用にしなくても、税金の計算をするときには費用と見る。そういう方法がありますので、このあとお話をしていきます。銀行融資を受けている・受けることを考えているなら、ぜひ押さえておきましょう。

また、掛金を費用にしない「銀行融資でのメリット」について、「利益が増えるから」以外のメリットもお伝えをしていきます。あわせて確認をして、理解を深めておきましょう。

 

倒産防止共済を費用にしない、でも税金は増えない方法

冒頭、銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にしてはいけない、とのお話をしました。では、具体的にどうしたらいいのか? その方法を説明していきます。

まずは「仕訳」から

掛金を費用にすると、利益が減ってしまい、銀行から見たときには評価が下がる。だから、掛金を費用では処理しない。代わりに、「資産」として処理をします。仕訳で言うと、こんな感じです ↓

借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
倒産防止共済掛金2,400,000普通預金2,400,000

上記の仕訳は、「月額掛金 200,000円を 12ヶ月分まとめて払いました」という例です。ちなみに、掛金は月額「5,000円〜200,000円」までの範囲で自由に決めることができます。

税金を減らしたい! という会社などは、最高額の 200,000円を支払うこともあり。上記の仕訳例はそのような状況をイメージしていただければ。

それはそれとして。借方・勘定科目の「倒産防止共済掛金」は、決算書上では「投資その他の資産」に分類される資産です。会計ソフトで勘定科目の設定をするときなどは、分類場所に注意しましょう。

なお、勘定科目に「絶対」はなく、「倒産防止共済掛金」の代わりに「保険積立金」などでも間違いではありません。けれども、銀行融資を考えるのであれば、「倒産防止共済掛金」を強くおすすめします。理由は、後述するのでお楽しみに。

続いて「別表」を

倒産防止共済掛金を、決算書で「資産」として処理するところまでお話をしました。

でもこのままでは、費用にしていない分だけ利益が増えてしまい、税金が高くなってしまうじゃないか? と、思われますよね。そこで、税金の計算をするための書類である「別表(べっぴょう)」です。

別表とは、法人税申告書のこと。その別表のなかで、「掛金は費用として税金計算しますよ」との表現をしてあげればよいのです。

別表にはいろいろと「種類」がありまして。掛金を費用として税金計算するためには、ぜんぶで3つの別表に必要な記載をすることになります。このあと順番に見ていきましょう。

なんか難しそうだなぁ… それに、税金計算は顧問税理士に任せてるし。と思われるかもですが。その顧問税理士がつくってくれた別表が、「掛金を費用として税金計算するものになっているか?」は確認をしておいたほうがよいでしょう。

確認ということで言えば、それほど難しいものではありませんのでご安心を。

別表十(七)

1つめの別表は、「別表十(七)」です。別表にはそれぞれ「番号」が付いています。

なお、この別表、「社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得又は連結所得の特別控除及び特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」という、とんでもないタイトルの書類ではありますが。

まぁ、あまり気にせず。必要なところだけを確認しておきましょう ↓

別表十(七)

上図の「赤枠内」が、必要な記載箇所になります。「同上のうち損金の額に算入した金額」というところがポイントです。

「損金(そんきん)」とは、税金特有の用語。税金計算をするときの費用のことを、税金用語で「損金」と言います。

決算書では費用ではないけれど、税金計算をするときには費用にするんだ! ということを、ここでアピールしているわけですね。アピールし忘れる(この別表が無い)と、税務署からは「費用にできませんよ」と言われてしまいますので、じゅうぶんに注意しましょう。

別表四

2つめの別表は、「別表四」です。「所得の金額の計算に関する明細書」とのタイトルが付いています ↓

別表四

記載を確認するのは、上図の「赤枠内」です。「倒産防止共済掛金損金算入」として 2,400,000円と記載をしています。

その左端には、縦書きで「減算」と書いてあるのがポイントです。これは、「決算書の利益から、さらに 2,400,000円を減算しますよ」ということをあらわしています。

いちばん上の行には「当期利益又は当期欠損の額」として 15,619,889円とありますよね。これが、この会社の決算書に掲載されてる「当期利益(税引後)」の金額です。

そこから、倒産防止共済掛金 2,400,000円を減算するので、上図いちばん下の「仮計」は 13,219,889円となっています(15,619,889 − 2,400,000)。この 13,219,889円に税率を掛け算して税金が計算されるしくみです。

したがって、掛金を資産として処理しても、税金が高くなることはありません。

なお、「倒産防止共済掛金損金算入」の部分は、必ずしもまったく同じ言葉でなくてもだいじょうぶです。倒産防止共済掛金を損金(税金計算上の費用)にするよ! と、わかるような言葉であればかまいません。

別表五(一)

3つめの別表は、「別表五(一)」です。「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」とのタイトルが付されています。

記載を確認するのは、上図の「赤枠内」です。「倒産防止共済掛金」として 2,400,000円と記載をしています ↓

別表五(一)

ポイントは、2,400,000円のアタマに付いている「△」です。これは「マイナス」をあらわしています。

これは、決算書(貸借対照表)に掲載されている「利益剰余金(過去の利益の累積額)」よりも、税金計算上は 2,400,000円少ないよ。ということをわかるようにするためです。さきほど、別表四で「減算」したことを受けて、のことでもあります。

あまり深く考え出すとタイヘンなので。「まぁ、そんなもんかな」くらいに考えておきましょう。

以上、3つの別表の記載を確認できればOKです。これで、倒産防止共済掛金を決算書で費用にしなくても、税金が高くなることはありません。

解約手当金を受け取った場合

自己都合で解約する場合には、解約手当金を受け取ることになります。そのときには、受け取った金額を、資産として処理した「倒産防止共済掛金」から取り崩すことになります。

取り崩した金額は、決算書では「収入」ではありませんが、税金を計算するときには「収入」として取り扱うことに注意が必要です(別表四で加算する)。

これは、掛金を支払ったときには、税金計算上をするうえで「費用」として扱ったことに対応させるため、というのが理由になります。ちょっとむずかしいですよね。詳しくは顧問税理士に聞くなどしてみましょう。

 

倒産防止共済掛金を決算書で費用にしない「銀行融資のメリット」とは?

ここまで、「倒産防止共済掛金を決算書で費用にしない、でも税金は高くならない方法」をお話してきました。

ここからは、掛金を決算書で費用にしないことによる「銀行融資のメリット」についてお伝えしていきます。メリットはぜんぶで3つです。

《メリット1》利益が増える

冒頭、「利益が多いほど融資は受けやすく、利益が少ないほど融資は受けにくくなる」という話をしました。

この点で。決算書(損益計算書)で、倒産防止共済掛金を費用にしなければ、その分だけ利益が増えますから。結果として、利益が増えて融資が受けやすくなります。

逆に、決算書で掛金を費用としてしまうと。その分だけ利益が減りますから、融資が受けにくくなる。同じ掛金を払うのでも、いっぽうでは融資が受けやすく、もういっぽうでは融資が受けにくい。

当然、融資が受けやすいほうを選んだほうがいいですよね。だから、掛金は決算書で費用にしないほうがいいのです。

《メリット2》資産が増える

倒産防止共済掛金を費用にする代わりに、資産にしましょう。という方法をお伝えしました。すると、当然ながら、資産が増えます。

資産が増えると、安全度が高まるので、融資が受けやすくなることを覚えておきましょう。

決算書(貸借対照表)を見たときに。たとえば、資産がぜんぶで 5,000万円、負債がぜんぶで 3,000万円あるA社と。資産が 2,000万円、負債が 3,000万円あるB社と。どっちが安全か? と言ったら、A社です。

同じ負債の金額であれば、資産が多いほうが安全。逆に、B社は資産よりも負債が多く、実質的に破綻している状態です。B社のように、資産よりも負債が多いことを「債務超過」と言います。これは、とても融資が受けにくい…

債務超過を避けて、できるだけ資産超過の状態にするためにも、決算書の資産は多いほうがいい。だったら、掛金は資産として処理するほうがいいですよね。ということになります。

《メリット3》リスクへの備えを示せる

倒産防止共済掛金を資産として処理すると。掛金の支払累計額が、決算書(貸借対照表)に掲載されることになります。

すると、一見して、「連鎖倒産のリスクに対する備えが 〇〇円ある会社」とわかる。銀行から見れば、「リスクへの備えがある安全な会社」となりますので、融資が受けやすくなるという効果が期待できます。

また、倒産防止共済には、「貸し付け制度」もあります。取引先の倒産などに限らず、会社が資金繰りに困ったときには、掛金累計額に応じて借入をすることができるのです。これもまた、いざというときの会社の安全性を高めるものと言えるでしょう。

以上をふまえて、会社は「倒産防止共済掛金があるんだ!」ということを、銀行にアピールすることが大切になります。そのためには、決算書(貸借対照表)に「倒産防止共済掛金」の勘定科目で明示することです。

これに対して、「保険積立金」などの勘定科目だと。いまいち内容が伝わらず、アピール不足になってしまいます。掛金を資産として処理するときには、はっきりと明示するようにしましょう。

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まとめ

銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にしてはいけない、というお話をしてきました。

掛金については「保険料」などの勘定科目で、「費用」として処理している決算書がほとんどです。費用として処理することで、銀行融資が受けにくくならないように気をつけましょう。

銀行融資を受けるなら倒産防止共済掛金は費用にするな【別表四・五(一)、十(七)書き方付き】

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