会社の決算書のなかに潜む「隠れ損失」。
その隠れ損失を、コロナ禍に乗じて一掃しましょう。決算書を綺麗にしてコロナ後の銀行融資に備えましょう、というお話です。
コロナ後の銀行融資に備えるためにできること。
唐突ではありますが。
ていどの差こそあれ、会社の決算書のなかに「隠れ損失」が潜んでいることは少なくありません。
隠れ損失とは? 具体的には次の3つです ↓
- 粉飾による隠れ損失
- 不良資産による隠れ損失
- ずさんな経理による隠れ損失
これらの「隠れ損失」について、くわしくは後述するとして。
いずれも、隠れているものを明らかにすることで、「決算書の利益を減らしてしまう」という点で共通しています。
隠れ損失が多いほど、決算書は赤字に近づいていく。あるいは、赤字が大きくなる、ということです。
だから、会社としては隠しておきたいわけですが。いつまでも隠しておくわけにはいきません。いつかは明らかにしなければいけないし、隠したままでは「銀行ウケ」もよくないからです。
そこで。コロナ禍に乗じて、隠れ損失を一掃することを考えてみましょう。
きょう現在(2020年6月17日)、多くの会社がコロナの影響を受けて、売上・利益が減少。決算書が赤字… という会社は相当数あるものと推測します。
であるならば。赤字であること自体は、ふだんよりも「目立たない」はずです。目立たないことを逆手にとって、いまのうちに「隠れ損失」を一掃するのはどうでしょう?
隠れ損失を、決算書ではっきり「損失」として処理する。すると、今後の決算では「隠れ損失」の心配がなくなります。
コロナ後には、銀行融資を受けることが難しくなる。というのが、わたしの考えです。そのときになって、隠れ損失があったり、隠れ損失を処理して赤字になるのでは、ますます融資が受けにくくなってしまいます。
というわけで、コロナ禍に乗じて、隠れ損失を一掃することを考えてみましょう。
このあと、3つの「隠れ損失」の説明と、隠れ損失を一掃するときの「注意点」とをお話していきます。
コロナ禍に乗じて一掃したい3つの「隠れ損失」
粉飾による隠れ損失
コロナ禍に乗じて一掃したい3つの「隠れ損失」、1つめ。それは、「粉飾による隠れ損失」です。
粉飾とは、事実とは異なる決算書をつくること。その方法はいろいろです。
とりわけよくある粉飾で言うと、たとえば、「架空売上による売掛金」あたりでしょうか。ウソの売上を計上するにあたって、売掛金を計上する。当然、売掛金が回収されることはなく、貸借対照表に残り続けます。
これを綺麗にするためには、なんらかの「損失」として処理することです。売掛金と同額の損失を計上して、ウソの売掛金を一掃することです。
似たような粉飾として、「架空在庫」があります。在庫を増やすと利益が増える、というのは古典的粉飾テクニックであり、広く知られているところでしょう。
この架空在庫を一掃するには、やはり、「損失」として処理することが必要になります。
加えて、粉飾の有名どころをもうひとつ。「減価償却費の計上不足」です。本来計上すべき減価償却費を計上しないことで費用を減らす、利益を水増しする方法になります。
このとき、減価償却費の計上不足分の金額だけ、貸借対照表に掲載されている資産額は過大になる。というのは、会計的・専門的で難易度高めのハナシではありますが。
なんにせよ、「過大」を解消するためには、やっぱり、「損失」として処理することが必要です。
というわけで。このような「粉飾による隠れ損失」があるのであれば、コロナ禍による赤字に乗じて、損失処理することを検討しましょう。
不良資産による隠れ損失
コロナ禍に乗じて一掃したい3つの「隠れ損失」、2つめ。それは、「不良資産による隠れ損失」です。
ここで言う「不良資産」とは。たとえば、「回収不能になっている売掛金」や、「売れる見込みがないたな卸資産」などを言います。
それらの不良資産は、損失処理すべきものではありますが、「決算書の利益を減らしたくない」との思いから、しばしば据え置かれるものです。
けれども、決算書の数字と実態をあわせるためには、どこかで「損失」として処理することが必要になります。
実態にあわない決算書は、経営判断を誤らせる原因にもなれば、銀行からの信用を失う原因にもなるところです。
また、いわゆる「含み損」を抱えた不動産や有価証券なども「不良資産」にあたります。
投資目的で買った不動産、使われていない不動産。買ったときよりも、いまの時価が下がっている… 株式や投資信託が買ったときよりも値下がりしている、塩漬けになっている… というようなケースです。
含み損を解消できる見込みがないのであれば、思い切って「処分(売却)」をする。処分をすることで、「損失」として処理をする。
「不良資産による隠れ損失」があるのであれば、コロナ禍による赤字に乗じて、損失処理することを検討しましょう。
ずさんな経理による隠れ損失
コロナ禍に乗じて一掃したい3つの「隠れ損失」、3つめ。それは、「ずさんな経理による隠れ損失」です。
会社でおカネを使ったのだけれど、なにに使ったかよくわからない。あるいは、社長が個人的なことに会社のおカネを使ったままになっている。
結果として、貸借対照表には相当な金額の「仮払金」や「役員貸付金」などが掲載されている、という会社があります。ずさんな経理をしていることのあらわれです。
会社自身にとってよくないことはもちろん。ずさんな経理は、銀行からの信用を失いますから、融資が受けにくくなる点でもよくありません。
そこで、仮払金や役員貸付金を解消するにあたって、なんらかの「損失」として処理するのは1つの方法です(ただし、税金計算上の問題が生じる可能性がありますので税理士にも相談することをおすすめします)。
場合によっては、立替金、未収入金、前払費用、といった勘定科目にも、「ずさんな経理による損失」が潜んでいることがあります。いちど貸借対照表について、それぞれの勘定科目のなかみを確認しておきましょう。
そのうえで。「ずさんな経理による隠れ損失」があるのであれば、コロナ禍による赤字に乗じて、損失処理することを検討しましょう。
隠れ損失を一掃するときの注意点
ここまで、コロナ禍に乗じて一掃したい3つの「隠れ損失」についてお話をしてきました。
ここでは、実際に「隠れ損失」を一掃するときの注意点をお話します。つまり、隠れ損失を明らかにして、損失として計上するときの注意点です。
ひとつは、できるだけ「特別損失」として処理すること。
いずれの隠れ損失についても、「通常の費用」とは異なる「異常な損失」です。「売上原価」や「販売費及び一般管理費」としてしまうと、通常の利益を見誤ることにもなりかねませんので。
それから、もうひとつ。特別損失とした内容について、銀行にはあらためて説明をしておくこと。
決算書を見りゃあわかるだろ? ということではなく。「隠れ損失」が生じた経緯を説明する。「隠れ損失」を一掃して、決算書の適正化をはかることにしたという考えを説明しましょう。
「粉飾による隠れ損失」や「ずさんな経理による隠れ損失」については、誠意をもって反省の念を表現することも必要です。これからは同じことを繰り返さないとの表明も必要でしょう。
そういった説明もなく、ただただ決算書を渡しておしまい、ということがないように。これが、隠れ損失を一掃するときの注意点です。
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まとめ
会社の決算書のなかに潜む「隠れ損失」。
その隠れ損失を、コロナ禍に乗じて一掃しましょう。決算書を綺麗にしてコロナ後の銀行融資に備えましょう、というお話をしてきました。
コロナ後には、銀行融資を受けることが難しくなる。というのが、わたしの考えです。そのときになって、隠れ損失があったり、隠れ損失を処理して赤字になるのでは、ますます融資が受けにくくなってしまいます。
そんなことがないように。隠れ損失があるのであれば、早めに処理しておきましょう。