『運転資金は短期で借りる、ムリなら折り返す』ができていない会社は多い

『運転資金は短期で借りる、ムリなら折り返す』ができていない会社は多い

「運転資金」について、融資を受けるのであれば。「短期で借りる、ムリなら折り返す」のが正解です。

けれども、意外とそれができていない会社は多い。だから気をつけましょう、というお話をしていきます。

目次

「運転資金は短期で借りる、ムリなら折り返す」ができていない。

会社・事業における銀行融資について。資金使途(借りたおカネの使いみち)として、「運転資金」が挙げられます。

ここで言う「運転資金」とは、を算式にするとこちらです ↓

運転資金の算式

売掛金・受取手形 + たな卸資産 − 買掛金・支払手形

ではなぜ、この「運転資金」分のおカネを借りるのか? と言えば。

売掛金・受取手形、たな卸資産(在庫)は、おカネに変わるのを待っている状態のもの。おカネが寝ている状態にある、と言えます。

したがって、売掛金や受取手形、たな卸資産があればあるほど、資金繰りは厳しくなる。「だから、おカネを借りておきましょう」というのが、運転資金の融資です。

ちなみに。買掛金・支払手形は、逆に、おカネの支払いを待ってもらっているものなので、「運転資金の算式」ではマイナスをしています。

そんな「運転資金」について。融資を受けるのであれば、「短期」で借りていますか? 短期がムリなら、「折り返し融資」を受けていますか?

これに対して、「いや、長期の毎月返済で借りている」とか、「折り返し融資? なにそれ」ということだとすると危険です。資金繰りが悪くなってしまいます。けれども、そういう会社は意外と少なくありません。

というわけで。このあと、次のようなお話をしていきます ↓

このあとお話の内容
  • 運転資金は短期で借りる
  • 短期がムリなら折り返し融資を受ける

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

運転資金は短期で借りる

会社が運転資金の融資を受けるのであれば、まずは「短期で借りる」ことを考えましょう。

ではなぜ、短期で借りるのか? その必要性を説明するにあたって、具体例を挙げてみます。

売掛金が 600万円、たな卸資産が 300万円、買掛金が 400万円。この会社の「運転資金」はいくらになるでしょうか? 冒頭でふれた「運転資金の算式」にあてはめると、

売掛金 600万円 + たな卸資産 300万円 − 買掛金 400万円 = 500万円

上記から、運転資金の金額は 500万円であることがわかります。この 500万円を「短期」で借りましょう。そういう話をしています。

なお、「短期で借りる」とは。1年以内に完済をする融資を受ける、ということです。1年以内に 500万円を返済する。

でも、実際に 500万円を返済したら、手元のおカネが 500万円減りますから。返済時にも運転資金が 500万円で変わらないという前提であれば、返済をしたことによって資金繰りが厳しくなってしまいます。

そこで。返済期限が来た時点では、「もういちど 500万円を短期で融資する」という対応をとる。これを「短期継続融資」と呼びます。

文字どおり、「短期」の融資を「継続」するということです。これによって 500万円のおカネは、実質的には「貸しっぱなし(会社からすると、借りっぱなし)」となります。

運転資金とは、「会社・事業が継続する限り必要になるおカネ」なのですから、「貸しっぱなし」というのは理にかなった貸し方だと言えるでしょう。

また、銀行からしても、売掛金やたな卸資産はいずれ現金化されるものと考えれば、貸したおカネを回収しそびれる可能性は少ないものです。

つまり、売掛金やたな卸資産は「担保」みたいなものなのですから、「貸しっぱなし」が、危険な貸し方だとは言えません。むしろ、担保(みたいなもの)がある分だけ安全です。

だから。会社が運転資金を借りるときには、「短期で借りる」ようにしましょう。銀行には、短期継続融資を依頼するようにしましょう。

ところが。

それでも銀行は、短期継続融資には及び腰です。なぜなら、その昔(2002年)、金融庁から「短期継続融資はリスケにあたる」とのお達しがあったから。

もともと短期で返すはずの融資を、融資先の調子が悪いから返済猶予したんじゃないの? と、金融庁。だとすれば、銀行は貸倒引当金(回収不能に備えた見積もり費用)を計上しなければならず、業績が悪化してしまいます。

それは困る、というわけで。銀行は、短期継続融資には及び腰となりました。

ところがところが。

金融庁は、「実態に合った短期継続融資は、やっぱりOK」と言い出したのが 2015年のこと。とはいえ、いちど「短期継続融資はNG」が染み付いた銀行は、なかなか姿勢が変えられずにいまにいたります。

結果として、短期継続融資に対する姿勢は、銀行によってだいぶ差がある。ということは覚えておきましょう。

あわせて、「赤字」のときには、短期継続融資を受けるのは難しいことも覚えておきましょう。赤字の補てんにおカネが使われる可能性が高いから、ですね。

したがって。短期継続融資を受けようとするのであれば、話を聞いてくれそうな銀行に依頼すること(まずはメインバンク)。そして、黒字のときに依頼をすることです。

 

短期がムリなら折り返し融資を受ける

ここまで、運転資金はまず「短期で借りる」ということをお話してきました。そのうえで、短期で借りる(短期継続融資)のはカンタンではないこともお話をしました。

実際、運転資金の融資のほとんどは「短期ではなく長期」です。ほとんどの会社が、運転資金を長期で借りている。

完済期限は1年超。それまで、毎月返済をしていく。これが「長期で借りる」ということです。

すると、なにが起きるのか? 具体例で考えてみましょう。

売掛金が 600万円、たな卸資産が 300万円、買掛金が 400万円。この会社の「運転資金」は 500万円、というのはさきほどの例といっしょです。

では、この会社が運転資金 500万円を、返済期間5年(毎月 8.3万円ずつ返済)で借りたとします。

これにより、「借りた瞬間」には 500万円のおカネが手元に入りますから、「運転資金 = おカネ」となって、資金繰りは盤石です。

ところが。

毎月返済を続けていくと、当然ながら、「おカネ」は減っていきます。1年返済を続ければ 100万円減り、2年返済を続ければ 200万円減ります。2年たった時点で、借りたおカネは 300万円まで減ってしまう。

いっぽうで、同じように商売を続けているのであれば「運転資金」は変わりません。変わらず 500万円のままです。

すると、「運転資金 500万円 ≠ おカネ 300万円」になります。必要な運転資金に対して、おカネが足りない。ゆえに、資金繰りが厳しくなる…

というのが、多くの会社で起きていることです。

だから、返済をしなくてもいい「短期継続融資」で借りたいわけですが。そうは言っても、短期継続融資では借りられないんだ! という状況もあるでしょう。

そこで必要になるのが、「折り返し融資」です。

折り返し融資とは、元々借りていた金額まで、借り直す融資を言います。さきほどの例で言えば、2年返済を続けたことで減った 200万円を借り直して、もういちど借入残高 500万円にする。

借入残高が減った分のおカネを借り直すことによって、会社はふたたび、「運転資金 500万円 = おカネ 500万円」のバランスを取り戻すことができます。

にもかかわらず。折り返し融資をしていない、ただただ返済をし続けている会社は少なくありません。そのような会社は、手元のおカネが不足して、資金繰りに苦労することになります。

長期で借りて、返済だけしていたら、資金繰りは悪くなる。だから、折り返し融資が必要。この考え方を忘れないようにしましょう。

なお、折り返し融資は、比較的借りやすい融資だと言えます。

銀行としては、いちどは貸したことのある金額までの融資です。審査の実績もあるし、その後の返済実績もあることから、折り返し融資はやりやすい。

この特徴もふまえて、会社は「定期的・機械的」に折り返し融資を進めていくことです。「当初借入金額の3分の1くらい」を返済したら折り返す。目安として、覚えておきましょう。

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まとめ

「運転資金」について、融資を受けるのであれば。「短期で借りる、ムリなら折り返す」のが正解です。

けれども、意外とそれができていない会社は少なくありません。

なぜ、短期で借りる必要があるのか? 短期で借りれないなら、なぜ折り返し融資を受ける必要があるのか? 理解をしておきましょう。

そこをはずすと、会社の資金繰りは悪くなってしまいます。

『運転資金は短期で借りる、ムリなら折り返す』ができていない会社は多い

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