会社はぜひともつくるべき資金繰り表について。
日次(日繰り)・円単位の資金繰り表をつくってはいけない、と言える3つの理由をお話ししていきます。
資金繰り表には、日次・月次・年次がある。
会社を続けるうえで、社長が経営を続けるうえで、「ぜひつくった方がいい」と言えるものの1つに「資金繰り表」が挙げられます。
資金繰り表とは、会社のおカネ(現金預金)について、入金・出金の状況と残高とを記録する書類です。会社は資金繰り表をつくることで、おカネの増減を把握することができる。
その資金繰り表には、大きく分けて3つの種類があります。「年次」「月次」「日次」の3つです。
年次の資金繰り表は、「1年ごと」を期間とする資金繰り表。基本のカタチはこんなカンジです ↓
年次の資金繰り表をつくることにより、それぞれの1年間で、どれだけのおカネが増減したか(実績)・しそうか(予測)。その増減理由はなにか、を把握できます。
続いて、月次の資金繰り表は、「1ヶ月ごと」を期間とする資金繰り表。基本のカタチはこんなカンジです ↓
さきほど見た年次の資金繰り表の「横軸」が、「年」から「月」に変わっただけです。
年次の資金繰り表をつくることにより、それぞれの1ヶ月間で、どれだけのおカネが増減したか(実績)・しそうか(予測)。その増減理由はなにか、を把握できます。
さいごに。日次の資金繰り表は、「1日ごと」を期間とする資金繰り表です。「日繰り表」などとも呼ばれます。基本のカタチはこんなカンジ ↓
さきほどまでの、年次や月次の資金繰り表とは、少々おもむきが異なるのがわかるでしょう。
日次の資金繰り表では、現金出納帳や預金通帳をもとに、ひとつひとつの取引によるおカネの動きを記録していきます。
日次の資金繰り表をつくることにより、それぞれの1日で、どれだけのおカネが増減したか(実績)・しそうか(予測)。その増減理由はなにか、を把握できます。
と、前置きが長くなりましたが。
そのような資金繰り表について、「日次の資金繰り表をつくってはいけない」と言える理由、加えて「円単位の資金繰り表をつくってはいけない」と言える理由を話ししていきます。
理由は3つ、次のとおりです ↓
- 会社が潰れる
- 社長が疲れる
- 時間がムダになる
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
日次(日繰り)・円単位の資金繰り表をつくってはいけない3つの理由
会社が潰れる
日次(日繰り)・円単位の資金繰り表をつくってはいけない理由の1つめは、「会社が潰れる」からです。
日次の資金繰り表、つまり、日繰り表をつくらなければならないのであれば。それは、1日単位で、おカネの動きを把握しなければ資金繰り破綻を起こしてしまう。
会社の資金繰りが、非常に厳しい状態であることをあらわしています。
このような会社に共通して言えるのは、「現金預金の残高が少ない」ということです。具体的には、現金預金の残高が「平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月分」よりも少ない。
すると、 ちょっと入金や出金のタイミングがずれるだけでおカネが足りなくなる…ということが起こりやすくなります。
したがって、会社は少なくとも「平均月商の1ヶ月分」よりも多くの現金預金を持つようにすべきです。
この点で、平均月商の2ヶ月分以上の現金預金があると。おカネが足りなくなる…というケースは少なくなります。少しくらい入金や出金のタイミングがズレてもだいじょうぶです。
というわけで。日次の資金繰り表をつくらなければならないようだと、「会社が潰れる」と理解しておきましょう。
また、円単位の資金繰り表をつくらなければならないのであれば、それもまた、会社の資金繰りが非常に厳しい状態であることをあらわしている。と、言えます。
これに対して、資金繰り表をつくるのであれば、千円単位や万円単位でもじゅうぶんです。誤解を恐れずに言えば、千円未満や万円未満の端数を無視したところで、資金繰りに大きな影響はない。
にもかかわらず、円単位の資金繰り表が必要になるのは、円単位でのおカネの有無を把握する必要があるから。 千円未満あるいは万円未満のおカネの有無が問題になるほど、資金繰りが逼迫しているからです。
そのような状況では、やはり「会社が潰れる」ことになる。そう考えて、平均月商の2ヶ月分以上の現金預金を持つ(必要であれば銀行融資も受ける)。日次の資金繰り表など頼りにしない状況を目指しましょう。
社長が疲れる
日次(日繰り)・円単位の資金繰り表をつくってはいけない理由の2つめは、「社長が疲れる」からです。
日次の資金繰り表や円単位の資金繰り表をつくらなければいけない会社は、資金繰りが厳しい会社だという話をしました。
そのような会社の社長は疲れます。言うまでもなく、社長の仕事に「カネ繰り」が加わるからです。
会社の現金預金が「平均月商の1ヶ月分」にも満たないような状態は、いわゆる「自転車操業」。社長は日々、おカネのやりくりに縛られます。それが「カネ繰り」です。
中長期的におカネをやりくりする「資金繰り」と、短期的におカネをやりくりする「カネ繰り」は別モノだと言えます。
「資金繰り」は絶対にやらなければいけないものであるのに対して、「カネ繰り」は必ずしもやらなくていいもの。むしろ、やらないほうがいいのが「カネ繰り」です。
にもかかわらず、社長が「カネ繰り」をしなければならないのだとすれば。 社長はカネ繰りに「時間」を奪われ、ストレスに「心」まで奪われてしまいます。
ストレスが大きくなれば「体」にまで影響が出ることもあるでしょう。大きな損失です。
したがって、日次の資金繰り表や円単位の資金繰り表をつくらなければいけないほど、日々のおカネに余裕がないようではいけません。
資金繰り表をつくるのであれば、月次・年次の資金繰り表、千円単位・万円単位の資金繰り表でじゅうぶん。そう言える状況をつくりましょう。
繰り返しになりますが、おカネを持つことです。おカネを自己資金で用意するのが難しければ、銀行融資を受けることも選択肢のひとつです。
借金は嫌だ、と思われるかもしれませんが。 「社長が疲れる」というデメリットは、借金のデメリットに勝るものでもあります 。
時間がムダになる
日次(日繰り)・円単位の資金繰り表をつくってはいけない理由の3つめは、「時間がムダになる」からです。
日次の資金繰り表は、必ずつくらなければいけないものではありません。日々の現金預金の残高に余裕があるのであれば(目安として、平均月商の2ヶ月分以上)、日次の資金繰りを気にする必要はないからです。
その場合には、月次の資金繰り表・年次の資金繰り表があれば事足ります。
にもかかわらず、資金繰りが厳しいがゆえに、日次の資金繰り表をつくらなければいけないのだとしたら。
時間のムダです。労力のムダでもあります。
また、円単位の資金繰り表をつくるのも時間のムダだと言えます。千円単位や万円単位で済むところを、円単位の細かさとなれば、余計な時間がかかるというものです。
ちなみに。資金繰り表の作成を「自動化」しているからだいじょうぶ、時間はムダにならない、と言うのであれば注意しなければいけません。
資金繰り表の作成を自動化している人のなかには、資金繰り表の「しくみ」がよくわかっていない人がいるからです。
資金繰り表の「しくみ」がわからないと、資金繰りを改善するうえでの理解が不足します。理解が不足すれば、じゅうぶんな改善も見込めません。
資金繰り表の「しくみ」がわかっているとしても、自動化による「認識の低下」という問題もあります。たとえば、自社の入金・出金の特徴がわかっていない…とか。
これに対して、手作業で資金繰り表をつくる場合。しくみを理解していなければつくれませんし、みずから手を動かすことで自社の入金・出金の特徴も認識しやすくなるものです。
なお、ここで言う「手作業」とは、「手書き」を強制するものではありません。 Excelなどを使って作成するのも手作業のうちです。
ただし、元になる数字は「手入力」をしたほうがいい(合計額の計算などに算式を使うのはOK)。手入力をすることで、その数字が記憶に残る、認識しやすくなる。ひいては、資金繰りの理解につながります。
というわけで、入力をするのであれば。円単位ではなく、千円単位・万円単位のほうが、時間のムダは少なくてすむ。速く作成することができる。
もちろん、しくみの理解も、数字の認識もじゅうぶんなのであれば、Excelで関数やマクロを使ったりして自動化するのもよいでしょう。でも、その前に。資金繰りは手で、体で覚えましょう。そういう話です。
銀行融資におすすめのメニュー
モロトメジョー税理士事務所では、「銀行融資のサポート」をするメニューをそろえています! 当事務所は経営革新等支援機関の認定を受けています。
銀行融資の記事まとめページ
銀行融資入門セミナー
銀行融資・財務のコンサルティング
銀行融資の個別相談
まとめ
会社を続けるうえで、社長が経営を続けるうえで、「ぜひつくった方がいい」と言えるものの1つに「資金繰り表」が挙げられます。
その資金繰り表について、「日次の資金繰り表をつくってはいけない」と言える理由、加えて「年単位の資金繰り表をつくってはいけない」と言える理由を理解しておきましょう。
- 会社が潰れる
- 社長が疲れる
- 時間がムダになる