支払利息は、銀行も注目をしている勘定科目であるだけに、押さえておくべきポイントがあります。
というわけで。銀行対応を考えた、支払利息の経理処理3つのポイントをお話していきます。
銀行が注目する「支払利息」
会社の経理処理について。銀行から融資を受けている会社であれば、「銀行対応」を考慮する必要があります。
つまり、「銀行からどう見られるか?」までを考えて経理処理をする。この点で、本記事では「支払利息」の経理処理を取り上げてみます。
支払利息は、銀行も注目をしている勘定科目であるだけに、押さえておくべきポイントがあります。こちらです↓
- 支払利息の内訳を表示する
- 信用保証料は前払費用で処理する
- 借入金一覧表を提示する
それぞれのポイントを押さえるべき理由や、銀行の見方・考え方などをふまえてお話していきます。
それではこのあと、3つのポイントを順番に見ていきましょう。
銀行対応を考えた「支払利息」の経理処理 3つのポイント
《ポイント1》支払利息の内訳を表示する
銀行対応を考えた「支払利息」の経理処理、1つめのポイントは「支払利息の内訳を表示する」です。
決算書の「支払利息」という勘定科目には、「借入金の利息」のほかにも、「信用保証協会への信用保証料」や「手形の割引料」が含まれていることがあります。
であるならば、支払利息は内訳を表示するようにしましょう。借入金の利息はいくら、信用保証料はいくら、手形の割引料はいくらか、をわかるようにする。
この点で、決算書の「勘定科目」を分けるのは、ひとつの方法になります。たとえば、「支払利息」「信用保証料」「手形割引料」の勘定科目に分けるとか。
これであれば、銀行が決算書を見たときにも、支払利息の内訳がすぐにわかります。
もうひとつの方法は、決算書に付属する「勘定科目内訳明細書」で内訳を表示することです。決算書では「支払利息」の勘定科目にまとめたうえで、「勘定科目内訳明細書」のなかで内訳を示す。
勘定科目内訳明細書には種類があり、支払利息について記載をするのは「借入金及び支払利子の内訳書」というものになります。
そのなかには、「期中の支払利子額」という項目があるので確認をしてみましょう。
この項目を使って、「支払利息」「信用保証料」「手形割引料」をそれぞれ区分して(行を分けて)記載することで、内訳を表示することができます。
というわけで。決算書の勘定科目を分けるか、勘定科目内訳明細書を使うか、いずれかの方法で、支払利息の内訳を表示しましょう。
ところで。なぜ、支払利息の内訳を表示するのか?
それは、銀行が「平均借入金利」を気にしているからです。平均借入金利とは、算式で言うと「平均借入金利 = 支払利息 ÷ {(期首借入金残高 + 期末借入金残高)÷ 2}」になります。
要は、その会社が「銀行からどれくらいの金利で借りているか?」をあらわすのが平均借入金利です。銀行はその平均借入金利を見て、融資をするか否かや、どれくらいの金利を提示するかを考えています。
ではそのときに、支払利息のなかに「信用保証料」やら「手形割引料」やらが混じっていたらどうでしょう? 実際の借入金利よりも、平均借入金利は高めに計算されてしまいますよね。
金利が高い会社は「危ない会社」というのが銀行の見方ですから、平均借入金利を高く見られるのは、会社にとってよいことではありません。
銀行が正しく平均借入金利を計算できるように、支払利息の内訳を表示しておく必要があるわけです。
[ad1]《ポイント2》信用保証料は前払費用で処理する
銀行対応を考えた「支払利息」の経理処理、2つめのポイントは「信用保証料は前払費用で処理する」です。
銀行から、信用保証協会付きの融資を受けた場合に、信用保証協会へ支払う「信用保証料」。その信用保証料の金額は、「保証期間」にもとづいて計算されています。
信用保証料を「経費」にできる金額は、「保証期間のうち、期間が経過した分」だけです。
たとえば、保証期間 60ヶ月分の信用保証料 30万円を支払った場合。12ヶ月を経過したところで決算を迎えたのであれば、経費にできるのは「6万円(30万円 × 12ヶ月/60ヶ月 )」です。
残りの 24万円は「前払費用」として、貸借対照表の資産の部に記載することになります(厳密には、1年以内に経費化できる金額を「前払費用」に、1年超で経費化できる金額は「長期前払費用」に区分します)。
この点で。前払費用とはせずに、支払時にいちどに経費にしている経理処理が散見されるところです。
いちどに経費にしている分だけ、利益は少なくなります。銀行融資は、利益が多いほど受けやすいことを考えると、いちどに経費にするのは得策とは言えません。
保証期間が経過していない分は、前払費用として処理することで、少しでも利益を増やすほうがよいでしょう。
もしかしたら、いちどに経費にして「税金を減らす」ことを考えているのかもしれませんが。税金計算のルール上も、保証期間が経過していない分は、前払費用とすべきところです。
いずれにせよ、信用保証料は前払費用で処理するものと考えておきましょう。
本文に記載した経理処理は、繰り上げ返済時に返金がある信用保証料が前提です。
いっぽうで。繰り上げ返済したときに、保証期間未経過分の返金がない信用保証料については、税金計算上は「繰延資産」と考えられます。
この場合、保証期間経過分を「繰延資産償却」として経費処理するのは、「繰り上げ返済時に返金がある信用保証料」と似ているところです。
ただし、信用保証料の支払額が 20万円未満の場合には、支払時にいちどに経費にできる点では違いがあります。
《ポイント3》借入金一覧表を提示する
銀行対応を考えた「支払利息」の経理処理、3つめのポイントは「借入金一覧表を提示する」です。
銀行が「平均借入金利」を気にしている、というのは《ポイント1》でお話をしました。もっと言えば、銀行は「ほかの銀行の金利」を気にしています。
平均借入金利を気にしているのは、平均借入金利を知ることで「ほかの銀行の金利をうかがい知るため」であり。可能であれば、ほかの銀行それぞれの金利を知りたい、と銀行は考えています。
だったら教えてあげればいい、というのがわたしの考えです。
具体的には「借入金一覧表」を作成して、銀行に提示します。借入金一覧表に記載する項目はこんな感じです↓
- 借入先の名称
- 当初借入額、現在残高、月返済額
- 借入日、返済期日、返済日、借入期間
- 返済方法、資金使途、金利、担保・保証など
金利をはじめ、借入金に関する情報を明らかにするのが「借入金一覧表」です。
業績が悪い会社などは、金利や担保などの融資条件が悪いことから、銀行に対して「ほかの銀行の情報」は隠したほうがいい。との考え方もあります。
たとえば、金利が高い借入があれば、ほかの銀行もそこに合わせてくる可能性があるからですね。
けれども。隠せば隠したで、「疑われる」という一面もあります。なにか都合の悪いことがあるから隠すのだろう?と、銀行から疑われるのであれば、融資は受けにくくなってしまいます。
だから、わたしは「借入金一覧表」は見せるべきだし、隠すべきではないとの考えです。
もちろん、少しでも良い融資条件を引き出せるように、決算書でしっかりと利益を出す。利益を出せるように改善を続けていくのが大前提です。
会社は改善の「姿勢」を見せることに加えて、情報を「開示」して、銀行からの信用・信頼を得ていく。という銀行対応をおすすめします。
支払利息に関する経理処理の一環として、「借入金一覧表を提示する」ことも考えてみましょう。
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まとめ
支払利息は、銀行も注目をしている勘定科目であるだけに、押さえておくべきポイントがあります。
銀行から融資を受けている会社であれば、「銀行対応」までを考慮して、経理処理をするようにしましょう。
- 支払利息の内訳を表示する
- 信用保証料は前払費用で処理する
- 借入金一覧表を提示する