コロナ関連の融資を受けることで、ひとまずは安堵した会社も。ふたたび資金繰りが逼迫してくる時期を迎えています。
そこで。もういちどコロナ融資を受けるべきか・受けてもよいか?の考え方について、お話をしていきます。
ふたたび資金繰りが逼迫するいま、どうするか?
きょうは 2020年10月6日。新型コロナウイルスの長引く影響により、資金繰りに不安を感じている会社は少なくないものと推測します。
コロナ関連の融資を受けることで、ひとまずは安堵した会社も、その後の回復・改善が不十分であれば、ふたたび資金繰りが逼迫してくる時期だからです。
事実、「もういちどコロナ融資を受けようか、どうしようか」という話を見聞きしています。
そこで。もういちどコロナ融資を受けるべきか・受けてもよいか?の考え方について、お話をしていきます。こちらです↓
- 将来、返済できるかどうか?で考える
- 具体的には「将来キャッシュフロー」が決め手
- 借り換えをしておくのはアリ
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
将来、返済できるかどうか?で考える
コロナ関連の融資として、おもなところではまず、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が挙げらます。
加えて、民間金融機関であれば、信用保証協会を利用した「セーフティネット保証」があります。
いずれも、制度上の融資限度額が設けられており、限度額まで余裕があれば、会社は複数回の融資を受けることが可能です。
たとえば、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付であれば、融資限度額は 8,000万円になります。いちどめの融資が 2,000万円だとすれば、まだ 6,000万円の融資を受けられる可能性がある。
(ただし、制度上の融資限度額が、その会社の融資限度額になるわけではありません。会社の状況によっては融資限度額は引き下げられます)
ゆえに、冒頭の「もういちどコロナ融資を受けようか、どうしようか」という話になるわけです。
この点で。ふだんであれば、「借りれるときに借りられるだけ借りる」ことをおすすめしているものの。いまはふだんとは違います。コロナの影響を受けている、受け続けている。
そのなかで、「もういちどコロナ融資を受けるかどうか」は、ずばり「将来、返済できるかどうか」で考えることをおすすめします。
コロナ融資であれ、通常の融資であれ「借りたら返さなければいけない」のは言うまでもありません。したがって、「もういちどコロナ融資を受けたとして、将来、返済できるのか」を考えなければいけません。
この考え方は、いちどめのコロナ融資でも同じでした。けれども、いちどめのときには、多くの会社にとって、コロナが「あまりに突然の出来事」だったために考えている余裕はなかったはずです。
とにかく、「いったん、目の前を乗り切る」。そのためには、融資を受けるよりほかなかった。「将来、返済できるかどうか?」をじっくりと考えていたら、そのあいだに会社がつぶれてしまいます。じっくり考えるためにも、ひとまず借りる必要があったのです。
だから、銀行もまた、「将来、返済できるかどうか?」にはこだわることなく融資をしました。それが、コロナ融資です。
けれども、こんどは違います。2度め以降のコロナ融資に対しては、銀行も慎重です。そして、なにより、会社も慎重に考えなければいけません。
繰り返しになりますが、会社はすでに「将来、返済できるかどうか?」をじゅうぶんに考えないまま融資を受けているのです。そのうえ、さらに、「将来、返済できるかどうか?」を考えずに融資を受けようとしたら?
仮に融資を受けられて、目の前の資金繰りは乗り切ったとしても、いずれまた、資金繰りは厳しくなる。こんどは、融資を受けられない。そうなれば、「多額の借金」ばかりが残ることになります。
だから、「もういちどコロナ融資を受けるべきか・受けてもよいか?」を考えるのであれば、ぜひ「将来、返済できるかどうか?」という検討をするようにしましょう。
では、「将来、返済できるかどうか?」を、いったいどうやって検討するのか。それが、次のお話です。
具体的には「将来キャッシュフロー」が決め手
ここからは、「将来、返済できるかどうか?」をどのように検討するのか、のお話をしていきます。
そもそも、借入金の返済原資は「キャッシュフロー」です。キャッシュフローを算式であらわすと「税引後利益+減価償却費」になります。
減価償却費はさておき、税金を払ったあとの利益(税引後利益)があってはじめて、会社は返済をすることができる。そういうことです。
コロナの影響を受けている会社は、そのキャッシュフローが「大きく毀損」しています。だから、いまは返済できないので、コロナ関連の融資には「据置期間(元金の返済を見送る期間)」が用意されているわけです。
しかしながら、据置期間が終われば返済ははじまります。
そこで、会社が考えるべきは「将来キャッシュフロー」です。将来のキャッシュフローで返済ができるのか、を考えなければいけません。
つまり、返済がはじまった将来において、その時点の「税引後利益+減価償却費」で、返済ができるかどうか。算式であらわすと、
将来の税引後利益+将来の減価償却費 > 将来の返済額
この関係が成り立つかどうかです。
まずは、将来、返済がはじまったときの「年間返済額」を確認してみましょう。そのうえで、その年間返済額よりも大きい「(年間)税引後利益」を出せるかどうか、出せそうかどうかです。
将来のことなどわからない、のはもちろんですし。それを言ったら、元も子もありません。
わからないなりに考えるのであれば、「年間返済額よりも大きい税引後利益」が、現状からイメージできるかどうかになります。
たとえば、将来、返済がはじまったときの年間返済額が 300万円だとして。そのときまでに、「税引後利益 300万円」を実現することがイメージできるかどうか。
イメージするためには、「現状の把握(問題・課題)」「対策の検討」といった「論理」だけではなく、社長の「意欲」も必要です。論理は、意欲があってこそだと言えます。
したがって、論理と意欲は満たされているか。そのうえで、「将来の税引後利益+将来の減価償却費 > 将来の返済額」の関係が成り立つか、を考えることです。
もし、この関係が成り立たなければ。返済がはじまったとたんに、手元のおカネはどんどんと減っていくことになります。
なお、どうしても「将来の税引後利益+将来の減価償却費 > 将来の返済額」は厳しい、という場合。厳しいけれど、税引後利益が出ないわけではない、という場合。こちらについても考えてみましょう↓
将来の借入金残高 <(将来の税引後利益+将来の減価償却費)×15
将来、返済がはじまったときの借入金残高が、「将来の税引後利益+将来の減価償却費」の15倍におさまるかどうか。つまり、15年以内に返済できるだけの利益が出せそうかどうか、です。
「将来の税引後利益+将来の減価償却費 > 将来の返済額」はムリだけれど、「将来の借入金残高 <(将来の税引後利益+将来の減価償却費)×15」であればなんとか… というのであれば。
将来、追加融資を受けたり、いったんリスケ(返済を猶予してもらう)をしたりすることで、会社を持続できる可能性があります(「15」という数字は明確な根拠があるわけではなく、私見であることを申し添えます)。
けれども、「将来の税引後利益+将来の減価償却費 > 将来の返済額」はムリ、「将来の借入金残高 <(将来の税引後利益+将来の減価償却費)×15」もムリとなると。将来、返済に困ったときの打ち手がありません。
そうなれば、多額の借金ばかりが残ってしまいます。
もういちどコロナ融資を受けて、目先を乗り切るのも「ひとつの選択肢」ではあります。ただそれでも、「将来、返済できるかどうか?」、そして「将来キャッシュフローはどうか?」は必ず考えるようにしましょう。
借り換えをしておくのはアリ
さいごに、もうひとつ。ここまでお話してきたこととは別にして、いまある借入金を「借り換え」しておくのはアリです。
日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付や、民間金融機関のセーフティネット保証といったコロナ関連の融資では、「いまある借入金(いわゆる、既往債務)の借り換え」ができます。
借り換えをすることで、いまある借入金よりも返済期間を延ばしたり、金利が下がったり(場合によっては無利子化できたり)、信用保証協会付き融資であれば、信用保証料が返金されることもあるのはメリットです。
ぜひ、検討しておきましょう。
ちなみに。将来キャッシュフローに期待が持てず、もういちどコロナ融資を受けるのは厳しい。だからリスケをしよう、というのは間違いです。
なぜなら、リスケは「将来の回復・改善」を前提として成り立つものだからです。
いまは状況が悪いけれど、将来は状況が回復・改善できる。だから、いまは返済を猶予してください、というのがリスケです。ここでもやはり、「将来キャッシュフロー」が必要になります。
逆に。将来キャッシュフローには期待が持てません。将来、回復・改善ができるかはわかりません。でも、返済を猶予してください。これでは、銀行が納得をするはずがありませんよね。
銀行は、将来返済してもらえそうだからリスケに応じるのであって、返済できないとわかっているのにリスケをすることはないのです。
したがって、将来キャッシュフローがほんとうに見込めないのであれば。「廃業」や「事業売却」といった方向性を検討することになります。
できれば考えたくはないことですし、辛い選択ではありますが。いたずらに傷口を広げて、多額の借金を残してしまうよりも、「将来の選択肢」は広がるものと考えましょう。
銀行融資におすすめのメニュー
モロトメジョー税理士事務所では、「銀行融資のサポート」をするメニューをそろえています! 当事務所は経営革新等支援機関の認定を受けています。
銀行融資の記事まとめページ
銀行融資入門セミナー
銀行融資・財務のコンサルティング
銀行融資の個別相談
まとめ
新型コロナウイルスの長引く影響により、「もういちどコロナ融資を受けようか、どうしようか」と考えている会社もあるでしょう。
そのときの「ひとつの考え方」として、本記事の内容が参考になるようであれば幸いです。
- 将来、返済できるかどうか?で考える
- 具体的には「将来キャッシュフロー」が決め手
- 借り換えをしておくのはアリ