会社・個人事業者が銀行融資を受けるにあたって、公的金融機関の代表格「日本政策金融公庫」が、民間金融機関と違いうところについてお話をしていきます。
日本政策金融公庫は公的な金融機関です。
会社・個人事業者が銀行から融資を受ける場合、大きく分けて2つの選択肢があります。
公的な金融機関から融資を受ける、のがひとつ。もうひとつは、民間金融機関から融資を受ける、です。
このうち、公的な金融機関について。小さい会社や個人事業者が融資を受けるのであれば、「日本政策金融公庫」が有力な選択肢になります。
日本政策金融公庫は、国が 100%の株式を保有する公的な金融機関であり、民間金融機関を「補完」する役割を担う金融機関です。
では、その日本政策金融公庫から銀行融資を受ける場合と、民間金融機関から融資を受ける場合とで、どのような「違い」があるのか? こちらです↓
- 創業時に融資受けやすい
- 赤字でも融資受けやすい
- 折り返しがしやすい
- 金利交渉ができない
- 借り換えできない
- 預金ができない
これらの「違い」を押さえて、日本政策金融公庫からの融資をうまく活用できるようにしましょう。
それではこのあと、順番に見ていきます。
「日本政策金融公庫」が「民間金融機関」と違うところ
創業時に融資受けやすい
創業時には、民間金融機関に比べると、日本政策金融公庫からのほうが融資が受けやすい、という「違い」があります。
そもそも、創業したばかりの会社には「実績」も「信用」もなく、銀行はおカネを貸しにくいものです。実際、創業から3年以内につぶれてしまう会社・個人事業者が4〜6割くらい、とのデータもあります。
もし、融資を受けたあとにつぶれてしまえば、貸したおカネを回収できずに困ってしまう。だから、創業したばかりの会社には、おカネを貸しにくい。というのが、民間金融機関の考え方です。
けれども、それではじゅうぶんな開業資金を確保できないことから、開業する会社・人が減ってしまいます。それは、よろしくない。
そこで、公的金融機関である日本政策金融公庫が、積極的に(民間金融機関に比べると)、創業融資に取り組んでいます。民間金融機関の役割を「補完」しているわけです。
したがって、創業時にはまず、日本政策金融公庫から融資を受ける。日本政策金融公庫から融資を受けた、という「実績」と「信用」をもって、民間金融機関からの融資を受ける。この順序がおすすめになります。
赤字でも融資受けやすい
さきほど、民間金融機関は創業したばかりの会社に融資をしにくい、という話をしました。
民間金融機関が融資をしにくいケースで言えば、もうひとつ。赤字の会社に対する融資が挙げられます。
言うまでもありませんが、赤字の会社・個人事業者は「返済力」が乏しい(あるいは無い)ことから、銀行としては融資を躊躇するところです。
「銀行は晴れの日に傘を差し出し、雨の日に傘を取り上げる」という話がありますが。返済してもらえるかわからない・返済してもらえる可能性が低い相手に、おカネを貸したくないのは当然です。
雨の日(赤字)に傘(融資)を取り上げるのは、理にかなった行動だと言えます。
この点で。日本政策金融公庫には「できるだけ、晴れていると解釈しよう」との考え方があります。民間金融機関では「雨」だと言うけれど、「くもり」くらいに見ておこう。イメージとしては、そんな感じです。
したがって、赤字の会社・個人事業者は、民間金融機関よりも日本政策金融公庫からのほうから、融資を受けることを検討しましょう。
ただし、日本政策金融公庫からの融資がはじめてとなると、スムーズではありません。さすがの日本政策金融公庫も、過去の「実績」がない相手に対しては慎重になります。
ですから、雨の日のことも想定して、日本政策金融公庫とは日ごろからお付き合いをしておく(融資を受けておく)ようにしましょう。
折り返しがしやすい
銀行融資には、「折り返し融資」という考え方があります。折り返し融資とは、「当初借りた金額まで、借り直す融資」です。
たとえば、当初 500万円の融資を受けたとして。毎月返済を続けたことで残高が 300万円になりました(200万円返済した)、という場合。200万円を借り直して、もういちど借入残高 500万円にする。
これが「折り返し融資」です。巻き戻し、巻き直し、などとも呼ばれます。
折り返し融資は、「〇〇万円借りた」という実績があるため、銀行としては取り組みやすい融資です。
「いちど貸してもだいじょうぶ(返済してもらえている)だったのだから、また〇〇万円までは貸してもだいじょうぶだろう」といったところです。
この「折り返し融資」が、日本政策金融公庫はとくにやりやすい。民間金融機関よりもさらに、折り返し融資が受けやすい。と、覚えておきましょう。
赤字の場合など新規融資が難しい場合でも、折り返し融資であれば検討してもらえる可能性があります。
なお、折り返し融資を依頼するタイミングの目安は、「当初の融資金額に対して、3分の1以上返済が進んでいるとき」です。
知ってか知らずか、折り返し融資を受けずにいる会社・個人事業者は少なくありませんが。返済によって手元のおカネが減っているようであれば、折り返し融資も活用していきましょう。
[ad1]金利交渉ができない
民間金融機関からの融資では、会社・個人事業者の「業績の良し悪し」が金利の高低を左右します。
つまり。業績が良い会社・個人事業者の金利は低く、業績が悪い会社・個人事業者の金利は高くなる、ということです。
これに対して、日本政策金融公庫の融資では、「融資商品ごとに決められている金利が適用される」ところに違いがあります。
とはいえ、すべての会社・個人事業者がまったく同じ金利というわけではなく、担保の有無や保証人の有無によって、金利が変わることがあります。
また、業績がまったく関係ないというわけでありませんが、民間金融機関ほどには業績が金利に影響しない、と理解しておきましょう。
そのようなことから、日本政策金融公庫に対しては、金利交渉ができません。「業績が良いのだから、もっと金利を下げて」との交渉が通用しません。
日本政策金融公庫では、受ける融資商品によって、おおむね金利が決まっている。これが、民間金融機関との違いになります。
借り換えできない
民間金融機関からの融資については、「借り換え」という考え方があります。
たとえば、A銀行から 1,000万円を借りている会社があったとして。A銀行の融資条件よりも有利なB銀行があらわれた場合、B銀行から 1,000万円を借りてA銀行に返済してしまう。これが「借り換え」です。
では、日本政策金融公庫から 1,000万円借りて、A銀行から借りている 1,000万円を返済してしまうのはどうか? と言うと。
これはできませんし、やってはいけません。
日本政策金融公庫は、民間金融機関を「補完」する役割を担っているのであり、借り換えで民間金融機関(A銀行)の融資を奪うような行為は「やりすぎ(民業圧迫)」です。
したがって、民間金融機関からの融資を返済するという理由で、日本政策金融公庫から融資を受けることはできません。
また、日本政策金融公庫から融資を受けて、そのおカネで民間金融機関からの融資を返済してしまう… ということを会社・個人事業者もやってはいけません。
やってしまったことを日本政策金融公庫が知れば、資金使途違反(当初の使いみちと違う)として問題になります。
預金ができない
日本政策金融公庫は、「融資専門」の金融機関です。融資するだけなので、民間金融機関のように、「預金」はできません。
よって、日本政策金融公庫から融資を受けようとすると「借りたおカネをどこの銀行にあずけるか?」をたずねられます。
ここで、ポイントがひとつ。日本政策金融公庫から借りたおカネは、「次に融資を受ける民間金融機関」にあずけましょう。
民間金融機関に対しては、預金があるほうが「信用」が高まります。預金があれば、融資をしても回収できる可能性が高いからです。
また、預金をしたことで、日本政策金融公庫から融資を受けられた会社・個人事業者だともわかりますので、やはり「信用」が高まります。
その「信用」を利用して、預金をあずけた民間金融機関に融資の依頼をする、融資を受けるようにする。これで、融資を受けられる可能性が高まります。
これに対して、融資を受けるつもりもない銀行に、日本政策金融公庫から借りたおカネをあずけるのはもったいない。と、気づきましょう。
創業したばかりの会社・個人事業者などは、都市銀行から融資を受けるのは困難です。にもかかわらず、日本政策金融公庫から借りたおカネを、なんとなく都市銀行にあずけているケースがあります。
それよりも、次の融資を考えて、地方銀行や信用金庫・信用組合にあずけるのがおすすめです。
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まとめ
公的金融機関の代表格「日本政策金融公庫」が、民間金融機関と違うところについてお話をしてきました。
日本政策金融公庫からの融資は、小さい会社・個人事業者にとって、欠かすことができない資金調達手段になります。
日本政策金融公庫からの融資をうまく活用するためにも、民間金融機関との「違い」を押さえておきましょう。
- 創業時に融資受けやすい
- 赤字でも融資受けやすい
- 折り返しがしやすい
- 金利交渉ができない
- 借り換えできない
- 預金ができない