会社が融資を受けるときには、銀行に決算書を見せます。そのうちの貸借対照表について。
銀行融資を受けるなら貸借対照表の「カタチ」に気をつけて! というお話をしていきます。はたして、貸借対照表の「カタチ」とは?
そのカタチとは、ちょっと違うんだな。
会社が融資を受けるときには、銀行から「決算書を見せて」と言われます。決算書の良し悪しが、融資の可否を決めるうえでの判断材料になるからです。
その決算書のうち、貸借対照表について。気をつけるべきこととして、「カタチ」があります。銀行から融資を受けるのであれば、会社は、貸借対照表の「カタチ」に気をつけましょう。ということです。
貸借対照表のカタチと言われて、思い浮かぶのは。きっと、こんな感じが多いのではないでしょうか↓
これはこれで、そのとおり。貸借対照表のカタチとしては正しい。けれども、銀行融資を考えたときには、これとはちょっと違ったカタチも知っておく必要があります。
そこで。銀行融資を受けるなら貸借対照表の「カタチ」に気をつけて! というお話をしていきます。具体的には、こちらの3点です↓
- カタチをおぼえる
- カタチにあわせる
- カタチをつくる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行融資を受けるなら貸借対照表の「カタチ」に気をつけて!ポイント3選
《ポイント1》カタチをおぼえる
銀行融資を受けるなら貸借対照表の「カタチ」に気をつける。1つめのポイントは、「カタチをおぼえる」です。
まずは、銀行融資を受けるにあたって、貸借対照表には「望ましいカタチ」があることを知り、そのカタチをおぼえましょう。そういう話です。
では、貸借対照表の「望ましいカタチ」とは。こちらです↓
冒頭で見た貸借対照表のカタチとは、ちょっと違いますよね。
それぞれの項目(流動資産・固定資産・繰延資産・流動負債・固定負債・純資産)は、それぞれ大きさが異なるように描かれているのがポイントです。
その大きさが大きいほど、大きな金額であることを示しています。
つまり。貸借対照表の左側で言えば、流動資産がいちばん大きな金額であるべき。固定資産や繰延資産は、流動資産よりも少なくあるべき。ということになります。
貸借対照表の右側で言えば、純資産がいちばん大きな金額であるべき。固定負債や流動負債は、純資産よりも少なくあるべき。ということになります。
なんで? と、思われるかもですが。その答えを理解するためにまず、「流動資産」と「流動負債」に注目してみましょう。
流動資産とは、「おおむね1年以内に現金化できる資産」を言います。具体的には、現金預金、売掛金、受取手形、たな卸資産、未収入金、立替金、短期貸付金など。
これに対して、流動負債とは。「おおむね1年以内に支払わなければいけない負債」を言います。具体的には、買掛金、支払手形、預り金、未払金、短期借入金、1年以内返済長期借入金などです。
では、「おおむね1年以内に現金化できる資産」である流動資産と、「おおむね1年以内に支払わなければいけない負債」である流動負債と。どっちの金額が大きいほうがよいですか?
流動資産ですよね。だって、「おおむね1年以内に支払わなければいけない負債」のほうが大きかったら、「支払うのにおカネが足りない…!」ということになってしまいますので。
ですから、さきほど見た貸借対照表のカタチでは、流動資産のほうが流動負債よりも大きく描かれています。自社の貸借対照表を見たときには、「流動資産 > 流動負債」であるかどうかを確認しましょう。銀行もまた、確認をしているところです。
続いて、「固定資産」について。固定資産とは、建物や土地、機械設備、自動車、備品類など、ひとつあたりの金額が比較的大きなモノを言います。
そのような固定資産を、流動負債でまかなうのは危険です。つまり、金額が大きな固定資産を買うのに、1年以内に支払わなければいけないようなローンを使うのは危ない。金額が大きいだけに資金繰りが厳しくなるからですね。
なので、固定資産を買うのであれば、流動負債よりもゆっくり支払いができる「固定負債(長期借入金、長期未払金など)」でまかなうか、あるいはだれにも支払う必要がない「純資産(資本金+過去の利益の累積)」でまかないましょう。と、考えます。
ですから、さきほど見た貸借対照表のカタチでは、「固定資産」よりも「固定負債 + 純資産」のほうが大きく描かれているのです。
逆に。自社の貸借対照表を見たときに、「固定資産 > 固定負債 + 純資産」というカタチであれば、銀行からは「危ない会社だ」と見れらていることを覚えておきましょう。
さいごに、「繰延資産」について少しだけ。繰延資産とは、「費用の繰り延べ」です。将来どこかで費用にすべき金額が、繰延資産になります。
利益がじゅうぶんにある会社は、費用の繰り延べなどせずに、即時に費用化することから、「繰延資産が多い会社 = 状況が悪い会社」がイメージされるところです。もっと言えば、「費用を繰り延べて、利益を水増ししている(粉飾している)のかな?」とも疑われかねません。
だから、貸借対照表のカタチとしては、繰延資産は小さく描かれています。
まとめとして。貸借対照表の左側(資産)は、上が大きく、下は小さく。貸借対照表の右側(負債・純資産)は、上が小さく、下は大きく、です。
[ad1]《ポイント2》カタチにあわせる
銀行融資を受けるなら貸借対照表の「カタチ」に気をつける。2つめのポイントは、「カタチにあわせる」です。
さきほどの《ポイント1》で、カタチをおぼえたところで、次は、そのカタチにあわせていきましょう。というお話です。復習がてらに、貸借対照表のカタチを再掲します↓
では、「カタチにあわせる」とはどういうことか?
たとえば、「ほんとうは流動資産がもっと大きいのに、小さくしてしまっている」とか、「ほんとうは流動負債がもっと小さいのに、大きくしてしまっている」という会社があります。
貸借対照表のカタチを見ればわかるとおり、「流動資産は大きいほうがいいし、流動負債は小さいほうがいい」のにもかかわらず、です。
「ほんとうは流動資産がもっと大きいのに、小さくしてしまっている」の例を挙げると。貸付金をすべて「長期貸付金」として固定資産に掲載しているケースがありますが。
貸付金のうち、1年以内に回収できる金額は、「短期貸付金」として流動資産に掲載することで、貸借対照表の望ましいカタチに近づけるほうがよいでしょう。
また、「ほんとうは流動負債がもっと小さいのに、大きくしてしまっている」の例を挙げると。リース債務のすべてを流動負債に掲載しているケースがあります。
けれども、リース債務のうち、1年を超えて支払う金額は、「長期リース債務」として固定負債に掲載することで、貸借対照表の望ましいカタチに近づけるほうがよいでしょう。
というように。貸借対照表のカタチを意識すれば、「カタチにあわせる」こともできるはずです。
このあたりは、経理処理だけでできることでもありますので、できることはやったほうがいいし、やらないのは損ということになります。自社の貸借対照表に損はないか? ぜひいちど、確認をしておきましょう。
経理処理がよくわからなければ、顧問税理士に相談をしてみるのもおすすめです。
[ad1]《ポイント3》カタチをつくる
銀行融資を受けるなら貸借対照表の「カタチ」に気をつける。3つめのポイントは、「カタチをつくる」です。
《ポイント2》では、「カタチにあわせる」という話をしました。その「カタチをあわせる」とは、いわば、「小手先のテクニック」といったところです。
いっぽうで。もっと本質的な部分で、貸借対照表のカタチを考えることも大切になります。それが、「カタチをつくる」ということです。
いちばんは、「純資産」を増やす。貸借対照表の「純資産」を増やそうとすれば、おのずと、他の項目も望ましいカタチに近づいていくものだからです。
では、どのように、純資産を増やすのか? こたえは1つ、「利益を増やす」ことです。
純資産のなかみは、大きく2つ。ひとつは「資本金」、もうひとつは「利益剰余金」になります。利益剰余金とは、言い換えると、「過去の利益の累積」です。
資本金を増やすには、だれかが「出資」をしなければならず。社長が出資するにしても、基本的に、おカネが無ければできません。そこで、純資産を増やすなら、利益剰余金です。
利益剰余金を増やすということは、毎年の利益を増やすということ。これができれば、純資産の金額はどんどんと大きくなっていきます。
また、利益が増える過程では、流動資産が充実するケースが多いことから、望ましい貸借対照表のカタチがつくられていくことにもなります。
カンタンに利益を増やすなんて言うけれど… と、思われたかもしれません。そのとおりです。
けれども、ほんとうは出せるはずの利益を出さずにいるケースが少なくないことを覚えておきましょう。利益が増えると払わなければいけない「税金」を嫌って、利益をわざと減らしている会社は、けして少なくありません。
そういえば、利益を払うのがイヤで、経費を増やそうとしたことがある… という会社は要注意です。
利益剰余金が小さい会社は、財務的な安全性が小さいことから、銀行は融資を躊躇します。ましてや、利益剰余金がマイナスとなれば、融資を受けることは困難になります。
ほんとうは出せるはずの利益を出し惜しんで、みずから融資を受けにくくすることがないように。貸借対照表のカタチを意識しておきましょう。
ここで、もういちど。貸借対照表のカタチを眺めてみます↓
固定資産は小さいほうがいい(「固定負債 + 純資産」よりも)、ということについて。いわゆる「設備投資」は慎重に考えましょう。いちど、固定資産を増やすと「処分」をするのもタイヘンです。
固定資産を小さくすませる手段として、「サブスクリプション」や「シェアリング」があります。いまは、「月額いくら」でサービスを利用できたり、モノを利用できたりがしやすくなりました。
所有よりも利用、という考え方をとりいれていくことで、固定資産を小さくすることもできるはずです。貸借対照表の「カタチをつくる」ための考え方として、ぜひ押さえておきましょう。
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まとめ
会社が融資を受けるときには、銀行に決算書を見せます。そのうちの貸借対照表について、望ましいカタチがあることを覚えておきましょう。
そのうえで、自社の貸借対照表が、望ましいカタチに近づくようにあわせていく、カタチをつくっていくことが大切です。
- カタチをおぼえる
- カタチにあわせる
- カタチをつくる