自社のメインバンクを勘違いしていると、銀行融資におけるメインバンクのメリットを得ることができません。
そこで。「その銀行、御社のメインバンクだとは思ってません」な会社の事例についてお話をしていきます。
メインバンクによるメリットは大きい。
会社が銀行から融資を受けるにあたって、「メインバンク」という考え方があります。つまり、自社にとって、メインの銀行はどこなのか?
この点で。会社のほうはメインバンクだと思っているのに、銀行のほうはメインバンクだとは思っていない… というケースがあります。
このように、会社が「勘違い」をしていると。メインバンクによる「メリット」を得ることができません。ちなみに、メリットとは↓
- 赤字など会社が厳しいときにも話を聞いてくれる(融資の検討をしてくれる)
- 金利や担保・保証などの融資条件を改善するきっかけになる
これらのメリットは大きなものであり、会社の「勘違い」によって、受けられるはずのメリットを受けられないのでは困ってしまうでしょう。
というわけで。「その銀行、御社のメインバンクだとは思ってません」な会社の事例についてお話をしていきます。おもに次の3つです↓
- メガバンクがメインバンク
- 預金口座内で決済取引が無い
- 信用保証協会付き融資が無い・少ない
メインバンクを勘違いしてしまうことがないように、これらの事例を確認しておきましょう。
それではこのあと、順番に見ていきます。
「その銀行、御社のメインバンクだとは思ってません」な会社の事例
《事例1》メガバンクがメインバンク
自社のメインバンクが、「メガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)」だと考えている場合には気をつけましょう。なぜなら、メガバンクをメインバンクにできるのは、「大企業」に限られるからです。
民間金融機関は、大きく3つに分かれます。「メガバンク(都市銀行)」「地方銀行」「信用金庫・信用組合」の3つです。
それぞれの金融機関には役割分担があり、メガバンクは大企業向け、信用金庫・信用組合は小さい会社向け、地方銀行はそのあいだくらいの会社向け、となっています。
したがって、中小企業であれば、メインバンクは「地方銀行」または「信用金庫・信用組合」のいずれかです。少なくとも、メガバンクではありません。
赤字が続くなどして厳しいときに、「メインバンクだから」と相談をしたが、けんもほろろに断られてしまった… 相手がメガバンクであれば、当然の結果だと言ってよいでしょう。
ではなぜ、会社は「自社のメインバンクはメガバンクだ」と勘違いしてしまうのか。それは、メガバンクに預金口座を持っているからです。
よくあるのは、売上先からの入金口座としてメガバンクの預金口座を指定している。その口座で、仕入代金や経費の支払もしている。そのうえ、おカネだって借りているのだからメインバンクだろう、ということです。
けれども。銀行のほうは、そうは考えていない。メガバンクのほうは、そうは考えていない。目安として、少なくとも年商(年間売上高)10億円未満の会社は、メガバンクがメインバンクにはならないことを覚えておきましょう。
繰り返しになりますが、そういった会社のメインバンクは、「地方銀行」または「信用金庫・信用組合」のいずれかです。
《事例2》預金口座内で決済取引が無い
銀行は、自行に「預金残高」がある会社に対しては融資がしやすいものです。理由はいくつかあります。
まず、より儲かるから。たとえば、1,000万円の融資をしたときに、その会社が 300万円を預金してくれれば、銀行は 700万円しか貸していないのといっしょです。
いっぽうで、会社が預金をしてくれなければ、銀行は 1,000万円をまるまる貸していることになります。
どちらのケースでも、銀行が受け取る利息の額は同じです。だとしたら、より少ないおカネを貸しているほうが、銀行としては儲かりますよね。より少ないおカネで、同じ利息を受け取れるわけですから。
また、預金があれば、銀行はそのおカネを別の会社に貸すこともできます。そこでも利息を受取ることができるので、やっぱり儲かる。
なので銀行は、自行に「預金残高」がある会社に対しては融資がしやすい。ということを知っている会社・社長は少なくありません。
ゆえに、預金残高があるのだから「メインバンクだ」と勘違いをしてしまうことがあります。実は、「預金残高」があるだけでは、銀行としてはまだ不足があることを覚えておきましょう。
なにが不足しているのか? それは、「決済取引」です。
決済取引とは。売上代金の入金や仕入代金の支払、給与その他経費の支払などを言います。これらの決済取引を、銀行は「自行の口座でやってほしい」と考えているのです。
決済取引があれば、銀行は手数料収入を得ることができます。そして、なにより、決済取引を通じて、より会社の状況を把握することができます。
会社の状況は、決算書や試算表などでも把握することはできますが、それらは「過去」の数字であり、ややもすると「粉飾」の疑いもある。けれども、決済取引は「リアルタイム」の数字であり、粉飾の疑いもありません。
継続的に手数料収入が得られて、会社の状況がクリアになれば、銀行としては融資がしやすくなります。会社が少々厳しくても、融資をする理由にもなります。結果として、メインバンクになるわけです。
会社がメインバンクを考えるのであれば、その銀行に「決済取引があるか」を考えるようにしましょう。決済取引のすべてを集中させることはできなくても、「できる限り集中させる」ことも検討しましょう。
《事例3》信用保証協会付き融資が無い・少ない
誤解を恐れずに言えば。銀行にとって、信用保証協会付き融資は「おいしい融資」です。
会社が返済できなくなってしまった場合には、信用保証協会がそのぜんぶ、あるいは一部を肩代わりしてくれる。ですから、信用保証協会付き融資は銀行にとって、リスクが小さい融資、おいしい融資だと言えるでしょう。
その信用保証協会付き融資には「上限」があります。無担保であれば 8,000万円、有担保であれば2億8,000万円が上限です(ほかに、特別枠もあります)。また、会社の規模・業績によって、上限はさらに低くなります。
そんな「限りある」信用保証協会付き融資ですから。どの銀行も「信用保証協会付き融資はウチで」と考えています。
ではもしも、こんな会社があったらどうでしょう?
A銀行からの融資は信用保証協会付きで 4,000万円。B銀行からの融資は信用保証協会付きで 2,000万円、信用保証協会付きではない融資(プロパー融資)が 2,000万円。
このとき、会社がB銀行をメインバンクだと考えているとしたら… ビミョーです。
B銀行はA銀行と同じく、総額 4,000万円の融資をしてはいるものの。A銀行はすべて信用保証協会付き融資ですから、リスクが小さい。いっぽうで、B銀行は信用保証協会付きではない融資 2,000万円のリスクを負っています。B銀行からしたら、「A銀行はズルいなぁ」という感じでしょう。
したがって、会社がB銀行をメインバンクと考えるのであれば、もう少し信用保証協会付き融資のバランスをとるべきです。
銀行は、リスクが小さい信用保証協会付き融資を引き受けることで、会社のようすをうかがいます。そのうえで、きちんと返済をしてくれる会社・返済できる会社だとわかれば、少しずつリスクをとっていく。
結果として、信用保証協会付きではない融資(プロパー融資)を検討してもらえるようになります。赤字など業績が厳しいときにでも、融資を検討してもらえるようになります。
したがって、信用保証協会付き融資も無しに(あるいは少ないのに)、メインバンクであることを求めるのにはムリがあることを理解しておきましょう。
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まとめ
自社のメインバンクを勘違いしていると、銀行融資におけるメインバンクのメリットを得ることができません。
そのメリットは大きなものであり、会社の「勘違い」によって、受けられるはずのメリットを受けられないのでは困ってしまうでしょう。
ですから、「その銀行、御社のメインバンクだとは思ってません」な会社の事例については、確認をしておくようにしましょう。
- メガバンクがメインバンク
- 預金口座内で決済取引が無い
- 信用保証協会付き融資が無い・少ない