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銀行にアピールをするなら決算書よりも勘定科目内訳明細書を使ってみる

銀行にアピールをするなら決算書よりも勘定科目内訳明細書を使ってみる

銀行は、会社の決算書ばかりではなく、勘定科目内訳明細書にも注目をしています。

そこで。決算書よりも勘定科目内訳明細書を使って銀行にアピールするポイントについて、お話をしていきます。

目次

決算書ばかり見てないで、こっちも見てよね。

会社が銀行に対して、自社をアピールする書類のひとつに「決算書」が挙げられます。

決算書の内容が良ければ、自社の良さをアピールできる。結果として、融資が受けやすくなる。そういう話です。なので、「決算書の内容には注目をしている」という社長は少なくありません。

ところが、決算書に付属している「勘定科目内訳明細書」となるとどうでしょう? 意外と見ていない、決算書ほどには注目をしていない… という社長もいるはずです。

これに対して銀行は、「勘定科目内訳明細書」にも注目をしています。ですから、社長は「銀行の視点」を理解しつつ、勘定科目内訳明細書を使って、自社をアピールできるとよいでしょう。

というわけで。決算書よりも勘定科目内訳明細書を使って銀行にアピールするポイントについてお話をしていきます。こちらです↓

決算書よりも勘定科目内訳明細書を使って銀行にアピールするポイント
  • 預貯金等の内訳書、借入金及び支払利子の内訳書
  • 売掛金の内訳書
  • 棚卸資産の内訳書
  • 買掛金の内訳書
  • 役員報酬手当等及び人件費の内訳書

うまくアピールすることができれば、銀行からの融資が受けやすくもなるはずです。

それではこのあと、それぞれのポイントを順番に見ていきましょう。

 

決算書よりも勘定科目内訳明細書を使って銀行にアピールするポイント

預貯金等の内訳書、借入金及び支払利子の内訳書

勘定科目内訳明細書には、いろいろと種類がありますが。まずは、会社が持っているおカネに関する「預貯金等の内訳書」から。

その「預貯金等の内訳書」には、決算日現在で現金がいくらあるか、銀行にはいくらの預金があるか。銀行ごと、支店ごと、預金種別ごとに掲載されています。

これを確認したうえで、「借入金及び支払利子の内訳書」も見てみましょう。そこには、銀行ごと、支店ごとに、借入金の残高と年間の利息額が掲載されています。

では、社長はなにをアピールすればよいのか? それは、「各銀行とのお付き合いに対する姿勢」です。もう少し具体的に言うと、「自社のメインバンクはどこなのか?」になります。

メインバンクの確定的な定義はありませんが、ひとまずは「借入金残高が多い、かつ、預金残高が多い銀行」と考えておきましょう。

ですから、「預貯金等の内訳書」と「借入金及び支払利子の内訳書」とをあわせて見ることで、銀行は「この会社のメインバンクはどこか?」の察しがつくものです。

とはいえ。預金残高が多いとは言っても、担保に取られていたり、担保のようなものだということもあるでしょう。また、「預金残高が多いだけ」では、メインバンクとは言えない、という銀行の考え方もあります。

なぜなら、銀行は自行の預金口座のなかで「決済取引(売上入金や仕入・経費の支払取引)」があってはじめて、メインバンクになりうると考えているからです。

決済取引があると、手数料収入も得られるし、その会社の取引内容がよくわかる。より精密な融資審査ができる。だから、メインバンクとして支援ができる! というわけです。

このあたりをふまえて、社長は「自社のメインバンクはどこなのか」を明らかにしたうえで、「各銀行との付き合いかた」をどう考えているか、銀行にアピールしておくとよいでしょう。

メインバンクであれば、あらためてお互いの関係性を確認するきっかけになります。メインバンク以外の銀行であれば、メインバンクが存在することに安心感を覚えますし、自行の立ち位置を知ることで融資提案をしやすくもなるはずです。

売掛金の内訳書

続いて、「売掛金の内訳書」を見ていきましょう。そこには、売掛金について、相手先ごとに決算日現在の残高が記載されています。

銀行は、この「売掛金の内訳書」をすごくよく見ていることは覚えておきましょう。では、なにを見ているのか?

まず、「その売掛金はほんとうに回収できるのか?」です。掲載されている売掛金は回収できることが前提ではありますが、なかには「すでに倒産している会社」の売掛金が残っていたり。「架空の売掛金」が掲載されていたり(いわゆる粉飾決算)…

ですから、銀行は「売掛金の内訳書」をじっくりと見ることになります。そのうえで「回収できない、回収できなさそうな売掛金」が見つかれば、それは無いものとして、銀行は決算書を評価し直します。

売掛金とは「資産」のひとつであり、その売掛金が無いものとされると、評価は下がってしまう。そこで、社長は銀行に「誤解」をされることがないようにアピールしておきましょう。

銀行は、例年に比べて残高が増えている売掛金に注目をしています。A社の売掛金残高は毎年 100万円くらいなのに、今年は 300万円もある。これは架空ではないのだろうか? みたいな感じです。

ところが、実際には「たまたま決算日近くに大きな売上があった」だけかもしれません。証拠として注文書を見せるなどして、架空ではないことをアピールすることも考えてみましょう。

また、「売掛金の内訳書」を使って、自社の商品力をアピールすることもできます。

「売掛金の内訳書」には、「売上の相手先名」が掲載されるのですから、そのなかに「大企業・優良企業」の名があれば、銀行からは一目置かれることでしょう。

大企業や優良企業にも認めてもらえるほどの商品なのか。すごいな、これからも期待できるな。そう見てもらえるからです。このあたりもぜひ、アピールに使ってみましょう。

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棚卸資産の内訳書

続いて、「棚卸資産の内訳書」です。棚卸資産とは、言い換えると「在庫」のこと。「棚卸資産の内訳書」には、在庫がどれくらいあるかが掲載されています。

「不良在庫」という言葉があるように、一般的には「在庫は悪」との見方があるものです。また、架空の在庫を積み増す(ほんとうは無いのに、帳簿上は在ることにする)ことで、利益を水増ししようとする会社があります。

ゆえに、銀行は「棚卸資産の内訳書」を見て、「不良在庫はないか、架空在庫はないか」を確認しようとしていることを覚えておきましょう。

会社としては、さきほどの売掛金と同じく、銀行に「誤解」をされることがないようにアピールしておくべきところです。

たとえば、「たまたま決算日近くにまとめて仕入をする」と、例年に比べて在庫は大きく増えることになります。その後の売上に備えるための在庫なのに、不良在庫や架空在庫と誤解されるのではかないません。

このあたりは、「棚卸資産の内訳書」のなかに「摘要」欄がありますので、通常の在庫との違いについて記載しておくのもよいでしょう。

また、「意図的・戦略的」に在庫を多めに持っている会社はあるものです。欠品による納期の長期化を防ぐため、品揃えの良さを自社の強みとするため、需用の急増に備えるためなど。

そう考えると、必ずしも「在庫は悪」ではありません。

ですから社長は、「棚卸資産の内訳書」を使いながら、自社の意図や戦略を銀行に伝えるようにしましょう。自社の商売に対する理解を得られれば、融資の受けやすさにもつながるはずです。

買掛金の内訳書

続いて、「買掛金の内訳書」について。ここには、買掛金や未払金・未払費用などの決算日現在の残高が、相手先ごとに掲載されています。

この「買掛金の内訳書」を見て、銀行が考えていることに「買掛金や未払金などはちゃんと掲載されているかな?」があります。

利益を水増ししたいと考える会社は、意図的に買掛金や未払金の計上を見送ることがあるからです。少々会計的なお話になりますが、買掛金や未払金の計上を見送ると、その分だけ費用が少なくなって利益が増えるのです。

というわけで。ここでもまた社長は、銀行に「誤解」をされることがないようにアピールするようにしましょう。

例年と同じような相手先、同じような金額が掲載されていればよいのですが。例年あった相手先の買掛金が無い、とか。例年よりもだいぶ金額が少ない、といった場合には事情を説明することです。

また、いままでは「外注」していたものを「内製」に切り替えたようなケースでは、買掛金や未払金が大幅に減少するケースがあります。

これを「利益の水増し」と見られるのもかないません。それに、外注から内製への切り替えは「大きな転換」ですから、銀行にはきちんと認識をしてもらうべきところでもあります。

そんなの、決算書や勘定科目内訳明細書を見ればわかるだろう? ということかもしれませんが。銀行も「見ていない、見ても気づいていない」ことはありますから、だいじなことは「あらためて伝える」ようにしましょう。

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役員報酬手当等及び人件費の内訳書

さいごは、「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」についてです。ここには、社長はじめ役員それぞれの役員報酬の金額、社員給与の総額が掲載されています。

まずはじめに。役員報酬を受け取っている役員が複数いるのであれば、複数いることを銀行がわかっているか確認するようにしましょう。

もしも銀行がわかっていない場合、決算書の役員報酬の金額すべてを、社長が受け取っているものと勘違いしてしまいます。すると、会社の業績が悪い場合には、「社長、役員報酬取りすぎだよなぁ」と思われかねません。

役員報酬の内訳くらい、銀行は見ているだろう? と思われるかもしれませんが。実際、見ていなかった例がありましたので、ここに申し添えます。

また、社員の給与については、「ひとりあたり人件費」として、銀行にアピールしてみましょう。どういうことかと言うと…

「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」に載っている社員の給与総額を、自社の社員数で割り算します。その金額が「ひとりあたり人件費」です。

続いて、その「ひとりあたり人件費」と、「世間の平均値」とを比較してみましょう。比べてみて、自社の「ひとりあたり人件費」のほうが高ければ、それだけ自社の給与水準は高い、ということになります。

給与水準が高いということは、それだけの給与を払える「利益力」があるということであり、「良い人材」が集まりやすい・集まっているというアピールをすることができるでしょう。

ちなみに、世間の平均値については、「RESAS(地域経済システム)」というデータベースを使って、全国平均や県ごとの「一人当たり賃金」を知ることができます。

RESASは、政府が運営する無料のデータベース。ほかにもいろいろなデータをとることができますから、銀行と話をするときにも、自社との比較として積極的に利用してみるとよいでしょう。

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まとめ

銀行は、会社の決算書ばかりではなく、勘定科目内訳明細書にも注目をしています。にもかかわらず、社長のほうは決算書ばかりを見ている。勘定科目内訳明細書はあまり見ていない… ということはあるものです。

というわけで。決算書ばかりでなく、勘定科目内訳明細書を使って銀行にアピールするポイントも押さえておきましょう。融資が受けやすくもなるはずです。

決算書よりも勘定科目内訳明細書を使って銀行にアピールするポイント
  • 預貯金等の内訳書、借入金及び支払利子の内訳書
  • 売掛金の内訳書
  • 棚卸資産の内訳書
  • 買掛金の内訳書
  • 役員報酬手当等及び人件費の内訳書
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