在庫が増えるのは悪だ、という財務的な見方がありますが。
銀行融資においては必ずしも悪ではない、悪とは言えない。その理由についてお話をしていきます。
すべてが悪、などということはない。
在庫が増えるのは良くない、悪いことだ。という「財務的な見方」があります。なぜ、在庫が増えるのは悪いのか?
ひとことで言えば、在庫が増えると「コストが増える」からです。ひとくちにコストと言ってもいろいろあります。まずは、在庫の対象になるモノそのものを手に入れるための購入コスト。
ほかにも、在庫を管理するためのコスト(人件費、倉庫家賃、保険料など)や、モノの陳腐化・減耗コストや、廃棄ロスといったコストもあるでしょう。
このように、在庫はいろいろなコストをともないます。つまり、在庫を持っているとおカネがかかる。在庫が増えると、もっとおカネがかかる。だから、「在庫が増える=悪」という財務的な見方があるわけです。
そのいっぽうで。銀行融資の面から見た場合には、在庫が増えることは必ずしも悪いことばかりではありません。
その理由を理解して、銀行対応に活かすことができれば、融資は受けやすくなります。逆に、理由を知らない・理解していなければ、融資は受けにくくなってしまいます。
というわけで。在庫をあつかう商売をしているのであれば、こちらを押さえておきましょう。「在庫が増える」は銀行融資において、必ずしも悪ではない3つの理由です↓
- 事業の強みになりうる
- 融資を受ける理由になる
- 管理能力をアピールできる
これら3つの理由について、このあと順番に見ていきます。
「在庫が増える」は銀行融資において必ずしも悪ではない3つの理由
【理由1】事業の強みになりうる
「在庫が増える=悪」という財務的な見方があることは、冒頭でもお話をしたとおりです。
ゆえに、決算書を見た銀行から、「在庫が多い」と指摘をされることがあります。また、指摘までされずとも、そう考えているかもしれないことは覚えておきましょう。
銀行は、同業他社平均と比較をして「在庫が多い会社」を警戒しているものです。
この点で。在庫が多い理由が「事業の強み」である場合には、そのことを銀行に説明するようにしましょう。つまり、「在庫が多いのは当社の強みです」と銀行に伝える、ということです。
在庫が多いのが強みとは、いったいどういうことなのか?
在庫の多さは、「品揃えの良さ」と言い換えることができます。品揃えが良いことで、お客さまから選んでいただけることはあるはずです。
また、在庫が多いことで、「短納期を実現できる」という良さもあるでしょう。在庫をしぼりすぎて欠品ばかりしていると、離れてしまうお客さまもありますよね。
そう考えると、在庫が多いことはお客さまに対しての魅力であり、お客さまにとってのメリットにもなるところです。在庫が多い・在庫が増えることは、自社の強みだとも言えます。
このあたりは、会社のほうから伝えなければ、銀行にはわからないものです。銀行は決算書の数字だけを見て、「この会社は在庫が多い、良くない」と評価をしているかもしれません。
すると、融資が受けにくくなってしまいますので。ぜひ、会社のほうから伝えるようにしましょう。
そのときに、「お客さまの声」として伝えられるのがベストです。「お客さまアンケートの結果、品揃えの良さや短納期が評価されています」といった資料を提示できれば、銀行に対する説得力も上がります。
【理由2】融資を受ける理由になる
銀行から融資を受けるにあたっては「おカネを借りる理由」が必要になります。言い換えると、借りたおカネの使いみち。いわゆる「資金使途」です。
なぜ融資を受けたいのか? 借りたおカネをなにに使うのか? これがはっきりしないと、銀行から融資を受けることはできません。
この点で、在庫はおカネを借りる理由になります。
たとえば、常時 500万円の在庫を必要とする会社があるとして。すると、その会社では常時 500万円のおカネが「寝ている」ことになります。
まず、在庫の対象になるモノを買ったときに 500万円のおカネを支払わなければいけません。この 500万円を回収できるのは、モノが売れて売却代金を受け取ったときです。
それまでのあいだは、500万円のおカネが寝てしまう。その分、資金繰りが厳しくなる。だから、在庫分のおカネを貸してください。というのは、融資を受ける理由になります。資金使途で言うところの「運転資金」です。
また、運転資金の融資は、借りやすいのが特徴でもあります。実際に 500万円の「モノ」があるわけですから、モノを売却すれば 500万円のおカネに換金すればいい。そのおカネで返済をしてもらえばいい。というのが、銀行の考え方です。だから、運転資金は借りやすい。
ちなみに。さきほどは在庫が「常時」500万円である会社を例にしましたが、季節によって在庫量が大きく変動するような会社もあるでしょう。
在庫量が多くなれば、その分寝てしまうおカネが増えるので、その分多く融資を受ける必要があります。そういった会社は、在庫量が変動する「ようす」を、銀行に伝えることが大切です。
決算日の一時点だけを切り取った「決算書だけ」を見ていたのでは、銀行が在庫量の変動を知ることはできません。在庫量を知ることができなければ、必要な融資量もわかりません。
結果として、必要なはずの融資を受けることができなくなってしまう… ということがないように。会社は在庫量とその変動について、銀行に伝えるようにしましょう。
【理由3】管理能力をアピールできる
在庫が多い会社、在庫が増える会社を銀行は警戒しています。「在庫が増える=悪」という財務的な見方がひとつ、そしてもうひとつ、「粉飾をしているのではないか?」との見方があるからです。
くわしい説明は省きますが、「在庫を増やして利益を水増しする」という粉飾テクニックがあります。ほんとうは無い、架空の在庫を決算書に載せることで利益を水増しする。いまも昔も粉飾決算の王道です。
ゆえに在庫が増えていると、このテクニックを使っているのではないかと、銀行からは疑われてしまうわけです。
では、どうするか?
この在庫は「ほんとうにある」のだ! と、銀行に伝えることです。ただただ口先だけでは、信じてもらえませんので「証拠」を添えるようにしましょう。
たとえば、在庫の明細一覧表。決算書には在庫の総額しか載っていませんので、その明細一覧を示すことで、ほんとうにあることをアピールします。
加えて、在庫の入出庫表があればベストです。品目ごとに、いつどれだけ入庫(仕入)・出庫(売却)があったのかの表が入出庫表です。入出庫があるということは、実際にモノがあって動きもあることがわかりますので。より説得力が増すでしょう。
さらに、在庫の現物を銀行に見てもらうのも、ひとつの方法です。倉庫を案内して、実際に在庫があるのを、その目で確かめてもらいます。このときのポイントは、倉庫や在庫置き場は「整理整頓」しておくことです。
はっきり言って、銀行は在庫を見てもよくはわからないでしょう。在庫一覧表を見ながら、ひとつひとつ確認をしていくのも現実的ではありません。
ですから、まずは会社が「隠しごとなくいつでも在庫を見せられる」という姿勢を示すことに意味があります。あわせて、整理整頓されていれば、安心感を与えることもできるでしょう。
逆に、倉庫内が散らかっていたり、無造作にホコリをかぶった在庫が置いてあったりすると、銀行の疑いは強くなってしまいます。
というわけで。銀行に対しては、在庫の明細一覧表や入出庫表を提示する。整理整頓された倉庫を案内する。これによって、在庫が増えているとしても、きちんと管理していることを銀行にアピールできます。
管理能力が高い会社を銀行は好みますので、融資の受けやすさにもつながるはずです。
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まとめ
在庫が増えるのは悪だ、という財務的な見方がありますが。銀行融資においては必ずしも悪ではありません。
その理由を理解して、銀行対応に活かすことがで、融資が受けやすくなることを覚えておきましょう。
- 事業の強みになりうる
- 融資を受ける理由になる
- 管理能力をアピールできる