コロナで赤字のいまこそ不良在庫を処分する。ただ、そのときの「銀行対応」についてはいくつか注意点がありますので。
そのあたりを、本記事ではお話をしていきます。
膿は出しきらなければ、いずれ足かせになる。
きょうは 2021年2月3日、新型コロナの影響は、いまだ冷めやらず。2度めの緊急事態宣言は期間延長ということもあり、厳しい経営・財務をしいられている会社や個人事業者は少なくありません。
結果として、赤字で決算を迎えるのであれば。考えるべきこととして、不良在庫の処分が挙げられます。
在庫にしている商品が古くなってしまい、もう売れない… 処分するしかない… でも、いま処分をすることでもっと赤字が膨らんでしまうけれどいいのだろうか? と、思われるかも知れませんが。
いいんです。コロナで赤字のいまこそ、不良在庫を処分しましょう。その損失を決算書に計上しましょう。
少々乱暴な表現にはなりますが。「どうせ赤字」なのですから、「膿」はしっかりと出し切り、翌期以降に持ち越さないことです。持ち越してしまえば、翌期以降の黒字化の「足かせ」にもなってしまいます。
というわけで、コロナで赤字のいまこそ不良在庫を処分する。ただ、そのときの「銀行対応」についてはいくつか注意点がありますので。そのあたりを、本記事ではお話をしていきます。具体的にはこちらです↓
- 銀行には事前に伝えておく
- 粉飾をしていたのであれば詫びる
- 債務超過になるのであれば一考する
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
コロナで赤字のいまこそ不良在庫を処分する!ときの銀行対応の注意点
銀行には事前に伝えておく
不良在庫を処分する場合には、その金額が大きくなってしまうことがあります。だからこそ、処分による損失の計上を躊躇もするわけですが。
どれくらいの金額から「大きい」と言えるのかは、会社の規模・状況によって異なります。一般には、中小企業であれば、100万円単位となると「大きい」と言えるでしょう。
そういった大きな金額の損失が出るとわかっているのであれば、銀行には事前に伝えておくのがおすすめです。「こんどの決算では在庫処分をするので、〇〇万円くらいの損失が出ます」と、伝えておく。
すると、銀行も「心の準備」ができるので、決算書を渡すときにもスムーズです。
ところが、ふだんの会話のなかではなにも伝えずにいて、決算書を見たら突然多額の在庫処分… では、銀行もびっくりしてしまいます。なんで教えてくれなかったのよ? と言われてもしかたありません。
だから、銀行には事前に伝えておきましょう。処分にいたった経緯や理由なを含めて伝えておきましょう。ということになります。
なお、在庫処分による損失を決算書に計上するときには、損益計算書の「特別損失」に計上しましょう。そうすることで、売上総利益や営業利益、経常利益の影響を避けることができます。
これに対して、売上原価のなかで損失を計上してしまうと、その分だけ売上総利益や営業利益、経常利益が悪くなる。いくらもともと赤字だとは言っても、そのあたりの利益の悪化は避けなければいけません。
さらには、原価率もおかしく見えてしまいますので。銀行や会社自身が判断を誤ることにもなりかねません。
したがって、在庫処分による損失は「特別損失」に計上する。損失の影響は、当期純利益に対してのみとなるように配慮する。決算書づくりを税理士に任せている会社は、税理士にも気をつけてもらうようにしましょう。
粉飾をしていたのであれば詫びる
不良在庫、ということを考えるときに。そこには「粉飾(利益の水増し)」も含まれます。
ほんとうはずーっと前から不良在庫なのだけれど、処分せずにここまできてしまった… ということがあるでしょう。もっと言ったら、ほんとうはないのにあることにしていた在庫(架空在庫)だってあるかもしれません。
いずれにせよ、粉飾をしていたのであれば、コロナの赤字を期に一掃する。これは会社がとるべき選択だと言っていいでしょう。
ただし、いきなり一掃したのでは、やはり銀行も驚いてしまいます。場合によっては、怒らせてしまうこともありえます(粉飾をしていたのか!みたいな)。
ですから、過去の粉飾を一掃するときには銀行に伝える。それも、「お詫び」を添えて伝えることが大切です。どんな理由があれ、粉飾はやってはいけないものなのですから、お詫びはしなければいけません。
加えて、粉飾の経緯も明らかにしましょう。あいまいな説明になれば、「まだ隠しているのではないか?」と疑われるばかりです。
いつから、いくらの金額を粉飾してきたのかを具体的に。そのうえで、今後は絶対に粉飾しません、との言葉を添えて「文書」にまとめる。文書にして、銀行に渡すようにしましょう。
銀行には「書類文化」がありますから。だいじなことほど、文書で渡すのは銀行対応のキホンです。また、文書にまですることで、会社の真摯な姿勢を見せることにもつながるはずです。
繰り返しになりますが。粉飾については、くれぐれもあいまいにはしないこと。すべてをオープンにするという姿勢で対応しましょう。この期に及んでまで、隠しごとをするようでは今後の支援は期待できません。
債務超過になるのであれば一考する
在庫処分による損失を計上することで、債務超過におちいることがあります。債務超過とは、貸借対照表を見たときに「資産の総額<負債の総額」になっている状態です。
いまある資産をすべて売り払って現金化しても、負債をゼロにはできないのが「債務超過」であり、極めて危険な状態です。ゆえに、債務超過の会社は、銀行から嫌われます。融資が受けにくい。
したがって、在庫処分による損失を計上することで、債務超過におちいる… というのであれば。今後の融資を考えると、損失計上を躊躇してしまうことはあるでしょう。
そういう意味では、債務超過を意識した損失の出し方やタイミングなどは、「一考の余地」があると言えます。
ただし、新型コロナの影響も大きく、もはやリスケ(返済猶予)せざるを得ないという状況であれば。躊躇なく、膿は出し切りましょう。
リスケとなったら、そのあいだは融資を受けることができないのですから、債務超過もなにもありません。在庫処分による損失もすべて計上して、きれいな状態から再起を目指すべきです。
もうすぐリスケから抜け出すことができそうだ、というときになって在庫処分が問題になる。リスケ解消が遠のいてしまう… これでは目も当てられません。
とにかく。大原則は、「事実を正しく、会計に反映させる」ことです。それしかありません。そういう意味では、債務超過だろうがなんだろうが、損失は計上すべきだ、ということは覚えておきましょう。
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まとめ
コロナで赤字のいまこそ不良在庫を処分する。ただ、そのときの「銀行対応」についてはいくつか注意点があります。
銀行を驚かせたり、怒らせたり、あるいは疑われたりしないように。在庫を処分するときの銀行対応を押さえておきましょう。
- 銀行には事前に伝えておく
- 粉飾をしていたのであれば詫びる
- 債務超過になるのであれば一考する