日本政策金融公庫からしか融資を受けていない、つまり、民間銀行からの融資を受けていない会社が損をしている3つのことについて、お話をしていきます。
民間銀行からも融資を受けてる?
会社が銀行から受ける融資について。「日本政策金融公庫」からしか融資を受けていない、という会社があります。
日本政策金融公庫は、政府が 100%出資する公的金融機関。その日本政策金融公庫からしか融資を受けていないということは、民間銀行からの融資を受けていないということです。
この点で。日本政策金融公庫からしか融資を受けていない会社が損をしていることについて、お話をしていきます。おもに、次の3つです↓
- 融資総額が少なくなる
- メインバンクがない
- 決算書を活かせない
これらの損を見て、「えっ、そうなの?」と思うものがあれば要注意です。このあと、3つの損を順番に見ていきましょう。
日本政策金融公庫からしか融資を受けていない会社が損をしている3つのこと
【損1】融資総額が少なくなる
日本政策金融公庫に限らず、銀行がひとつの会社に融資をできる金額は限られています。
ひとつの会社にばかり融資をするのは危険だからです。その会社が返済できなくなったら、大きな損失になってしまいますよね。だから銀行は、できるだけ多くの会社に分散して融資をしようとするわけです。
では、日本政策金融公庫がひとつの会社に融資できる金額は? と、言えば。無担保で 2,000万円がひとつの「目安」になります。
会社の規模が大きくなれば、2,000万円では足りないこともあるでしょうから。日本政策金融公庫だけで融資をまかなおうとするのには、限界があるということです。
これに対して、民間銀行からの融資も受けるのであれば。まず、信用保証協会付き融資があります。
信用保証協会付き融資とは、会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれる融資。ゆえに、銀行はリスクが小さく貸しやすいのが信用保証協会付き融資です。
その信用保証協会付き融資の上限は、一社あたり無担保であれば 8,000万円。これがあるのとないのとでは、会社にとっては大きな差になりますよね。
というように。日本政策金融公庫からしか融資を受けていない会社は、「融資総額が少なくなる」のは損のひとつです。
これに関連して、もうすこし。さきほど、日本政策金融公庫がひとつの会社に融資できる金額の目安は 2,000万円、という話をしました。ところが、日本政策金融公庫からしか融資を受けていないと、その目安とは関係なく、そもそも融資を受けられる金額が少なくなる可能性があります。
なぜなら、日本政策金融公庫の役割が「民間銀行の補完」だからです。主役はあくまで民間銀行であり、日本政策金融公庫はそこを補完するにすぎない。「補完」の文字は、日本政策金融公庫の基本理念にも明示されているところです。
したがって、民間銀行から融資を受けていなかったり、融資を受けていても金額が少なかったりすると、日本政策金融公庫としては「融資をしづらくなる」という一面があります。
日本政策金融公庫ばかりが融資をすると、補完するどころか、「民間銀行の商売を邪魔している(=民業圧迫)」と言われかねません。
ですから、日本政策金融公庫からの融資を増やすためにも、民間銀行からも融資を受けておく必要があります。覚えておきましょう。
【損2】メインバンクがない
会社の銀行融資について、「メインバンク」という考え方があります。文字どおり、会社が「メインとして融資取引をする銀行」です。
この点で。安定した資金調達を考えるのであれば(考えない会社はないと思いますが)、会社はメインバンクをもつべきだと言えます。
いっぱんに、メインバンクは会社との取引、コミュニケーションが密であり、会社を積極的に支援しようとするものです。状況に応じて、新規融資の提案をしたり、既存融資の見直しを提案したり。
融資ばかりではなく、経営面でのアドバイスやサポートをしてくれたり、自社に合う取引先をマッチングしてくれたりする銀行もあります。いずれも、会社にとって、メリットがある支援です。
ところがもし、メインバンクがなければ。会社は、それらの支援を受けられるチャンスを減らしてしまうことになります。
では、日本政策金融公庫はメインバンクになりうるのか? と言うと。なりえません。さきほどもお話をしたとおり、日本政策金融公庫の役割は「民間銀行の補完」だからです。
日本政策金融公庫が民間銀行を差し置いて、「ウチがメインです!」などと言うことはありません。
実際に、日本政策金融公庫から融資を受けても、その後は基本的に「放置」です。日本政策金融公庫のほうから、定期的に声をかけられるようなことはありません。
たまに形式的なお知らせがあったり、融資残高が少なくなってくると再融資のおすすめがあったり。そのくらいです。とてもメインバンクと呼べるような支援ではないことがわかります。
したがって、日本政策金融公庫からしか融資を受けていないと、メインバンクがない。メインバンクとしての支援が得られない、という損があることを理解しておきましょう。
【損3】決算書を活かせない
日本政策金融公庫からの融資では、民間銀行からの融資に比べて「決算書を活かせない」という損があります。どういうことかと言うと、たとえば「金利」です。
民間銀行からの融資であれば、決算書の内容が良いほど金利を下げることができます。決算書の内容が良いということは、貸したおカネを返してくれる可能性が高く安全です。だから、銀行も金利を下げられる。
また、決算書の内容が良い会社には、融資をしたい銀行が集まりやすく、金利を競わせることができます。結果として、金利が下がる。
というように。民間銀行からの融資については、決算書を活かすことができるわけです。
いっぽうで、日本政策金融公庫は? と言うと。日本政策金融公庫の金利は、基本的に決算書の良し悪しとは関係ありません。まず、制度ごとに金利の「幅」が決められています。
その幅のなかで、なにが金利に影響するかと言えば。担保は有りか無しか、保証人は有りか無しか、人を雇っているか、〇〇計画の認定を受けているかなど。およそ、決算書の内容とは関係のないものばかりです。
もちろん、それでも決算書の内容が良いほど融資が受けやすくはなりますから。決算書の内容がまったく関係ない、ということではありませんが。
ただ、民間銀行の融資に比べると、決算書を活かせない。決算書の内容が良い会社ほど、決算書を活かせないのはもったいないなぁ… と感じるところです。
そう考えると、会社は民間銀行からも融資を受けるべきであり、決算書を活かして、より良い条件での融資を引き出していくのがよいでしょう。
そのうえで、日本政策金融公庫を「補完的」な位置づけとして、お付き合いを続けておく(融資を受け続けておく)。すると、決算書の内容が悪く、民間銀行からの融資が厳しいときには、日本政策金融公庫からの「補完的」な融資を期待できます。
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まとめ
日本政策金融公庫からしか融資を受けていない、という会社があります。
そういった会社は、民間銀行からの融資を受けていないがために損をしていることがある。と、理解をしておくようにしましょう。
- 融資総額が少なくなる
- メインバンクがない
- 決算書を活かせない