開業資金を確保する方法のひとつに「銀行融資」が挙げられます。
融資を受けようと考えているヒトはもちろん、そうでないヒトも、銀行融資まわりの注意点をいちどは確認しておきましょう。というお話です。
のちのちになって残念な思いはしたくない。
開業、つまり、事業をはじめるときには「資金」が必要です。その資金を確保する方法のひとつに「銀行融資」が挙げられます。
そこで。銀行から融資を受けようと考えているヒトはもちろん、そうでないヒトも、銀行融資まわりの注意点をいちどは確認しておきましょう。具体的にはこちらです↓
- まず借りるかどうか
- 法人 or 個人を考える
- 決算月を考える
- 資本金額を考える
- 日本政策金融公庫に行く
開業時にこれらの注意点が確認できていないと、のちのちになって残念な思いをする… ということがありえますので。このあと、順番に確認していきましょう。
開業時に知っておきたい銀行融資まわりの注意点5選
【注意点1】まず借りるかどうか
まずは自己資金でがんばります、というハナシは少なくありません。開業するにあたって、ひとまずはじぶんのおカネだけではじめる。いまは銀行融資は受けない、という考え方です。
唸るほどのおカネを持っているのであれば、それもいいでしょう。けれども、多くのヒトはおカネが限られていますし(もちろんわたしも)。であるならば、自己資金だけで開業するのはおすすめできません。
なぜなら、「おカネが足りなくなったら借りる」というハナシは通用しないからです。
おカネが足りなくなるということは、すなわち、事業の状況が悪いことを意味しています。思ったように事業が軌道に乗らなかったからおカネが足りなくなる。この状況を知った銀行は、融資を躊躇するものです。結果として、軌道に乗る前につぶれてしまいます。
ですから、「いずれ借りるかもしれない」のであれば、事業の状況を問われることがない「開業時・開業前」に融資を受けておくようにしましょう。創業融資です。
思ったとおりにうまくいって、融資を受けたおカネが余ったのなら。そのときは返済してしまえばいい、と考えて創業融資を受けておく。実際には、思ったとおりにはいかないことが多く(そういう統計データもあります)、創業融資で借りたおカネが支えになります。
自己資金でがんばる、という考え方だけではなく。まず借りる。創業融資を受けて、自己資金はできるだけ温存しておくことも検討しましょう。
【注意点2】法人 or 個人を考える
開業するときに迷うこととして、「法人(会社)を設立するか、個人事業者として開業するか」があります。法人のほうが社会的信用があるし… でも、個人事業者のほうが維持コストは安いし… みたいな。
この迷いについて、「銀行融資の視点」からも考えてみるとよいでしょう。具体的には、「連帯保証」についてです。
銀行から融資を受けるときに、法人であれば、社長が保証人にならなければいけないケースは少なくありません。ところが、後述する「日本政策金融公庫」の創業融資であれば、原則、社長の連帯保証は不要です。
あまり考えたくないことではありますが、もし事業がうまくいかなくて、借りたおカネを返せなくなってしまった… というときでも。連帯保証がなければ、社長個人にまで返済負担は及びません。これは、法人を設立するメリットのひとつだと言っていいでしょう。
いっぽうで、個人事業者として創業融資を受けた場合には。個人事業者本人が借りたおカネですから、さいごまで返済義務を負うことになります。このあたりもふまえて、法人か個人かを考えるようにしましょう。
ところで。個人事業者で開業して2年後に法人化すると、開業から4年のあいだ消費税を納めなくて済む。という節税テクニックがあります。これはこれで検討すべきポイントなので、さきほどの銀行融資の視点もふまえてどちらをとるか? です。
【注意点3】決算月を考える
法人か個人かの検討の結果、「法人をつくろう」となった場合。決算月を考える必要があります。個人事業者の場合には、決算月は一律で 12月と決まっているのですが、法人の場合には各法人の自由です。
自由と言われると、むしろ迷ってもしまいますが。ここでもやはり、銀行融資の視点も取り入れてみるとよいでしょう。
繁忙期があるのなら、繁忙期が期首になるように決算月を考えます。たとえば、9月が繁忙期ならば、9月を期首にして8月を決算月にする、ということです。
逆に、繁忙期である9月を決算月にしてしまうとどうなるか? 決算間近になって、売上がドーンと計上されて、利益もドーンと膨らみます。税金もドーンと増えますね。それを見た社長は、税金を減らすために、あわてて経費をつかって利益を減らそうとすることが少なくありません。
銀行から借りられる金額は「利益の倍数(おおむね 10倍が限度)」ですから、利益を減らそうとすると融資が受けにくくなる… というジレンマにおちいります。
ところが、繁忙期を期首にしていれば。期首から利益が出ますので、早い段階から税金の額もイメージできます。すると、やたらに経費を増やすような愚行は少なくなるものです。結果として、きちんと利益を出せますので、銀行融資も受けやすくなります。
繁忙期とは別に、「11月・12月」や「5月・6月」などを決算月にするのもおすすめです。
11月・12月が決算であれば、決算書ができあがるのは2月前後になります。このころ、銀行は銀行の本決算である3月に向けて、積極的に融資をしているものです。2月前後に、会社が決算書を提出できれば、銀行の動きに乗っかりやすくなるでしょう。
5月・6月が決算であれば、決算書ができあがるのは8月前後になります。このころ、銀行は銀行の中間決算である9月に向けて、やはり積極的に融資をしているものです。8月前後に、会社が決算書を提出できれば、銀行の動きにのっかりやすくなるでしょう。
【注意点4】資本金額を考える
法人をつくる場合には、「資本金額をいくらにするか」も悩みどころのひとつです。いまは、資本金1円から会社がつくれますから、「じゃあ、1円で」というのは銀行融資の視点から見てもおすすめできません。
なぜなら、資本金1円では「すぐにおカネが足りなくなる」からです。どんな事業をはじめるにせよ、開業時にはそれなりにおカネがかかります。1円では足りずに、おカネを借りることになるでしょう。手っ取り早いのは、社長個人からの借入です。
会社が、社長個人からおカネを借りるとどうなるか? その分だけ「負債」が増えますから、「債務超過」になりやすい。債務超過とは、「資産 < 負債」の状態を言います。
債務超過は、言うまでもなく危険な状態ですから、それを見た銀行からは融資が受けにくなることを覚えておきましょう。
また、1円は極端にしても、資本金額が少ないと、銀行で法人口座を開設できない可能性が高くなります。銀行から「事業の実態(ほんとうに事業をやる気ある?)」を疑われやすくなるからです。法人口座をつくれなければ、融資も受けられませんので困ってしまいます。
そういったことを考えると、資本金額は最低でも 100万円以上をおすすめします。
【注意点5】日本政策金融公庫に行く
開業時に融資を受けるのであれば、まずは「日本政策金融公庫」の創業融資を検討しましょう。日本政策金融公庫は公的な金融機関ということもあり、ひとことで言って「借りやすい」からです。
したがって、まずは日本政策金融公庫から融資を受けて、その実績を活かしながら、他の銀行からも融資を引き出していく。これが、銀行融資のセオリーになります。日本政策金融公庫に比べると、その他の銀行の融資は難易度が高いものです。
では、どうやったら、日本政策金融公庫からスムーズに融資が受けられるのか? そのポイントは、大きく3つあります。
まずは、自己資金と経歴。日本政策金融公庫から融資を受けられる金額は、自己資金の2〜4倍が目安です。自己資金があればあるほど借りやすいことを覚えておきましょう。加えて、これからはじめる事業に関連する経歴の有無が、借りやすさに大きく影響します。くわしくはこちらの記事をどうぞ↓
それから、もうひとつ。事業計画です。日本政策金融公庫に提出する「創業計画書」には、事業計画を記載する欄があります。その事業計画が、楽観的すぎるケースが少なくありません。売上が大きすぎる、ひいては利益が大きすぎる、という事業計画です。
結果として、創業融資が受けにくくなりますので気をつけましょう。くわしくはこちらの記事をどうぞ↓
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まとめ
開業資金を確保する方法のひとつに「銀行融資」が挙げられます。融資を受けようと考えているヒトはもちろん、そうでないヒトも、銀行融資まわりの注意点をいちどは確認しておきましょう。
確認できていないと、のちのちになって残念な思いをする… ということがありえますので。
- まず借りるかどうか
- 法人 or 個人を考える
- 決算月を考える
- 資本金額を考える
- 日本政策金融公庫に行く