銀行融資の「金利が高い」と文句を言う前に、確認すべき3つのことについてお話をしていきます。
このあたりがわかっていないと、文句を言っても交渉しても聞き入れてもらえませんので。ぜひ、押さえておきましょう。
文句を言うのも良いけれど。
銀行から融資を受けている会社の社長が考えることのひとつに、「金利を下げたい」が挙げられます。おカネを借りれば、利息を支払わなければならないわけですが。そのときの金利は低いほうがいい。
そこで。銀行に対して、「金利が高い!」と文句を言ってみる。文句ではなく、交渉をしてみる。というのは、だいじなことです。
けれども。文句を言ったり、交渉したりする前に、確認すべきことがありますよ。そんなお話をしていきます。ではその、確認すべきこととは? こちらの3つです↓
- 業績が悪くないか
- お付き合いが悪くないか
- 比べる銀行がおかしくないか
これらのことがわかっていないと、文句を言っても交渉してもぜんぜん聞き入れてもらえない… ということになってしまいますので。このあと順番に確認していきましょう。
銀行融資の「金利が高い」と文句を言う前に確認すべき3つのこと
【確認1】業績が悪くないか
銀行はいつも、「貸したおカネを回収できるかどうか」を気にしています。そのうえで、回収できる可能性が少ないのであれば、回収できなかった時のリスクを減らすために「金利」を上げる。これが、銀行の考え方です。
では、回収できるかどうかをなにで判断するのか? いろいろありますが、もっとも大きな要素は「業績」です。融資をする会社の業績が良いか・悪いか。
業績が良ければ、金利を下げることができますが。業績が悪ければ、金利を下げることはできません。
では、業績が良いか・悪いかはなにで判断するのか? これにもいろいろありますが、おもなところをいくつか挙げてみましょう。
まずは、債務償還年数です。算式であらわすと「いま現在の借入金残高 ÷(税引後利益+減価償却費)」になります。「税引後利益+減価償却費」を返済原資と見た場合に、いまある借入金を何年で返済できるか? が債務償還年数の意味です。
早く返済してもらえるほうが安全なので、債務償還年数が短いほど業績が良い、と言う見方になります。この債務償還年数が7年を超えてくると、銀行もリスクを気にしはじめるでしょう。つまり、「金利が高い」と文句を言っても、聞き入れてもらいにくい状況です。
言うまでもありませんが。債務償還年数を短くするには、「税引後利益」を増やすことが重要になります。「税引後」がポイントであり、税金を惜しまず利益を出せる会社ほど、債務償還年数は短くなることを覚えておきましょう。
けして少なくはない社長が、税金を惜しむあまり、ほんとうはもっと出せるはずの利益を出し惜しんでいます。結果として、融資が受けにくくなったり、金利が高くなったりしています。
ここでもうひとつ、業績の判断材料を挙げるなら「自己資本比率」です。算式であらわすと、「自己資本(純資産)÷総資産」になります。この自己資本比率が、高いほど安全というのはよく知られるところでしょう。
なお、自己資本比率が 10%を割り込むと倒産確率が上がる、というデータもあります。それを銀行もわかっていますから、金利が高いと文句を言うのであれば、相応の自己資本比率が必要です。当然、10%では足りず、少なくとも 20%くらいは欲しいところかと考えます。
というわけで。金利が高いと文句を言う前に、まずは自社の業績を確認してみましょう。業績が悪ければ、金利交渉の土俵に立つことはできません。
[ad1]【確認2】お付き合いが悪くないか
銀行が融資の金利を決めるときの材料として、前述の「業績」のほかに、「お付き合い」が挙げられます。会社が銀行と、どのようなお付き合いをしているか。
具体的にはまず、「預金取引」です。端的に言うと、融資を受けている銀行に対して、預金をしていればしているほど、金利は下がります。
たとえば、A銀行から 5,000万円の融資を受けている会社があったとして。会社は、A銀行に 3,000万円の預金をしていたとします。すると、銀行は実質的には 2,000万円しか貸していないのと同じです。
2,000万円しか貸していないのに、5,000万円分の融資利息を受け取っていますので、その分だけ銀行は儲かります。
これに対して、同じ 5,000万円の融資を受けていて、預金はゼロというB銀行があったらどうでしょう? 表面的にも実質的にも、B銀行が貸しているのは 5,000万円です。
では、どちらの銀行が金利を下げてもらえる可能性が高いかと言えば。もちろん、前者の預金をしているA 銀行のほうです。このままでは、B銀行に「金利が高い」と文句を言っても、聞き入れてもらえないと考えておきましょう。
また、ただ預金をするだけではなく「振込取引」があるかどうかもポイントになります。振込取引が多いほど、銀行は振込手数料を受け取ることができるからです。
したがって、預金もしていない・振込もしていない銀行に金利を下げてもらうのは難しい、と理解しておきましょう。
お付き合いという点ではもうひとつ。定期的に試算表を提示しているかどうか、もポイントになります。試算表があれば、よりあたらしい会社の状況がわかりますし、業績の推移や傾向もわかりやすくなる。銀行が会社の状況を把握できれば、安心感も増して、金利の引き下げにもつながるものです。
これに対して、年に1度、決算書だけの提示となると、銀行は会社の業績を把握しづらくなります。状況がわかりにくい分だけ、金利の引き下げはしづらくなるものです。
というわけで。金利が高いと文句を言う前に、銀行とのお付き合いが悪くないかを確認してみましょう。お付き合いが悪い会社に対して金利を下げることができないという銀行の考え方は、きわめて合理的です。
[ad1]【確認3】比べる銀行がおかしくないか
融資の金利は、銀行の「種類」ごとに異なります。ここで言う「種類」とは、都市銀行・地方銀行・信用金庫などといった種類のことです。
端的に言うと、都市銀行がいちばん金利が低く、次いで地方銀行。いちばん金利が高いのが信用金庫や信用組合になります。銀行の規模が大きくなるにつれて、金利は低くなるものと覚えておきましょう。
ですから、種類が異なる銀行どうしを比べて「金利が高い」と文句を言っても。それはどうしようもないところがありますので、気をつけなければいけません。
ではなぜ、規模が大きい銀行のほうが金利が低くなるのか? ひとつは、おカネを集めるのにかかるコスト(調達コスト)の問題です。
規模が大きい銀行には、その知名度・信用度から、たくさんの預金がどんどん集まります。いっぽうで、規模が小さい銀行は、それほど預金が集まりませんから。融資をするためには、どこからかコストをかけておカネを集めてこなければいけません。ですから、規模が大きい銀行のほうが融資金利を低くできます。
それからもうひとつ。規模が大きな銀行ほど、大きな金額の融資になるものです。融資金額が大きければ、少々金利が低くても、受け取る利息額は大きくなるので商売が成り立ちます。
いっぽうで、規模が小さな銀行は、小さな金額の融資になるものです。融資金額が小さければ、金利を高くしておかないと割に合わず、商売が成り立たなくなってしまいます。
そんなことから、規模が大きい銀行ほど金利は低くなるものと理解しておきましょう。
では、銀行ごとにどれくらいの金利差があるのか? ひとつの目安として、日本銀行が毎月公表している「貸出約定平均金利」があります。2021年1月分(2021年3月3日公表)のデータによれば、新規融資の金利は次のとおりです↓
- 都市銀行 … 0.435%
- 地方銀行 … 0.681%
- 第二地方銀行 … 0.906%
- 信用金庫 … 1.592%
ちなみに、「第二地方銀行」は「地方銀行」よりも、ちょっと規模が小さい地方銀行といった感じです。
これらをふまえて、ざっくり言うと、「都市銀行→地方銀行→信用金庫」と規模が変わるごとに「0.5%」くらいの金利差がある。と、覚えておくとよいでしょう。
というわけで。金利が高いと文句を言う前に、比べる銀行がおかしくないか、比べる銀行の規模が違っていないかを確認してみましょう。信用金庫に都市銀行並みの金利を求めるのはムリな話です。
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まとめ
銀行融資の「金利が高い」と文句を言う前に、確認すべき3つのことについてお話をしてきました。
このあたりがわかっていないと、文句を言っても交渉しても聞き入れてもらえませんので。ぜひ、押さえておきましょう。
- 業績が悪くないか
- お付き合いが悪くないか
- 比べる銀行がおかしくないか