借入金に関する3つの指標について。この会社はヤバい! と銀行が感じるであろう目安があります。それは「CRD(Credit Risk Database)」です。
というわけで。CRDから提供される情報をもとに、その目安を確認していきましょう。
CRDって、知ってる?
決算書から計算される指標、いわゆる「財務指標」はいろいろあるわけですが。そのなかから、借入金に関する指標を3つほど取り上げてみます。こちらです↓
- 売上高支払利息・割引料率
- 借入金月商倍率
- 総資産借入金比率
これら3つの指標には、「この会社はヤバい!」と銀行が感じるであろう目安があります。それは「CRD(Credit Risk Database)」です。
CRDとは、一般社団法人CRD協会が運営するデータベースであり、全国の信用保証協会と政府系・民間金融機関の「取引先の決算書データ」が集められているものになります。
結果として、多くの銀行が、CRDから提供される情報に注目していると言ってよいでしょう。そこには、「どういう決算書の会社がどれくらいデフォルト(債務不履行)してきたのか」のデータが示されています。
さきほど挙げた3つの指標について、どのくらいの数値になるとデフォルトが増えるのか? その目安がわかれば、銀行は「貸倒れ(貸したおカネの未回収)」を減らすことができるわけです。
では、具体的な目安とは? について、このあと確認をしていきましょう。
会社は、その目安を知ることで、自社の決算書に注意をしなければいけません。言うまでもなく、目安に近づけば融資が受けにくくなるからです。
というわけで。この会社はヤバい! と銀行が感じる「借入金に関する指標」の具体的目安について、このあとお話をしていきます。
この会社はヤバい!と銀行が感じる「借入金に関する指標」の具体的目安
売上高支払利息・割引料率
借入金に関する指標として、まず1つめは「売上高支払利息率」です。この指標を算式であらわすと、こうなります↓
売上高支払利息・割引料率(%) = 支払利息・割引料 ÷ 売上高
算式のとおり、会社の売上高に対して、支払わなければいけない借入金利息や手形割引料がどのくらいあるか? が「売上高支払利息・割引料率」です。
もちろん、支払う借入金利息や手形割引料が少ないほど、その会社は安全だと見られます。
借入金利息は、借入をしている限りはあまり減ることがありませんから、売上が減ったときには負担になる。よって、売上高支払利息・割引料率が高い会社は危険だと見られます。
では、売上高支払利息・割引料率がどのくらいになると、デフォルトする会社が増えるのか? その目安は、ずばり「1%」です。1%を上回るようだとデフォルトが増える、危険だということになります。
CRDによれば、データ全体のデフォルト率は「0.82%」。そのデフォルト率を超えるのは、売上高支払利息・割引料率が「0.84%〜1.23%」のあいだにあると分析をしています(※)。
(※「中小企業の財務分析入門」/CRDビジネスサポート株式会社著 https://www.crd-office.net/CRD-BS/ より)
なお、不動産業については特殊性があるため、不動産業を除いた数字であることを申し添えます。
ちなみに。売上高1億円の会社が、年利2%で 5,000万円を借りているときの売上高支払利息・割引料率は次のとおりです↓
売上高支払利息・割引料率 = 5,000万円 × 2% ÷ 1億円 = 1%
いまは低金利の時代ですから、年利2%が低すぎるということはないでしょう。その前提で、売上高支払利息・割引料率が1%になるのは「売上高の半分の借入金がある」ときです。
言い換えると、売上高の半分を超える借入金残高があると、売上高支払利息・割引料率は1%を超えてしまいます。この点をアタマに入れつつ、次の指標を確認してみることにしましょう。
借入金月商倍率
借入金に関する指標として、2つめは「借入金月商倍率」です。この指標を算式であらわすと、こうなります↓
借入金月商倍率(倍) =(短期借入金+長期借入金・社債)÷(売上高 ÷ 12)
算式のとおり、会社の月商(売上高÷12ヶ月)に対して、借入金がどれくらいあるのか? が「借入金月商倍率」です。
財務的には、借入金が少ないほうが安全であり、つまり、借入金月商倍率が低いほうが安全だ、という見方になります。では、借入金月商倍率がどのくらいになると、デフォルトする会社が増えるのか?
その目安は、ずばり「6倍」です。借入金月商倍率が6倍を超えるようだとデフォルトが増える、危険だということになります。
CRDによれば、データ全体のデフォルト率は「0.82%」。そのデフォルト率を超えるのは、借入金月商倍率が「5.31倍〜7.12倍」のあいだにあると分析をしています(※)。
(※「中小企業の財務分析入門」/CRDビジネスサポート株式会社著 https://www.crd-office.net/CRD-BS/ より)
なお、不動産業については特殊性があるため、不動産業を除いた数字であることを申し添えます。
ここで、さきほどの「売上高支払利息・割引料率」を思い出してみましょう。その売上高支払利息・割引料率が危険水域の1%を超えるのは、「売上高の半分を超える借入金残高がある」ときでした。
これは、借入金月商倍率の危険水域である6倍と一致しており、「売上高の半分を超える借入金は危険」との見方には合理性があることを確認できます。まぁ、あたりまえと言えばあたりまえなのですが。
なんにせよ。自社の決算書を見て、借入金の残高が売上高の半分に近づいているようなら、銀行からは「この会社はヤバそうだ…」と思われていることは理解しておきましょう。
この点で。借入金とは別に、預金があるのであれば、預金分の借入金は無いのといっしょです(いつでも返済できるので)。ですから、借入金月商倍率でいう「借入金」は預金をマイナスして見るのが筋でしょう。
けれども、銀行がそこまでの「手間」をかけて見てくれているかどうかはわかりません。必要があれば、会社のほうから、アピール(借入もあるけど預金もあるよ!)をすることも大切です。
総資産借入金比率
借入金に関する指標として、3つめは「総資産借入金比率」です。この指標を算式であらわすと、こうなります↓
総資産借入金比率(%) =(短期借入金+長期借入金・社債)÷ 総資産
算式のとおり、すべての資産に対して借入金がどくらいあるか? が「借入金月商倍率」です。言い換えると、会社が所有する資産について、借入金を原資としている割合はどれくらいか? になります。
本来的には、返済をする必要のないおカネ(自己資本)で資産を所有するのが良い。との考え方から、総資産借入金比率は低いほうが安全だという見方になります。
では、総資産借入金比率がどのくらいになると、デフォルトする会社が増えるのか?
その目安は、ずばり「70%」です。総資産借入金比率が 70%を超えるようだとデフォルトが増える、危険だということになります。
CRDによれば、データ全体のデフォルト率は「0.82%」。そのデフォルト率を超えるのは、総資産借入金比率が「70.57%〜82.69%」のあいだにあると分析をしています(※)。
(※「中小企業の財務分析入門」/CRDビジネスサポート株式会社著 https://www.crd-office.net/CRD-BS/ より)
なお、不動産業については特殊性があるため、不動産業を除いた数字であることを申し添えます。
というわけで。自社の決算書を見て、総資産借入金比率が 70%に近づいているようなら、銀行からは「この会社はヤバそうだ…」と思われていることは理解しておきましょう。
ところで。総資産借入金比率を良くするために、「借入金を減らそう(繰上返済をしよう)」という考え方には注意が必要です。
たしかに、総資産借入金比率は良くなりますが、なにか起きたときに資金ショートが起きやすくなります。繰上返済によって、手元のおカネ(預金残高)が減ってしまうからですね。
CRDによれば、現預金月商倍率(現金・預金 ÷(売上高 ÷ 12))が 0.7倍を下回ると、デフォルトする会社が増えるものと分析されています。ですから会社は、繰上返済をしすぎたりして、この値に近づかないように注意しましょう。
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まとめ
借入金に関する3つの指標について。この会社はヤバい! と銀行が感じるであろう目安があります。それは「CRD(Credit Risk Database)」です。
というわけで。会社もまた、その目安を確認しておくとよいでしょう。自社の決算書が、目安に近づいてしまえば、融資が受けにくくなってしまいますので。
- 売上高支払利息・割引料率
- 借入金月商倍率
- 総資産借入金比率