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新型コロナを経て『売上代金の未回収』にもっと備える

新型コロナを経て『売上代金の未回収』にもっと備える

コロナの影響によって、厳しい資金繰りを強いられている会社は少なくありません。

結果として、売上代金の未回収が増えるかもしれない。そう考えて、いままで以上に「売上代金の未回収」に備えるようにしましょう。という、お話をしていきます。

目次

新型コロナを経て、もっと備える。

きょうは 2021年5月17日、新型コロナの影響によって、いまなお厳しい資金繰りを強いられている会社は少なくありません。

そんななか、コロナ以前にも増して備えるべきことがあります。「売上代金の未回収」に対する備えです。ただでさえ資金繰りが厳しいのに、売上代金の未回収が発生したら大変なことになってしまいます。

たとえば、利益率 30%でモノを売っている会社があったとして。ある得意先に対する 300万円の売上代金がまったく回収できなくなってしまったら…? 300万円をリカバリーするために、会社はいくらの売上をあげればよいのでしょうか。

300万円、ではありません。こたえは、1,000万円です。利益率は 30%なのですから、1,000万円の売上がなければ、300万円をリカバリーすることはできません。これは大変ですよね。コロナを経て、売上が減少しているような会社であればなおさらでしょう。

繰り返しになりますが、コロナの影響によって、厳しい資金繰りを強いられている会社は少なくありません。結果として、売上代金の未回収が増えるかもしれない。そう考えて、いままで以上に「売上代金の未回収」に備えるようにしましょう。

というわけで。このあと、「売上代金の未回収」にもっと備える方法をお伝えしていきます。具体的には、こちらです↓

「売上代金の未回収」にもっと備える方法
  1. 与信管理する
  2. 経営セーフティ共済に加入する
  3. 銀行融資を受けておく

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

「売上代金の未回収」にもっと備える方法

【方法1】与信管理する

「売上代金の未回収」にもっと備える方法、1つめ。それは、「与信管理する」です。

せっかく売り上げても、その代金を回収できなければ、資金繰りは悪くなってしまいます。売り上げるのにも、仕入や販売するための費用はかかっているからです。

したがって、売り上げるからにはきちんと代金を回収しなければいけません。ただ、売り上げる以前に気をつけるべきこともあります。ずばり、「与信」です。

はじめて取引をするときはとくに、「この会社と取引をしてもだいじょうぶだろうか?おカネを払ってくれる会社だろうか?」ということを検討する。その後も、定期的に状況を確認する必要もあります。これが「与信」です。

ところが、ほとんど「与信」に気をかけていない、という会社は意外とあります。少額の取引であればともかく、金額が大きい取引をするのであれば、「信用情報」の確認をしましょう。

ここで言う「信用情報」とは、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業調査会社が提供している情報です。

情報のなかには、会社の状態が点数化された「評点」というものがあります。その評点の高低を見て、「取引をするかどうか・取引を続けるかどうか」の検討が大切です。

ちなみに。帝国データバンクの評点は 100点満点。50点を超えるようであれば、中小企業としては優良です。50点以下になると、評価が良い順に「D1」「D2」「D3」「D4」といった記号で表記をされることがあります。D1、D2くらいまでは安全圏、それ以下は要注意と考えておくとよいでしょう。

信用情報を取得するには、1件あたり数万円ていどの調査費用を支払う必要があります。けして安くはありませんが、のちのち回収不能になるリスクを回避するためと考えれば、負担すべき費用だと言っていいでしょう。

ただ、それでも「ちょっと高くて厳しい」というのであれば、「G-Search」というサービスを利用するのもひとつの方法になります。

月額 330円+調査料という料金体系で、調査料は帝国データバンクの企業情報であれば1件 1,760円です。G-Searchを利用することで、評点を含めた、最低限の信用情報を取得することができます。

【方法2】経営セーフティ共済に加入する

「売上代金の未回収」にもっと備える方法、2つめ。それは、「経営セーフティ共済に加入する」です。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、中小企業政策を実施する公的機関である「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)」が運用する制度です。

連鎖倒産に陥ることを防ぐための制度であり、得意先が倒産したときには、無担保・無保証で融資を受けることができます。

それも「すぐに」、というのがポイントです。得意先の倒産について確認が済みしだい、すぐに融資を受けることができるようになっています。銀行融資のように、融資をするかどうかの「審査」はありません。

この制度を利用するためには、中小機構に対して「掛金」の払い込みが必要です。

月額 5,000円 〜 200,000円(金額は自社で決める)の掛金を払い込むことによって、「回収不能額」か「払込掛金総額の10倍」の、いずれか少ないほうの金額の融資を受けられるというしくみになっています。

ちなみに、払込掛金総額は 800万円が限度です。それ以上は、払込ができません。つまり、融資の最高限度額は 8,000万円(800万円 × 10倍)になります。

注意点として、「夜逃げ」のように明確に倒産をしていない場合には、上記融資の対象外です。そのようなケースも含めて、取引先が倒産をしていなくても「一定額(掛金総額以下)」の融資を受けられる「一時貸付金」の制度はあります。

なお、掛金は「経費」になりますので、税金を減らす効果があります(解約をしておカネを受け取ると収入になります)。会社の業績が悪くなる前に、資金繰りが安定しているうちに、経営セーフティ共済への加入を検討しましょう。

【方法3】銀行融資を受けておく

「売上代金の未回収」にもっと備える方法、3つめ。それは、「銀行融資を受けておく」です。

取引先の倒産による資金繰り悪化を想定して、「公的な融資」が用意されています ↓

得意先の倒産・回収不能時の公的な融資
  • 日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付(取引企業倒産対応資金)」
  • 信用保証協会の「セーフティーネット保証(連鎖倒産防止)」

これらは「公的な融資」であるだけに、ややもすると期待をしがちなところではあります。しかしながら、「審査」があることを忘れてはいけません。

セーフティーネット貸付であれば日本政策金融公庫の審査、セーフティネット保証であれば信用保証協会と銀行の審査があります。いずれの融資も、「審査の結果、ご希望に添えない場合がある」との注意書きがなされているところです。

また、融資を受けられるとしても。審査にあたって、その準備・手続きなどに時間がかかります。どれだけの時間がかかるかわからないのは不安要素のひとつです。

そこで考えるべきは、「あらかじめ銀行融資を受けておく」です。事が起きてからではなく、事が起きる前に融資を受けて、手元のおカネを確保しておくようにしましょう。

利益が出ている会社、資金繰りが順調な会社であれば、銀行から「余裕資金」の融資を受けられるものです↓

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余裕資金とは、「いますぐには使わないけれど、資金繰りを安定させるために余分に持つおカネ」を言います。余裕資金があれば、売上代金の未回収が発生したときにも役立つはずです。

必要なときに、必要なだけ融資を受けるのではなく。いま必要がなくても、いずれ必要になるかもしれないおカネは、いま融資を受けておく。という考え方も持っておきましょう。

まとめ

コロナの影響によって、厳しい資金繰りを強いられている会社は少なくありません。

結果として、売上代金の未回収が増えるかもしれない。そう考えて、いままで以上に「売上代金の未回収」に備えるようにしましょう。

「売上代金の未回収」にもっと備える方法
  1. 与信管理する
  2. 経営セーフティ共済に加入する
  3. 銀行融資を受けておく
新型コロナを経て『売上代金の未回収』にもっと備える

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