銀行に融資を申し込んだら、「信用保証協会が貸せないと言っている」と断られた。それって、本当なの? というお話をしていきます。
本当にそんなこと言ってるの?
会社が銀行から融資を受ける場合、大きく分けて、2つの融資があります。信用保証協会の保証付き融資と、プロパー融資です。
信用保証協会の保証付き融資とは、会社が返済できなくなったときに、信用保証協会が肩代わりをしてくれる融資を言います。いっぽうのプロパー融資は、信用保証協会の保証が無い融資。会社が返済できなくなったときには、銀行が 100%の損をかぶる融資です。
このうち「信用保証協会の保証付き融資」について。銀行から「信用保証協会が貸せないと言っている」と断られることがあります。
信用保証協会の保証付き融資を受けるためには、銀行の審査に加えて、信用保証協会の審査をクリアする必要があるため、「信用保証協会が貸せないと言っている」というのはありうる話です。
けれども、それが必ずしも「本当」ではないケースもあります。次のようなケースです↓
- そもそも担当者で話が止まっている
- 重要なことが信用保証協会に伝わっていない
- 信用保証協会を悪者にしている
こういったケースで、社長はどのように対応したらいいか? そのあたりをふまえて、3つのケースについて、このあとお話をしていきます。
銀行が言う「信用保証協会が貸せないと言っている」が本当ではないケース
【ケース1】そもそも担当者で話が止まっている
銀行に融資を申し込むときには、その銀行の担当者(営業担当・渉外係)を窓口にすることが多くあるでしょう。
つまり、社長が銀行担当者に融資の相談をする。担当者が銀行に持ち帰る。銀行内で稟議にかけられる。稟議の結果を銀行担当者が社長に伝える。という感じです。
このとき、「ひとつの可能性」として。担当者が相談を持ち帰ったきり、抱え込んだまま… ということがありえます。稟議にかけられることもなく、担当者のところで話が止まっているケースです。
そんなことあるのか? と、思われるかもしれませんが。実際にあります。割合としては少ないものの、けしてゼロではありません。
銀行員も忙しい。ひとりで、数十件から百件を超えるような融資先を担当しています。そのうえノルマがあるので、銀行担当者はどうしても取り組みやすい案件から対応しがちです。結果として、自社の相談が後回しにされることもありえます。
そこで、社長が銀行担当者に「まだ審査が終わらないのか?」とたずねると。担当者から「いま、信用保証協会が審査をしているところです」との回答。これは、「いまのところ信用保証協会が貸せない」と言っているのと同義です。
社長としては融資をすみやかに受けたいものでしょうから、避けたいケースだと言えます。では、どうするか?
ひとつは、銀行への相談を「文書」にして渡すことです。資金使途や返済原資・返済方法、融資希望時期をA4用紙1枚ていどにまとめて、担当者に渡しましょう。
文書には「一定のプレッシャーを与える効果」がありますから、担当者のところで話が止まることは少なくなるはずです。詳しくはこちらの記事もどうぞ↓
また、後回しにされないよう、担当者が稟議書を書くのに必要な情報を提供するようにしましょう。具体的には、「試算表・資金繰り表・借入金一覧表」です↓
逆に、これらの書類がないと、担当者は稟議書を書くのに手間と時間がかかります。だから、後回しにされてしまうのです。後回しにされるのは、情報提供できない社長の側にも責任があることを理解しておきましょう。
【ケース2】重要なことが伝わっていない
信用保証協会の保証付き融資を受けようとする場合、信用保証協会が審査をするにあたって必要な情報を届けるのは銀行担当者です。
基本的に、社長が直接、信用保証協会と相対することはなく、信用保証協会は「銀行担当者経由」で会社の情報を入手することになります。
ではもしも、銀行担当者が「じゅうぶんな情報」を、信用保証協会に届けることができていなかったとしたらどうでしょう? 当然、信用保証協会は審査をしにくくなります。融資OKとは言いづらくなります。
その結果、銀行から「信用保証協会が貸せないと言っている」と断られることになるわけです。
けれどもこれは、本当は融資を受けられるはずなのに、情報が不十分だったばかりに断られてしまったケースだとも言えます。
このようなケースを避けるためできること。ひとつは、信用保証協会が審査をするのに必要な情報、重要なことは社長のほうで準備をして、担当者に渡すことです。
たとえば、事業の内容や取引先などがわかるように、会社案内や商品パンフレットを渡す。よりわかりやすく伝えるためには、「商流図」を作成して渡すのもいいでしょう↓
融資審査をするうえで、その会社が「なにを・どこに・どのように売っているか」は、とてもだいじなことです。これらは、決算書や試算表だけではわからないものでもあります。別途、情報提供しましょう。
また、銀行担当者に情報提供してもなお、「信用保証協会が貸せないと言っている」と断られるケースがあります。
この場合、「ひとつの可能性」として考えるべきこと。それは、「銀行担当者が信用保証協会に、きちんと重要なことを伝えられていないかもしれない」ということです。
会社が伝えようとしていることが、信用保証協会にまで伝わっていないかもしれない。そのせいで、融資が受けにくくなっているのかもしれない。そう考えられるのであれば、社長が直接、信用保証協会に話をするのもひとつの方法です。
ふだんは銀行経由が基本になりますが、直接、話をすることができないわけではありません。重要なことがあれば、信用保証協会の担当者にアポイントをとって、話をしにいくのもいいでしょう。
[ad1]【ケース3】信用保証協会を悪者にしている
銀行から、「信用保証協会が貸せないと言っている」と断られた。でも実は、銀行のほうが貸したくない、貸せないと判断しているケースもあります。
ただそれを社長には伝えにくいので、信用保証協会のせいにしている、信用保証協会を悪者にしている、という可能性がゼロではない。と、覚えておきましょう。
具体的にどういうケースが考えられるか、というと。決算書や試算表といった、「数字」の問題ではなく、数字以外に問題がある。たとえば、過去に社長と銀行担当者のあいだでトラブルになった… とか。
この点で、社長の言い分が銀行にとって理不尽なものである場合。銀行は、今後は取引をしたくない相手・取引をしない相手として位置づけることになります。
数字は悪くないのに、どうにも融資が受けにくい… という場合、そういった経緯があったりするものです。ではもし、社長にそういった「心当たり」があるときは、どうしたらいいか?
ほかの銀行からの融資を考えることです。いちどトラブルを起こした銀行との関係修復をはかるのもカンタンではありません。だったら、あらたに別の銀行と関係をつくるほうが速いと言えるでしょう。
ちなみに。信用保証協会の保証付き融資の審査は、たいてい銀行による信用保証協会への打診からはじまります。銀行の審査の前に、信用保証協会の審査が先、ということです。
なぜなら、信用保証協会が貸せないと言ったら、銀行が貸したくても貸せないから(プロパー融資でなければ)。なので、まずは銀行担当者が信用保証協会に打診をするわけです。
ところが、前述したように「銀行とのトラブル」を理由に融資を断られている場合、信用保証協会への打診はしていない可能性が高いでしょう。
ほかの銀行から融資を考えるにも、「信用保証協会への打診があったのかが気になる」というのであれば、その旨を信用保証協会に直接確認してみるのもひとつの方法です。
まとめ
銀行に融資を申し込んだら、「信用保証協会が貸せないと言っている」と断られた。それって、本当なの? というお話をしてきました。
なかには本当ではないケースもありますので、そのときの対応を押さえておきましょう。
- そもそも担当者で話が止まっている
- 重要なことが信用保証協会に伝わっていない
- 信用保証協会を悪者にしている