資金繰り予定表をつくるなら6ヶ月分? それとも1年分? その答えと、理由についてお話をしていきます。
6ヶ月分よりも1年分。
銀行融資・銀行対応を考えるうえで、欠かせないもののひとつに「資金繰り予定表」があります。文字どおり、「資金繰りの予定を示す表」です。
銀行は融資先の資金繰り予定表を見たいものであり、会社はそれに応えることで融資が受けやすくなる。という現実があります。
その資金繰り予定表について、どれだけの「期間」をつくればいいのか? と疑問に思われるかもしれません。これに対しては、6ヶ月分あるいは1年分といった回答が多いようです。
では、6ヶ月分と1年分だったらどちらがいいのか? ずばり、わたしは「1年分」をおすすめしています。その理由は、次の3つです↓
- 年間返済額を把握するため
- 売上の季節変動を示すため
- 税金の支払額を把握するため
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
資金繰り予定表は1年分をつくる理由
【理由1】年間返済額を把握するため
ところで。資金繰り予定表を6ヶ月分つくる場合の「6ヶ月」にはどのような理由があるのでしょうか? ひとつは、銀行融資を受けるまでの「余裕を見て」という理由があるものと思われます。
つまり、銀行融資を受けたくても、実際に受けるまでには時間がかかる。銀行に申し込みをして、審査を受けるまで融資を受けることはできない。
であるならば、融資を受けるまでの「余裕を見て」おく必要がある。その余裕が6ヶ月ではないか、ということです。
もっとも、なじみの取引銀行であれば、数週間から1ヶ月ていどで融資を受けられるかもしれませんが。はじめて取引をする銀行や、利用する融資制度によっては数ヶ月かかることもありますし。
また、新型コロナでは、多くの会社が銀行に殺到したため、融資を受けるのにも2ヶ月待ちや3ヶ月待ちといった事態になりました。やはり、「余裕を見て」おくことは大切です。
この点で。「余裕」を考えるのであれば、あらかじめ「年間返済額」を確認しておくべきだと言えます。向こう1年間の返済額を確認する。そのためには、資金繰り予定表を1年分つくることが役立ちます。
年間返済額というのは、現時点で「支出」が確定している金額です。そして、その返済原資は「税引後利益+減価償却費」という考え方があります↓
そこで。返済原資が確保できそうか、滞りなく返済ができそうか? を確認するために、向こう1年間の利益計画(売上ー費用=利益)にともなう入出金と、年間返済額とを資金繰り予定表に落とし込んでみるわけです。
ところが。それ以前に、「年間返済額」を把握していない社長がいます。これでは、「年間返済額に見合う返済原資があるのかどうか」を確認することができません。
結果として、6ヶ月の資金繰りは回ったとしても、年間で見るとおカネが目減りしていた… ということが起きやすくなります。だからまずは、年間返済額を把握する。資金繰り予定表を1年分でつくってみる。
最近では、コロナ融資をへて、返済の「据置期間」を設定している会社も少なくありません。据置期間が終わったときの年間返済額はいくらになるのか? も確認をしておくようにしましょう。
[ad1]【理由2】売上の季節変動を示すため
融資を受けようとするとき、あるいは融資を受けていると、銀行から「資金繰り予定表」の提示を求められることがあります。
また、銀行から求められずとも、会社が自主的に資金繰り予定表を提示することで、融資は受けやすくなるものです。銀行にとって、融資の可否を判断する材料が増えるからですね。
その資金繰り予定表が「6ヶ月分」だと、銀行に必要な情報が伝わらないことがあります。その情報とは、「季節変動」です。季節変動とは、1年を通じた売上の上下動を言います。
商売には、多かれ少なかれ季節変動があるものです。夏は売れるけど、冬はあまり売れない、みたいな。この季節変動が、6ヶ月分の資金繰り予定表だと捉えにくくなってしまいます。
銀行は、季節変動も含めて会社の状況を把握したいのですから、6ヶ月分の資金繰り予定表では情報として不十分だと言えるでしょう。
また、売上が増加する時期には、会社は「おカネ(運転資金)」が必要になるものです。売上が増えると、代金回収待ちの金額が増えたり、在庫が増えたりといったことが起こります。
これらはいずれも、資金繰りを悪くさせるものであることから、売上が増加する前には融資を受けるなどして備えておくのが財務のセオリーです。
この点で、1年分の資金繰り予定表が役立ちます。見れば、季節変動があることがわかりますし、季節変動によって、どれくらいの「おカネ(運転資金)」が必要になるかもわかります。
銀行としては、融資がしやすくなる。場合によっては、銀行のほうから融資セールスもしやすくなるところです。
逆に、6ヶ月分の資金繰り予定表ではそうはいきません。情報が不足しているだけに、銀行は融資をしづらく、融資セールスもしづらくなります。
というわけで。銀行に対して、じゅうぶんな情報を提供するために、資金繰り予定表は1年分をつくるようにしましょう。融資が受けやすくなれば、会社の資金繰りも安定します。
[ad1]【理由3】税金の支払額を把握するため
さきほど【理由1】で、返済原資は「税引後利益+減価償却費」だというお話をしました。税引後利益、つまり、税金を払ってなお残った利益が返済原資だということです。
したがって、税金を支払う前の利益だけを把握していたのでは不足であり、税金をいくら支払うのかも把握しておかなければいけません。
この点で、6ヶ月分の資金繰り予定表だと、「税金をいくら支払うのか」が抜け落ちてしまう可能性があります。1年に1回、決算後に法人税を払う、消費税を払う。これが抜け落ちてしまう。
税額が大きかった場合には、資金繰りに大きな影響を及ぼすところです。
実際、税金の支払いを考慮していなかったがために、納税前に大慌てする社長もいます。大慌てで借りるとなれば、急な時間をとられるし、大きなストレスを抱えることにもなるでしょう。
そんなことにならないように、資金繰り予定表をつくる。その資金繰り予定表が1年分であれば、税金の支払いが抜け落ちることはなくなります。
なお、資金繰り予定表に税金を織り込む場合にも、その「金額」には注意が必要です。資金繰り予定表には、たしかに税金の記載があるのだけれど、その金額に大きな間違いがある… というケースもあります。
聞けば、前年の税額をそのまま転記しているとか、単純に税率を掛け算して計算したとか。そういった場合には、実際の税額とは大きくかけ離れることもありますので気をつけましょう。
多く見積もっていたのであればまだしも、少なく見積もっていた場合には、納税前に結局大慌てすることになってしまいます。それを見た銀行からは、「資金繰り予定表の数字はなんだったのか?」と信用を失いかねません。
税額については、顧問税理士に確認をするなどしたうえで、資金繰り予定表に記載することをおすすめします。
まとめ
資金繰り予定表をつくるなら6ヶ月分? それとも1年分? その答えと、理由についてお話をしてきました。
3つの理由になっとくできるようでしたら、資金繰り予定表はぜひ1年分をつくるようにしましょう。
- 年間返済額を把握するため
- 売上の季節変動を示すため
- 税金の支払額を把握するため