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コロナ融資で崩れた『借入残高シェアと預金残高シェアのバランス』を整える手順

コロナ融資で崩れた『借入残高シェアと預金残高シェアのバランス』を整える手順

コロナ禍をへて、借入残高シェアと預金残高シェアとが変化した会社は少なくありません。

そこで、コロナ融資で崩れた「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を整える手順について、お話をしていきます。

目次

銀行は、気にしている。

コロナ禍では多くの会社が、銀行融資を受けました。会社のほうから銀行に駆け込んだケースもあれば、銀行のほうからゼロゼロ融資(いわゆるコロナ融資)を勧められたケースもあるでしょう。

結果として、借入残高シェア(会社全体の借入残高に対する、各銀行の借入残高の割合)がコロナ以前とは変化した、という会社はあるはずです(事例は後述します)。

加えて、預金残高シェア(会社全体の預金残高に対する、各銀行の預金残高の割合)が変化した、という会社もあるはずです(事例は後述します)。

スムーズな銀行対応を考えると、本来、「借入残高シェアと預金残高シェアとはバランスを取るべき」だと言えます。ところが、コロナをへて、そのバランスは崩れている会社は少なくありません。

この点で。銀行はこちらが想像している以上に、借入残高シェアや預金残高シェア、そのバランスを気にしているものです。

そこで。コロナ融資で崩れた「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を整える手順について、お話をしていきます。具体的にはこちらです↓

コロナ融資で崩れた「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を整える手順
  1. まずは、借入残高シェアの把握から
  2. 借りたおカネはどこの銀行口座に残っているのか、を確認する
  3. 預金の口座移動を検討する

コロナ融資で崩れた「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を整える手順

【手順1】まずは、借入残高シェアの把握から

たとえば、もともとはA銀行の借入残高が 3,000万円、B銀行の借入残高が 1,500万円、C銀行の借入残高が 500万円。この場合の「借入残高シェア」は、A銀行 60%、B銀行 30%、C銀行 10%です。

その後、コロナ禍でC銀行から 3,000万円の融資を受けたとすると。借入残高シェアは、A銀行 37.5%、B銀行 18.75%、C銀行 43.75%に変わります。

借入残高シェア1番の銀行を「メインバンク」と定義するのであれば(必ずしもそうではありませんが)、「メインバンクはA銀行からC銀行に入れ替わった」と見ることになります。

メインバンクにはメインバンクとしての「矜持(きょうじ)」があるものですから、元メインバンクのA銀行としては「おもしろくない」という思いはあるでしょう。なぜ、ウチに相談もなくC銀行から借りたのか?と。

そんな具合で、銀行は借入残高シェアを気にしているものですから。まずは、社長自身が「借入残高シェア(の変化)」を把握しておくことが大切です。

具体的には、「借入金一覧表」をつくるのがよいでしょう。その名のとおり、借入金の情報を一覧にまとめた表です。つくり方や考え方など、くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ↓

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つくった借入金一覧表は、各銀行に対しても提示するようにしましょう。提示しつつ、「どういう考え・どういう経緯・どこの銀行で借入をしたのか」を説明します。

さきほどの事例で言うと、「C銀行さんがいち早く、ゼロゼロ融資の提案を持ってきてくれたので」という説明をすれば、A銀行としては「ウチの動きが悪かったか…」となるでしょう。相談をしなかった会社が恨まれるような事態を避けられます。

【手順2】借りたおカネはどこの銀行口座に残っているのか、を確認する

借入残高シェアの把握ができたら、こんどは、「借りたおカネはどこの銀行口座に残っているのか」を確認しましょう。

たとえば、C銀行で借りたおカネがC銀行の口座に残っているのは問題ありません。ところが、C銀行で借りたおカネがB銀行の口座に残っている(移されている)としたらどうでしょう?

C銀行としてはおもしろくないものです。

なぜなら、銀行にとって、預金は「担保」の意味合いがあるからです。預金があれば、会社が少々赤字になっても返済してもらえます。だから、預金は自行の口座に置いてほしい。銀行は、そう考えています。

コロナ禍での融資は、「運転資金」を資金使途(借りたおカネの使いみち)とするものがほとんどでした。言い換えると、コロナによる売上減少や利益減少を補うためのおカネを借りた、ということです。

とはいえ、なかにはそれほど売上減少や利益減少がなく、結果的に借りたおカネを使わずに済んでいる会社もあります。そのおカネがどこの銀行口座に残っているのか? を銀行は見ているわけです。

なお、コロナ融資を複数の銀行から借りているケースでは、借りたおカネの使いかたに「偏り」がないか? といった見方も必要になります。

たとえば、D銀行とE銀行のそれぞれから 2,000万円ずつコロナ融資を受けていた場合。借りたおカネは、D銀行とE銀行に等しく残っているのが「理想」です。

ところが、まずはD銀行からばかりおカネをつかって、D銀行の預金には借りたおカネが残っていない。かたやE銀行の口座には、借りたおカネが手つかずで残っている。

D銀行としては、あまりおもしろくありませんよね。

というように、コロナ禍で借りたおカネはどこの銀行口座に残っているのか? 確認をしてみましょう。

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【手順3】預金の口座移動を検討する

【手順2】では、借りたおカネがどこの銀行口座に残っているのか? の確認をしました。確認をした結果、「どうも偏りがあるなぁ」ということであれば、調整をするのがよいでしょう。

この点で、「借入残高シェアと預金残高シェアのバランスをとる」という考え方があります。

預金残高シェアとは、会社全体の預金残高に対する、各銀行の預金残高の割合のこと。借入残高シェアを計算したのと同じように、各銀行の預金残高シェアも計算してみましょう

そのうえで、「借入残高シェア=預金残高シェア」が、銀行にとっての「公平」だと考えます。

コロナ融資で借りたおカネの使いかたに偏りがあれば、「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」が崩れているはずです。「借入残高シェア=預金残高シェア」からは大きくズレていることがあります。

そこで、借入残高シェアに対して預金残高シェアが大きすぎる銀行から、他の銀行の口座へ預金を移動する。これによって、「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を取るわけです。

なお、厳密に「借入残高シェア=預金残高シェア」にならなくてもかまいません。だいじなのは、「できるだけ」バランスをとることです。

そういったことを考えず、バランスが大きく崩れている会社もありますので。それはあまりよくありませんよ、という話になります。

コロナ融資に限ったことではなく、「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」は定期的に見直すようにしましょう。

あえて、「借入残高シェア=預金残高シェア」のバランスを崩すことで、融資を引き出す方法もあります。つまり、融資を受けたい銀行に預金を移して、それを交渉材料にするわけです。

融資を引き出すだけではなく、預金があれば、金利引下げ交渉の材料にもなります。あわせて検討してみましょう。

まとめ

コロナ禍をへて、借入残高シェアと預金残高シェアとが変化した会社は少なくありません。

コロナ融資で崩れた「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を整える手順を確認して、必要に応じて実行していきましょう。

コロナ融資で崩れた「借入残高シェアと預金残高シェアのバランス」を整える手順
  1. まずは、借入残高シェアの把握から
  2. 借りたおカネはどこの銀行口座に残っているのか、を確認する
  3. 預金の口座移動を検討する
コロナ融資で崩れた『借入残高シェアと預金残高シェアのバランス』を整える手順

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