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銀行借入するかどうか迷ったときの検討手順

銀行借入するかどうか迷ったときの検討手順

銀行借入したほうがいいんだろうか…? というのは、社長が迷うことのひとつでしょう。そこで、銀行借入するかどうか迷ったときの「検討手順」について、お話をしていきます。

目次

借りるかどうかは迷うもの。

ウチの会社、銀行借入したほうがいいんだろうか…? と、社長が迷うことがあるでしょう。銀行から融資を勧められているけど、借りたほうがいいんだろうか…? と、迷うこともあるでしょう。

銀行借入については「借りたほうがいい」と言う人もいれば、「借りないほうがいい」と言う人もいるし。人にたずねるほど、ますます迷ってしまうことにもなりかねません。

そこで、銀行借入するかどうか迷ったときの「検討手順」について、お話をしていきます。以下3つの手順に沿って、借入したほうがいいのかをみずから検討できるようにしましょう↓

銀行借入するかどうか迷ったときの検討手順
  1. 預金残高が売上半年分以下なら借りる
  2. すぐに使う予定がないなら借りる
  3. 年間返済額<税引後利益+減価償却費なら借りる

それではこのあと、これら3つの手順を順番に説明していきます。

銀行借入するかどうか迷ったときの検討手順

【手順1】預金残高が売上半年分以下なら借りる

まず1つめの手順は、「預金残高が売上半年分以下なら借りる」です。

たとえば、年間売上高 5,000万円の会社であれば、売上半年分は 2,500万円になります。このとき、預金残高が 2,500万円以下なら融資を受ける。というのが、「手順1」の考え方です。

ではなぜ、売上半年分なのか?

新型コロナのような不測の事態によって、長期にわたって売上が減少する・消失するという例があるからです。このとき、預金残高があるほど、時間をかせぐことができます。

かせいだ時間で、社長は落ち着いて、立て直しをはかることができるでしょう。この点で、ひとつの目安として「売上半年分の預金残高」というのが、わたしの考えです(銀行融資・財務支援をしている経験則から)。

とはいえ、売上半年分の預金残高がある会社は、それほど多くありません。結果として、多くの会社が「手順1」によって、「借りる」ということになるでしょう。その場合には、次の「手順2」に進みます。

逆に、すでに売上半年分の預金残高がある会社は、「ひとまず借りなくてもだいじょうぶかな」と考えてもよいでしょう。その場合には、この「手順1」にて検討は終了です。

ちなみに。いま現在(きょうは 2021年7月26日)、新型コロナの影響で売上が激減したまま… という会社もあります。そのような会社は、「売上」を基準にするのではなく、「年間諸経費(仕入は除く)+年間返済額」を基準にしましょう。

つまり、会社が支払わなければいけない金額である「年間諸経費(仕入は除く)+年間返済額」の半年分の預金残高があるかどうかで判断します。が、そういった会社は、預金残高も厳しい状況にあるはずです。やはり「手順2」へと進むことになります。

【手順2】すぐに使う予定がないなら借りる

【手順1】によって、「借りる」となった場合には次の手順、「すぐに使う予定がないなら借りる」を検討しましょう。

いま銀行借入をしたとして、すぐに使う予定がないのであれば、「返済できるかどうかの心配」がありません。借りたおカネのなかから、返済をすればいいだけだからです。

であるならば、ひとまず借りておいて、手元の預金残高を増やしておく。これによって、不測の事態に備えることができます。この場合には、この「手順2」で検討はおしまいです。借りて、おしまい。

とはいえ、使いもしないおカネを借りるときの利息がもったいない… と、思われるかもしれません。そんなときの「考え方」について触れておきます。

たとえば、500万円を金利2%で借りる場合。当初の年間支払利息は 10万円です。ひと月あたりだと、8,333円になります。これを見て、「月8,000円くらいであれば、500万円のおカネを持っているほうが安心だ」と思う社長もいるはずです。

したがって、利息については「率」ではなく「額」でも考えるようにしてみましょう。率ばかりを見ていると、「なんか高いなぁ」ということはあるものです。

また、銀行から融資を勧められているのであれば、金利の引き下げ交渉はしやすい状況だと言えます。銀行は貸したいのですから、少々の要求はのんでもらえる可能性があるでしょう。

交渉によって金利を引き下げることができれば、「利息がもったいない…」との思いはさらに軽減されます。銀行に対してひとこと、「金利はもう少し下げられませんか?」と聞いてみることも検討しましょう。

それから、もうひとつ。すぐに使う予定がないおカネを借りることなどできるのか? と、思われるかもしれません。できるか・できないか? で言えば、できます。

会社がギリギリのおカネしかもっていないのでは、資金繰りに不安があるのは銀行も理解をしているところです。したがって、すぐに使う予定がないおカネでも、借りることはできます。

このあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓

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ここで、話を戻して。いま銀行借入をしたら、すぐに使う予定がある場合はどうするか? その場合には、次の「手順3」へと進みます。

【手順3】年間返済額<税引後利益+減価償却費なら借りる

【手順1】で「借りる」となった場合、そのうえで、【手順2】で「銀行借入をしたら、すぐに使う予定がある」となった場合を検討しましょう。

言うまでもないことですが、借りたおカネは返さなけれいけません。では、返すにあたって「原資」になるものはなにか? それは、「税引後利益+減価償却費」です。

税金を支払ったあとの利益(税引後利益)が、「元金返済」の原資になります。いっぽう、「利息の支払い」は、利益を計算する過程ですでに差し引かれています。

減価償却費は、費用(利益を計算する過程で差し引かれている)ではあるものの、その対象になる固定資産を買ったときにおカネの支払いは済んでいるため、返済原資として足し戻す。

というのが、「税引後利益+減価償却費」の意味になります。ここはちょっと難しいところですが、ひとまずは「そんなもんかな」と考えておきましょう。

そのうえで、「年間返済額<税引後利益+減価償却費」が成り立つかどうかがポイントになります。「税引後利益+減価償却費」が返済原資なのですから、それが「年間返済額(既存借入分に加えて、これから借入しようとしている分も含む)」より大きいことが望ましい。つまり、この場合には借りてOKです。

では、逆に「年間返済額>税引後利益+減価償却費」となってしまったらどうなるか。この状態のまま、あらたに借入すると、手元のおカネがどんどん減っていくことになります。

したがって、まずは「税引後利益+減価償却費」を増やすことができるかどうかを考えましょう。端的に言うと、利益を増やせるかどうかです。売上を増やしたり、経費を減らしたりできるかどうか。

それができないのであれば、「年間返済額」を減らすことを考えます。具体的には、「借り換え」です。既存の融資を、あらたに別の融資を受けることで返済します。あらたな融資は、既存の融資よりも返済期間を長くすることで、「年間返済額」を減らすわけです。

このとき、既存の融資の残高に、金額を上乗せして借り換えることもできます。「年間返済額>税引後利益+減価償却費」の場合には、借り換えによる借入も検討してみましょう。

それでもなお、「年間返済額>税引後利益+減価償却費」が解消できない場合はどうするか? あらたに借入をすることはできない、と考えるべきところです。

「年間返済額>税引後利益+減価償却費」の状態を、すぐには解消できないようであれば、リスケジュール(返済猶予)を銀行に依頼して、一時的に返済をストップすることも考えなければいけません。

その場合には、急ぎ、経営改善計画書の策定にとりかかりましょう。くわしくこちらの記事もどうぞ↓

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まとめ

銀行借入したほうがいいんだろうか…? というのは、社長が迷うことのひとつでしょう。人にたずねてみるのもいいですが、その答えはさまざまですから。ますます迷ってしまうことにもなりかねません。

そこで。みずから検討することができるように、銀行借入するかどうか迷ったときの手順を押さえておきましょう。

銀行借入するかどうか迷ったときの検討手順
  1. 預金残高が売上半年分以下なら借りる
  2. すぐに使う予定がないなら借りる
  3. 年間返済額<税引後利益+減価償却費なら借りる
銀行借入するかどうか迷ったときの検討手順

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