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社長が感じる『過剰債務』とはなにか?3ケースとその対応策

社長が感じる『過剰債務』とはなにか?3ケースとその対応策

ウチの会社は「過剰債務」だ… と社長が感じる3つのケースと、それぞれのケースに応じた対応策についてお話をしていきます。

目次

過剰債務の正体とは?

2021年6月初旬に実施された、東京商工リサーチのアンケートによれば。コロナをへた中小企業の3社に1社が「過剰債務」を感じているとのことでした。これを多いと見るか、少ないと見るか…

それはそれとして、「過剰債務」とはなんなのか? 「過剰債務」とはどういう状態なのか? と言えば。万人に共通する明確な基準や定義があるわけではありません。あくまで、各社長の主観です。

というわけで。社長が「過剰債務」だと感じるであろう3つのケースと、それぞれのケースに応じた対応策について、お話をしていきます。

じぶんは、どのケースの過剰債務を感じているのか? 感じていない場合でも、実は、自社は過剰債務ではないのか? ということもふまえて、3つのケースを確認してみましょう↓

社長が感じる過剰債務 3つのケース
  1. 税引後利益+減価償却費<年間返済額
  2. 資産の総額<負債の総額
  3. 債務償還年数>10

それではこのあと、順番に見ていきます。

社長が感じる過剰債務 3つのケースとその対応策

【ケース1】税引後利益+減価償却費<年間返済額

返済額が大きくて、手元のおカネがどんどん減っていく… ゆえに過剰債務を感じるのが、このケースになります。「返済額が大きくて」という感覚を算式にあらわすと、次のとおりです↓

税引後利益+減価償却費<年間返済額

基本的に、借入返済の原資は「税引後利益+減価償却費」です。これが「年間返済額」を下回ると、手元のおカネを取り崩して返済しなければいけません。なので、「返済額が大きい」と感じるのです。

新型コロナの影響を受けて、利益が減少したような会社は、算式中の「税引後利益+減価償却費」が減少したために、社長が過剰債務を感じていることになります。

逆に、利益がじゅうぶんでありさえすれば、返済額がどれだけ大きかろうと問題はないわけです。

では、このケースでの対応策は? というと。まずは当然、利益改善です。利益をもっと増やすことができないかを検討します。などと言うと、「それができたら苦労しないんだ」との声も聞こえてきそうです。

というわけで、利益改善ができない場合はどうするか。算式中の「年間返済額」のほうを減らすことです。その方法はいくつかあります。

1つめは、借り換え。既存の借入を、あらたな借入によって完済する。このとき、あらたな借入は、既存の借入よりも返済期間を長くすることで、年間返済額を引き下げることが可能です。

2つめは、短期継続融資や当座貸越です。これらはいずれも、「経常運転資金(売上債権+たな卸資産ー仕入債務)」を借入するときの「借りかた」のひとつになります。

経常運転資金は、事業を続けている限りは必要になるおカネです。これを銀行から借入している会社は多くありますが、毎月分割返済の借りかたをしているケースが少なくありません。

すると、返済のたびに手元のおカネは減りますから、資金繰りは厳しくなります。そうならないように、「実質的に借りっぱなし(年間返済額ゼロ)」の状態をつくるのが短期継続融資や当座貸越です。

経常運転資金の金額が大きな会社ほど効果がありますので、取引銀行に相談してみるとよいでしょう。

3つめは、リスケジュール(返済猶予)です。利益改善もできない、借り換えや短期継続融資などの手段もムリ。という場合の対応策が、リスケジュールになります。

もちろん、できればリスケジュールはしたくないことですが、手元のおカネが尽きて会社を潰してしまうわけにはいきません。手元のおカネがあるうちに、リスケジュールを銀行に依頼するのがポイントです。

そのあたりは、こちらの記事もどうぞ↓

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【ケース2】資産の総額<負債の総額

借入の金額が多い、どんどん膨らんでいく… ゆえに過剰債務を感じるのが、このケースになります。「借入の金額が多い」という感覚を算式にあらわすと、次のとおりです↓

資産の総額<負債の総額

これを「債務超過」と呼びます。銀行がとても嫌いなもののひとつです。債務超過になると融資が受けにくくなる、というハナシは多くの社長が知っていることではないでしょうか。

では、このケースでの対応策は? というと。まずは、「ほんとう」に債務超過なのかどうかを確認することです。決算書上は「資産の総額<負債の総額」でも、実は債務超過ではないケースもあります。

なぜなら、債務超過かどうかは、「実態」で判断すべきものだからです。

たとえば、社長からの借入金が決算書に記載されている場合。社長が会社に対して、短期のうちに返済を求めないのであれば、その借入金は「出資(資本金)と同じ」という銀行の考え方があります。

したがって、多額の社長借入金があるような会社は、それを負債から除くと「資産の総額>負債の総額」に逆転することはあるものです。というわけで、決算書を実態に見直すことが必要になります↓

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また、社長個人が資産を持っているのであれば、その資産を会社の資産に合算することができる、という考え方もあります。合算した結果、「資産の総額>負債の総額」に逆転することはあるものです。

よって、個人資産がある社長は、銀行に対して情報開示することも検討しましょう。なお、個人資産を合算するときには、個人負債も合算しなければいけないことは注意点です。

さらには、資本性ローンを利用するという方法もあります。資本性ローンとは、平たく言うと、「借入ではあるけれど、資本とみなす」という融資です。

資本性ローンによって、自己資本を増やし、債務超過の状態を解消する。これにより、銀行からの融資を受けやすくすることで、会社は財務改善をはかることができます。

この点で、公的金融機関である日本政策金融公庫には、コロナ支援として「新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」という商品があります。

難易度高めの融資ではありますが、日本政策金融公庫の取り組み姿勢は積極的ですから(徐々に積極性が増しています)、利用を検討してみるとよいでしょう。

【ケース3】債務償還年数>10

借金がずいぶんあるけれど、さいごまで返済できるだろうか… ゆえに過剰債務を感じるのが、このケースになります。「さいごまで返済できるだろうか」という感覚を算式にあらわすと、次のとおりです↓

債務償還年数>10

ちなみに、債務償還年数とは、

債務償還年数=借入金残高÷(税引後利益+減価償却費)

つまり、年間の返済原資を「税引後利益+減価償却費」と見た場合に、いまある借入金を何年で返済できるかを計算するのが債務償還年数です。

その債務償還年数が 10年を超えるようだと借入が多すぎる、というのが銀行の見方でもあります。では、このケースでの対応策は? というと。

まずは、預金残高を確認してみましょう。借入金残高が多いとしても、預金があれば、いつでも返済できるわけですから、預金分の借入はないのと同じです。したがって、この場合の債務償還年数は、

債務償還年数=(借入金残高ー預金残高)÷(税引後利益+減価償却費)

で計算することになります。これなら「債務償還年数<10」になる、ということもあるでしょう。

続いて、確認をすべきは「経常運転資金」です。経常運転資金とは、「売上債権+たな卸資産ー仕入債務」で計算します。会社は通常、この分の借入をしているわけですが。

どこかで事業をやめるときには、売上債権を回収して、たな卸資産を売却すれば、経常運転資金分の借入は返済することができます。だとすれば、経常運転資金分の返済原資として、利益は必要ありません。

そこで、経常運転資金分の借入は無いものと考えると、債務償還年数の算式はこうなります↓

債務償還年数=(借入金残高ー預金残高ー経常運転資金)÷(税引後利益+減価償却費)

これなら、「債務償還年数<10」になる、ということもあるでしょう。このように、ひとくちに「債務償還年数」と言ってもいろいろです。

さいごにもうひとつ。算式中の「税引後利益」が過少になっているケースがあります。ここで言う「過少」とは、「ほんとうはもっと利益を出すチカラがあるのに出し惜しんでいる」という意味です。

具体的には、税金を払いたくないから経費を増やして利益を減らしているケース。意外とあります。これをやってしまうと、当然、返済原資は減るわけですから過剰債務の原因になるところです。

税金を嫌って利益を減らすと、手元に残るおカネ(税引後利益)が少なくなります。また、債務償還年数が悪化しますから、銀行融資も受けにくくなります。税金の「嫌いすぎ」には注意しましょう。

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まとめ

ウチの会社は「過剰債務」だ… と社長が感じる3つのケースと、それぞれのケースに応じた対応策についてお話ししてきました。

じぶんは、どのケースの過剰債務を感じているのか? 感じていない場合でも、実は、自社は過剰債務ではないのか? ということもふまえて、3つのケースと対応策を押さえておきましょう。

社長が感じる過剰債務 3つのケース
  1. 税引後利益+減価償却費<年間返済額
  2. 資産の総額<負債の総額
  3. 債務償還年数>10
社長が感じる『過剰債務』とはなにか?3ケースとその対応策

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