いざというときに備えて、手元にはおカネを置いておきたい。そんな、すぐには使わないおカネを銀行から借りる3つの方法について、お話をしていきます。
銀行は、使いみちがないおカネを貸さない。
いざというときに備えて、手元にはおカネを置いておきたい。そう考える社長は、少なくないはずです。新型コロナをへて、その考えをますます強くした社長もいることでしょう。
では、そのおカネを銀行から借りることはできるのか? 手元に置いておくおカネ、つまり、すぐには使わないおカネを銀行から借りることはできるのか。
結論として、できます。
ただし、銀行は原則、「使いみちがないおカネ」は貸さないことを理解しておく必要があります。「使いみち」という点では、手元に置いておくおカネに使いみちはありません。
であるならば、すぐには使わないおカネを銀行から借りることはできない、ということになってしまいます。では、どうしたらよいのか。その方法が、こちらの3つです↓
- 運転資金+αで借りる
- 売上増加見込で借りる
- 信用保証協会の保証付きで借りる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
すぐには使わないおカネを銀行から借りる3つの方法
【方法1】運転資金+αで借りる
冒頭、銀行は「使いみちがないおカネ」を貸さない、という話をしました。言い換えると、銀行は「資金使途がないおカネ」を貸さない、ということです。
資金使途とは、おカネの使いみちのことであり、大きく2つに分かれます。設備資金と運転資金です。このうち設備資金とは、設備の購入代金を支払うためのおカネを言います。
いっぽうで運転資金とは、設備資金以外のためのおカネ。具体的には、仕入代金や諸経費を支払うためのおカネが運転資金です。さらに、運転資金は細かく分かれます。
その代表格が、経常運転資金です。計算式であらわすと、「売上債権+たな卸資産ー仕入債務」になります。これは、会社が事業を続けるうえで必要になるおカネであり、手元に置いておかなければいけないおカネです。
その経常運転資金を自己資金で準備できない場合、会社は銀行から借入をする必要があります。ここで、「経常運転資金+α」の金額を依頼するようにしましょう。経常運転資金に対して、すこし多めに借りるということです。
銀行も、資金繰りに余裕があるほうが安全なのは理解しています。ですから、少々の+αであれば、応じてくれるものです。ポイントは、運転資金といっしょに借りる、というところ。
これを「手元に置いておくおカネ」として単独で借りようとすると、融資は受けにくくなります。なぜなら、使いみちのないおカネ、資金使途がないおカネに該当してしまうからです。
したがって、手元に置いておくおカネを借りるのであれば、「運転資金+α」として借りるのがベストになります。+αについては「手元流動性を高めたいので」と伝えるのが、もっともらしい言葉になるでしょう。
+αの金額的なイメージとしては、平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の1ヶ月分くらい、といったところです。
なお、+αのおカネを借りるのであれば、決算書が黒字のときに限られます。赤字の場合には、「赤字の補てんに使われる」と見られますので、「すぐには使わないおカネ」という理屈が成り立ちません。
【方法2】売上増加見込で借りる
繰り返しになりますが、銀行から融資を受けるには「使いみち(資金使途)」が必要です。この点で、「手元に置いておくおカネ」として単独では借りにくい、という話をしました。
それでも借りたい場合はどうするか? ひとつは、「売上増加見込」を理由にすることです。
売上が増加すると、経常運転資金(売上債権+たな卸資産ー仕入債務)も増加します。売上が増えれば、売上債権やたな卸資産も増えるからですね。であれば、会社はその分のおカネが必要になります。
そこで、銀行には「売上増加が見込まれるので、手元のおカネを増やしておきたい」と伝えてみましょう。売上増加というポジティブな要素もありますから、比較的、融資は受けやすい状況です。
ただし、当然ながら、ウソはいけません。売上増加の見込みもないのに、見込みがあるなどと言ってはいけません。銀行は、社長が言ったことを覚えていますので、いずれウソはバレます。
もっとも、売上増加の見込については、銀行から「根拠」を求められるところです。受注見込一覧や受注書などを提示するようにしましょう。
このとき、借りることができる金額は、売上増加見込分の「売上債権+たな卸資産ー仕入債務」が基本になります。その金額に対して、+αを依頼することで「すぐには使わないおカネ」を増やすことが可能です。
また、「(売上増加にともない)良い人がいれば、採用を考えている」というのも、+αを借りやすくする言葉になります。
【方法3】信用保証協会の保証付きで借りる
運転資金を資金使途にする融資について、信用保証協会の保証付き融資とプロパー融資(信用保証協会の保証が無い融資)とでは、少々異なるところがあります。
プロパー融資の場合には、前述した「経常運転資金」が基本です。つまり、「売上債権+たな卸資産ー仕入債務」で計算された金額が、融資を受けられる金額の基本になります。
これに対して、信用保証協会の保証付き融資の場合。「売上債権+たな卸資産ー仕入債務」とは別に、「平均月商の2〜3倍くらいまで」といった、わりとアバウトな考え方を持っているのが信用保証協会です。
結果として、プロパー融資よりも信用保証協会の保証付き融資のほうが、運転資金を「多め」に借りられることがあります。
この点で、日本政策金融公庫もまた、信用保証協会と同じような考え方を持っていることは覚えておくと良いでしょう。プロパー融資に加えて、信用保証協会や日本政策金融公庫も活かすことで、会社は手元に置いておくおカネを増やせるということです。
ちなみに、わりとアバウトな信用保証協会や日本政策金融公庫に対して、プロパー融資が厳密なのは、融資をするのが「民間銀行」であり、なにかあれば、その銀行が100%損をかぶらねばならないからです。
これが、信用保証協会の保証付き融資であれば、貸すのは銀行でも、会社が返済できなければ信用保証協会が肩代わりをしてくれます。日本政策金融公庫は、国の金融機関ですから、民間銀行のような「営利の厳しさ」はありません。ゆえに、「わりとアバウト」だということになります。
誤解のないように申し添えると、「わりとアバウト=絶対的に審査がユルい」というわけではありません。信用保証協会も日本政策金融公庫も、きちんとした審査はあります。
あくまで、民間銀行との比較で、「審査がユルい一面もある」という理解になりますので気をつけましょう。ときおり、審査を甘く見ている社長がいらっしゃいます。
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まとめ
いざというときに備えて、手元にはおカネを置いておきたい。けれども、銀行は原則、使いみちのないおカネを貸してはくれない。
というわけで、すぐには使わないおカネを銀行から借りる3つの方法を押さえておきましょう。
- 運転資金+αで借りる
- 売上増加見込で借りる
- 信用保証協会の保証付きで借りる