中小企業が融資を受けるのであれば、都市銀行ではなく、地域金融機関。
というわけで、地域金融機関選びのいまどきポイントについてのお話です。ひとむかし前とは、ちょっと違います。
ひとむかし前とは違う銀行事情。
銀行から融資を受けている会社にとって、大切なのが「銀行選び」です。お付き合いする銀行を間違えると、融資が受けにくくなったり、受けられなくなったり。受けられても、融資条件が悪くなったり…
この点で、まずは「地域金融機関」を選ぶのは、ひとつのポイントです。地域金融機関、つまり、地方銀行や信用金庫・信用組合のなかから選ぶ。逆に、都市銀行は選択肢から外す。
その理由をひとことで言えば、都市銀行は大企業向けの銀行だから。中小企業に都市銀行は不向きだから。このあたり、くわしくはこちらの記事をどうぞ↓
それはそれとして。地域金融機関のなかから、どこを選べばいいのか? 自社の近くに、いくつか地域金融機関がある場合にはどこを選べばいいのか?
そのポイントについて、「いまどきの銀行事情」もふまえてお話をしていきます。具体的なポイントは、次の3つです↓
- 預貸率・預証率
- 地域に対する関わり方
- 事業性評価への取り組み
どれも、ひとむかし前とは事情が異なるところですから、ぜひ確認をしておきましょう。このあと、3つのポイントを順番に見ていきます。
地域金融機関選びのいまどきポイント
【ポイント1】預貸率・預証率
地域金融機関(地方銀行、信用金庫・信用組合)選びのいまどきポイント、1つめ。それは「預貸率・預証率」です。
まず、「預貸率(よたいりつ)」とは、算式でいうと「貸出金 ÷ 預金」のこと。銀行がお客さまから預かった預金のうち、どれだけ貸出(融資)にまわしているか? が、預貸率です。
平均値で言うと、地方銀行の預貸率が 70%くらい、信用金庫・信用組合が 50%くらいになります。とはいえ、個々の銀行ごとの預貸率は、上から下まで実にバラバラです。
そのなかで、「預貸率が低い銀行は融資に消極的」という見方があります。銀行の周辺に融資対象先が少ない場合には「貸したくても貸せない」ということはあるでしょうから一概に言えませんが。
それでも、自社の周囲にある銀行どうしを比較するのであれば、「預貸率が低い銀行は、なかでも、融資に消極的」だとは言えます。
なお、預貸率が低いのは、「その銀行の業績が悪くて、リスクをとった融資ができないから」という理由がひとつ。もうひとつは、「目利き力が不十分であるために、リスクをとった融資ができないから」という理由が考えられます。
いずれにせよ、できることなら、預貸率が高い銀行を選びたいものです。
これに対して、「預証率(よしょうりつ)」とは、算式で言うと「有価証券 ÷ 預金」のこと。銀行がお客さまから預かった預金のうち、どれだけ有価証券(運用)にまわしているか? が、預証率です。
平均値で言うと、地方銀行の預貸率が 20%くらい、信用金庫・信用組合が 30%くらいになります。個々の銀行ごとの預証率は、やはり、上から下までバラバラです。
銀行の「役割」を考えたときには、預証率が高いのはどうなのか? という見方があります。平たくいえば、銀行は「おカネを貸してナンボ」であり、それをさておき、有価証券の運用に走る銀行の存在意義とは? みたいなハナシです。
たしかに、「預貸率が低くて、預証率が高い」のであれば、融資を受けようとする会社にとっては不向きな銀行だと言えます。預貸率とあわせて、預証率についても確認すると、その銀行の融資姿勢がよりよくわかるでしょう。
各銀行の預貸率や預証率は、ネットやビジネス誌などに掲載されることがあります。また、各銀行がネットで公開しているディスクロージャー誌から、確認するのもひとつの方法です。
[ad1]【ポイント2】地域に対する関わり方
地域金融機関選びのいまどきポイント、2つめ。それは「地域に対する関わり方」です。
地域金融機関というのは、文字どおり、地域に根ざした金融機関になります。したがって、どれだけ地域に対して深く関わりをもっているか、もとうとしているかは銀行選びのポイントです。
たとえば、さきほど見た「預貸率」について。いくら預貸率が高くても、その融資先が本店から離れたところばかり… というのでは少々疑問が残ります。
地方銀行のなかには、本店所在地とは異なる他県に進出して、融資を積極的に展開しているところがあります。けれども、地元で集めた預金は、本来、地元企業への融資として還元すべきだろうとの見方もあるわけです。
このあたりは、各銀行のディスクロージャー誌で確認をしてみるとよいでしょう。
また、地域のイベント・活動に、積極的に参加をしている銀行かどうか? という視点もあります。地域のイベント・活動で存在感がある銀行というのは、地域に対する融資にも積極的な姿勢があると見ていいでしょう。
いまはコロナ禍なので、イベントや活動の場は少なくなっていますが、コロナが収束して場が増えてきたときには、自社の近くにある銀行の動きに注目してみましょう。
ちなみに、コロナと言えば。コロナ禍のなかで、銀行がどのような動きを見せたか? というところからも、地域に対する関わり方をうかがい知ることができます。
ある信用金庫では、銀行にとってリスクが無い(あるいは少ない)信用保証協会の保証付き融資ばかりを積極的に推し進めていました。コロナ融資や、ゼロゼロ融資などと呼ばれる融資です。
資金繰りが厳しい会社に対してであれば、いざしらず。資金繰りが盤石で、業績も良好な会社に対しても、プロパー融資(信用保証協会の保証が無い融資)ではなく、コロナ融資・ゼロゼロ融資ばかりを推し進める…
いっぽうで、ある信用金庫は、コロナ融資・ゼロゼロ融資さえ断られてしまうほど状況が厳しい、地元の会社に対して、プロパー融資で支えようとする姿勢が見られました。地元の人々・会社からあずかった預金なのですから、苦しいときこそ地元に還元しようという姿勢です。
この差は、けして小さくないでしょう。各銀行の、地域に対する関わり方に目を向けてみることが、銀行選びの参考にもなるはずです。
[ad1]【ポイント3】事業性評価への取り組み
地域金融機関選びのいまどきポイント、3つめ。それは「事業性評価への取り組み」です。
いま、地域金融機関に求められているもののひとつに、「事業性評価」が挙げられます。事業性評価とは、「財務データや担保・保証に依存せず、事業の内容や成長可能性を評価する」という考え方です。
これまで、決算書をはじめとした財務データや、担保・保証に依存しすぎてきたことをかえりみて。これからは、銀行本来の「目利き」によって、事業の内容や成長可能性を評価した融資をしましょう。と、金融庁は、地域金融機関にうながしてもいるところです。
もちろん、会社としても事業性評価の流れは大歓迎でしょう。中小企業の財務データは、大企業ほどに良いものではありませんし、担保・保証だって限られています。
事業の内容や成長可能性まで見て、融資を考えてくれるのであれば、それはありがたいことです。
この点で。金融仲介機能のベンチマーク、というものがあります。カンタンに言うと、金融庁が各地域金融機関を評価するための「指標」です。ぜんぶで55個の指標があります。
そのなかのひとつが、「金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数及び融資額、及び、 全与信先数及び融資額に占める割合」という指標です。
これを、各地域金融機関は公表することになっています。「○○銀行 金融仲介機能のベンチマーク」とネットで検索をしてみたり、各銀行のディスクロージャー誌のなかで「事業性評価」の文字を検索するなどして探してみましょう。
そのうえで、自社の近隣にある銀行どうし、比較をしてみます。どの銀行が事業性評価に熱心で、どの銀行が事業性評価に熱心でないかがわかるはずです。
コロナによって、信用保証協会の保証付き融資は、限度額いっぱいまで借りた会社は少なくありません。銀行から見ると、貸せるだけの保証付き融資をしたことになります。
だとしたら、今後、銀行ができる融資はプロパー融資です。そのプロパー融資は、銀行にとってリスクが大きな融資ですから、基本的には、業績が良い会社のみが融資の対象になります。
けれども、コロナをへて業績が大きく傷ついている会社が多いことでしょう。それでも、銀行がプロパー融資をできるかどうかは、事業性評価できるかどうかにかかっている、と言えます。
というわけで、事業性評価ができる銀行かどうか、事業性評価に積極的な銀行なのかどうか。銀行選びのポイントにしてみましょう。
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まとめ
中小企業が融資を受けるのであれば、都市銀行ではなく、地域金融機関。
というわけで、地域金融機関選びのいまどきポイントを押さえておきましょう。ひとむかし前とは、銀行事情が違います。
- 預貸率・預証率
- 地域に対する関わり方
- 事業性評価への取り組み