どっちもおなじ地域金融機関ではありますが。地方銀行と信用金庫について、会社が融資を受けるうえでの違いをお話ししていきます。
おなじ地域金融機関でも違いがある。
会社が融資を受ける「銀行」について。まずは、「都市銀行」と「地域金融機関」という区分があります。
都市銀行とは、大都市に本店を置きつつ、全国に支店を展開している金融機関です。具体的には、みずほ、三菱UFJ、三井住友、りそな、になります。
これに対して、地域金融機関は、特定の地域で営業活動をおこなう金融機関です。地域金融機関はさらに、地方銀行と信用金庫、信用組合などに分けられます。
このうち、中小企業が融資を受けるにあたって利用することが多い、地方銀行と信用金庫の違いを確認していきましょう。意外と、知っているようで知らないものでもありますから。
両者はまず、根拠とする法律に違いがあります。「銀行法」にもとづくのが地方銀行、「信用金庫法」にもとづくのが信用金庫です。
このうち、信用金庫は、「会員」の出資による協同組織であり、非営利法人の位置づけにあります。利用できるのは、原則、営業地域内の会社・住民のみです。また、会社に対しては、資本金額や従業員数に制限を設けて、大企業を利用対象外としています。
いっぽう、地方銀行は、株式会社であり、営利法人の位置づけです。基本的に、すべての会社・人が利用できるという点で、信用金庫とは違いがあります。
これらをふまえて、地方銀行と信用金庫について、会社が融資を受けるうえでの違いについて確認をしていきましょう。具体的には、次のとおりです。
- 営業エリア
- 審査基準
- 融資金額
- 金利
- 親密度
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
地方銀行と信用金庫の融資での違いとは?
【違い1】営業エリア
冒頭でもふれたとおり、地方銀行と信用金庫とでは、営業エリアに違いがあります。端的に言うと、地方銀行のほうが営業エリアは広く、信用金庫のほうが狭い。
地方銀行は、本店がある都道府県プラス近隣の都道府県というイメージに対して、信用金庫は本店がある都道府県のなかのさらに一部の市町村だけ、というケースもあります。
なお、信用金庫の場合には、信用金庫法によって、会員以外の会社には融資ができません。また、会員(出資が必要)になるためには、融資を受けようとする信用金庫の営業エリア内に会社がなければいけません。
この点で問題になるのは、会社が移転をするケースです。移転をした先が、いままで取引をしていた信用金庫の営業エリア外となると、自動的に新規融資が受けられなくなります。信用金庫をメインバンクにしている会社はとくに、気をつけるべきところです。
【違い2】審査基準
融資の審査基準は、地方銀行のほうが厳しく、信用金庫のほうが緩いと考えておきましょう。
具体的には、地方銀行のほうが「数字重視」という点で、審査が厳しいと言えます。数字、つまり、決算書の内容が良いかどうかです。
決算書の内容が良ければ融資が受けやすく、決算書の内容が悪ければ融資が受けにくい。これは、信用金庫でも同じではありますが、信用金庫のほうが「数字以外」にも広く目を向けているものです。
融資先の事業の内容や将来性、社長個人の能力や人がら、社員のようす、など。数字以外にも目を向けるのは、数字だけを見ていたのでは融資をするのが難しい会社が多いからです。
業績が良い会社ほど、都市銀行で融資を受け、都市銀行でダメなら地方銀行で融資を受けます。すると、信用金庫に融資を受けにくる会社の決算書は、あまり良いものではないことが多いわけです。
したがって、大企業や中堅企業に比べると業績が悪い、業績が安定しない中小企業にとって、信用金庫は頼りになる金融機関だと言えます。
なお、会社の年間売上高が1億円未満までは、信用金庫をメインに融資を受ける。1億円を超えたら、地方銀行からの融資も考える。というのが、会社規模から見た「ひとつの目安」になります。
[ad1]【違い3】融資金額
受けられる融資の金額は、地方銀行のほうが大きく、信用金庫のほうが小さい、という違いがあります。端的に言えば、規模が大きい地方銀行のほうが、貸出原資をより多く持っているからです。
とはいえ、地方銀行よりも規模(預金量)が大きい信用金庫もあれば、信用金庫よりもずっと規模が小さな地方銀行もあります。なので、地方銀行のほうが融資金額が大きいというのは、あくまでイメージです。
融資金額にとくに差が出るのは、プロパー融資(信用保証協会の保証が無い融資)になります。プロパー融資は、会社が返済できなくなれば銀行がすべての損をかぶることになる融資です。
したがって、損をどれだけ受け入れることができるかという点で、規模が大きい地方銀行のほうが受け入れ余地がある。リスクをとることができる。だから、融資金額が大きくなるわけです。
ちなみに、信用金庫の場合、ひとつの会社がプロパー融資を受けられる金額は、最大でも 3,000〜5,000万円くらいかと考えます。したがって、これ以上のプロパー融資を必要とする会社は、他の信用金庫や地方銀行との取引を増やす必要があります。
【違い4】金利
融資を受ける際の金利は、地方銀行のほうが低く、信用金庫のほうが高くなります。
さきほど、融資金額は地方銀行のほうが大きい、という話をしました。融資金額が大きければ、同じ金利でも、銀行が受け取る利息収入の「金額」は多くなります。
逆に、融資金額が小さければ、金利を高くしなければ、銀行が受け取る利息収入が少なくなってしまいます。あまりに少なければ、コスト倒れとなり、商売として成り立ちません。
よって、融資金額が小さい信用金庫のほうが、地方銀行よりも金利が高い、ということになります。では、具体的にどれくらい高いのか?
日本銀行が毎月公表している「貸出約定平均金利」のデータを見てみると。2021年6月については、信用金庫が 1.438%、地方銀行が 0.844%、第二地方銀行が 0.992%です。
なお、地方銀行は、地方銀行と第二地方銀行とにわかれます。イメージとしては、第二地方銀行のほうが、地方銀行よりも規模が小さい、と考えておくとよいでしょう。
そのうえで、さきほどの金利を見てみると。信用金庫と、地方銀行とのあいだには「0.5%」くらいの差があることがわかります。参考までに、都市銀行の金利は、0.687%です。
これを見ると、やはり、金利が低い都市銀行から借りたい。ダメなら、その次に金利が低い地方銀行から借りたい、となるところでしょう。
[ad1]【違い5】親密度
地方銀行と比べると、信用金庫のほうが、融資先との親密度は高いものと考えます。ここで言う「親密度」とは、融資先との接触頻度・深さという意味合いです。
前述したとおり、地方銀行は「数字重視」の融資審査であり、業務の効率化・合理化を積極的に進めています。結果として、「ご用聞き」の営業スタイルは減っていくでしょう。
これに対して、信用金庫は環境的にも、その成り立ちからも「数字重視」というわけにはいかず、業務の効率化・合理化とは反するような動きも想像できるところです。
つまり、あえてご用聞きを増やすような信用金庫もある、ということになります。こうして、融資先との親密度が上がれば、数字以外の面から融資審査をすることも可能です。
会社としては、より柔軟な融資を受けられますから、信用金庫とのお付き合いをしておくことも、だいじな選択肢だと言えます。
また、信用金庫が、ふだんから数字以外の面も見れていれば、新型コロナのような不測の事態にも、スピーディーな融資実行が可能になるところです。そういう意味でも、日ごろから信用金庫とお付き合いをしておくとよいでしょう。
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まとめ
どっちもおなじ地域金融機関ではありますが。中小企業が利用することが多い、地方銀行と信用金庫について、会社が融資を受けるうえでの違いを押さえておきましょう。
- 営業エリア
- 審査基準
- 融資金額
- 金利
- 親密度