銀行選び・銀行対応に利用したいのが、金融仲介機能のベンチマーク。
ぜんぶで55もある指標のなかから、なにを見ればいいのか。いま見ておきたい指標について、お話をしていきます。
ベンチマーク、見てますか?
いま銀行には、生き残りをかけて、それぞれの「独自性」を活かした取り組みが求められています。従来は「横並び」だった銀行も、時代が変わり、このままではダメだということです。
そんななか、2016年9月、金融庁から示されたのが「金融仲介機能のベンチマーク」になります。
金融仲介機能のベンチマーク(以下、ベンチマーク)とは、端的に言えば、金融庁が各銀行の取り組みを評価する指標であり、会社が銀行選びをする際の指標となるものです。
ベンチマークでは、ぜんぶで55の指標が用意されています。うち5つは、すべての銀行に共通。のこり50については、各銀行が自行の取り組みに応じて選択した指標を開示しなさいよ。と、なっています。
したがって、会社は、各銀行が開示するベンチマークを参考に、銀行選びをする。あるいは、銀行対応を考えていく。というのが、よいでしょう。
ちなみに。各銀行は、基本的にWEBでベンチマークを公開しています。まずは、「金融仲介機能のベンチマーク 〇〇銀行」で検索してみましょう。
うまく検索できない場合には、ディスクロージャー誌のなかに含まれている場合もあります。ディスクロージャー誌(PDF)を開いて、そのなかで検索をしてみましょう。
では、ぜんぶで55もある指標のなかから、どの指標に注目をすべきか。ずばり、こちらです↓
- 事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記 のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
- 中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合
- 経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合
- 運転資金に占める短期融資の割合
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
いま見ておきたい、融資を受ける銀行の「金融仲介機能のベンチマーク」
事業性評価の結果やローカルベンチマークを提示して対話を行っている取引先数、及び、左記のうち、労働生産性向上のための対話を行っている取引先数
こちらの指標は、全銀行共通の指標(ぜんぶで5)ではなく、各銀行が選択する指標(ぜんぶで50)のうちの1つになります。この点は、後述する指標もすべて同じです。
各銀行の任意で選択する指標になりますので、もし、開示されていなければ、その銀行は「あまり積極的には取り組んでいないんだな」と、とらえることになります。
また、ベンチマークは各銀行単独で眺めるよりは、自社が取引している銀行のベンチマークを並べて眺める、良し悪しを比べてみることが大切です。
そのうえで、今後も取引を続けるべき銀行かどうか、続けるのであれば、どのように対応するのがよいかを検討することになります。
前置きが長くなりましたが、1つめの指標を見てみましょう。
そもそも「事業性評価」ってなんだ? と、思われるかもしれません。事業性評価とは、「決算書の良し悪しや、担保・保証に依存せず、融資先の事業内容や将来性を評価する」という考え方です。
従来の決算書ありき、担保・保証ありきの融資はやめにしよう。その評価をするためのツールとして、ローカルベンチマークというものがあります。
というわけで、事業性評価にどれくらい取り組んでいるかを示すのが、この指標です。
事業性評価は、ただ単に「融資が受けやすくなる」ということばかりではなく、事業性評価を通じて、銀行との関係性が深まるところに「本質」があります。関係性が深まれば、銀行から事業支援(コンサルやビジネスマッチングなど)が受けやすくなるのはメリットです。
したがって、中長期的にお付き合いができる銀行を選ぶにあたっては、参考になる指標だといえます。
中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合
銀行の融資には、大きく分けて2つあります。信用保証協会の保証付き融資と、プロパー融資です。
このうち、信用保証協会の保証付き融資とは、会社が返済できなくなった場合には、信用保証協会が肩代わりをしてくれる融資。ゆえに、銀行にとってはリスクが小さな融資になります。
いっぽうで、プロパー融資は、信用保証協会の保証がない融資。会社が返済できなくなった場合には、銀行が100%損をかぶります。銀行にとっては、リスクが大きな融資です。
この点で、信用保証協会の保証付き融資ばかりをしたがる銀行があります。言うなれば、リスクを取らずに、信用保証協会に責任を押し付けているような銀行です。
こういう銀行は、いざというとき(会社の業績が悪く、資金繰りに窮しているようなとき)にも、保証付き融資が使えなければ、話も聞いてくれないという態度をとることが多くなります。
言うまでもなく、会社にとっては「頼りにならない銀行」です。もちろん、業績が良いうちに融資を受けるのがセオリーではありますが。事業を続けていれば、いざというときはあるものです。
そのときに見向きもされない、ということがないように。銀行の姿勢を確認しておくとよいでしょう。
この指標は、保証付き融資の割合を見ているわけですから、ウラを返せば、プロパー融資がどれくらいあるかがわかります。ふだんからプロパー融資を出せる銀行は、いざというきとにも逃げ出さない(というか、逃げ出しにくい)銀行です。
なお、プロパー融資の割合が高い銀行なのに、自社はプロパー融資を受けられていない… というのであれば。この指標を銀行に見せながら、「どうして、ウチはプロパー融資を受けられないのか?」と聞いてみるのがおすすめです。
これは、銀行に文句を言うという意図ではなく、「プロパー融資を受けられる会社と、自社の違いはどこにあるのか?」を理解することが意図になります。違いを知り、改善して、プロパー融資につなげていきましょう。
[ad1]経営者保証に関するガイドラインの活用先数、及び、全与信先数に占める割合
その昔、銀行融資では「経営者保証(社長の連帯保証)」があたりまえでした。が、いまは必ずしもそうではありません。
直近では、民間銀行における経営者保証無しの融資は、30%近くまで上昇しているとのデータもあります。以前に比べれば、経営者保証をだいぶ外せるようになったと言っていいでしょう。
では、どんな会社でも経営者保証を外してもらえるかといえば、そんなことはありません。基準として、「経営者保証に関するガイドライン」というものが存在しています。
このガイドラインに沿って、経営者保証の必要性を判断するわけです。とはいえ、銀行にしてみれば、経営者保証はあるほうが安心に決まっています。ないよりはあったほうがいい。
したがって、基本的には「消極姿勢」だと考えておいたほうがいいでしょう。銀行のほうから、「経営者保証を外しましょう」とは言ってくれないし、会社のほうから交渉しなければいけない、ということです。
そんな状況のなかでも、比較的、経営者保証を外すのに応じてくれやすい銀行はどこだろう? と、考えるときに役に立つのが、この指標になります。
経営者保証に関するガイドラインの活用割合が高いということは、経営者保証を外すのに理解がある、わりと経営者保証を外しやすい銀行だとみてよいでしょう。
運転資金に占める短期融資の割合
運転資金に占める短期融資とはなにか、と言うと。運転資金の融資を受けるにあたって、長期分割返済(証書貸付)ではなく、短期の手形貸付や当座貸越を利用できているか? ということです。
これを聞いて、長期で借りたほうがいいのではないか、と思われるかもしれませんが。運転資金とは、基本的に、事業を続ける限り常に必要なおカネを言います。
にもかかわらず、いちど必要なおカネを借りたあと、毎月返済をしていたのでは、返済のたびに資金繰りが悪くなるのは当然です(なので、あるていど返済したら、また借りなければならないわけですが)。
そこで、運転資金の融資については、短期(1年以内)の手形貸付で融資を受ける。期日には、審査のうえで、必要な運転資金の金額に変わりがなければ更新する。つまり、借りっぱなしの状態をつくる。これなら、資金繰りが悪化することはありません。
また、必要な運転資金に柔軟な対応ができるよう、当座貸越を設定するケースもあります。当座貸越とは、あらかじめ決められた枠内で、自由に借りたり・返したりができる資金調達方法です。これもやはり、資金繰りの安定に役立ちます。
が、現状ではまだまだ、運転資金の多くは長期分割返済です。なので、金融庁は「運転資金は短期融資で貸しなさいよ」というメッセージとすべく、この指標を用意しています。
自社が取引している銀行が、どれくらいの短期融資を実行しているのか確認をしてみましょう。銀行によって、かなりのバラツキがあるところです。
なお、短期融資を利用できる会社のポイントは、まず、業績が悪すぎないこと(業績が良いときに交渉すべき)。また、運転資金の必要性が明確であること(売掛金や在庫に、不良や架空がないこと)です。
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まとめ
各銀行が独自性を発揮していくなかで、銀行選び・銀行対応に利用したいのが、金融仲介機能のベンチマークです。
ぜんぶで55もある指標のなかから、なにを見ればいいのか。本記事で取り上げた指標については、ぜひ押さえておきましょう。