銀行借入について、返済がどうしても厳しいときにとりうる手段が「リスケジュール」です。
言うなれば「返済猶予」で失敗しないためには、どうすればよいのか? そんな疑問に対する答えとして、リスケジュールの技術についてお話をしていきます。
リスケジュールにも技術がある。
銀行から借りたおカネの返済がどうしても厳しい… というときに、社長がとりうる手段のひとつに「リスケジュール(以下、リスケ)」があります。
リスケとは「融資条件の変更」であり、具体的には「返済猶予」です。一定のあいだ、これまでよりも返済額を減額してもらうことで、経営・財務の立て直しをはかります。
というリスケですから、失敗をするわけにはいきません。銀行からリスケを断られてしまう、断られないまでも減額が不十分… これでは、経営・財務の立て直しが難しくなってしまうでしょう。
では、どうすればよいのか?
そこで、返済猶予で失敗しないために「リスケジュールの技術」として、3つのお話をしていきます。こちらです↓
- 早くリスケをする
- 返済金額は0円にする
- 経営改善計画書をつくる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
返済猶予で失敗しないために、リスケジュールの技術
【技術1】早くリスケをする
リスケという手段を知っていても、ほんとうにギリギリの状態まで、リスケをガマンする社長がいます。ギリギリの状態でリスケをするということは、もはや手元のおカネは「ほとんどない」ということです。
すると、返済を猶予してもらえたとしても、経営・財務を立て直すまでのあいだをしのぐことができません。手元のおカネがなくなってからのリスケジュールでは遅すぎるのです。
銀行もまたそのように考えますから、結果として「リスケを認めてもらえない」ということにもなりかねません。よって、リスケが遅すぎることがないように注意が必要です。
具体的には、以下2つのいずれも満たす状態になったときが、リスケに踏み切るタイミングになります↓
- 税引後利益+減価償却費<年間返済額
- 銀行が融資に応じてくれない、応じてくれても少額
上記のうち、「税引後利益+減価償却費」は、借入金の返済原資にあたるものです。
これが年間返済額を下回ると、会社は預金残高を減らしながら返済を続けることになります。放置すれば、いずれ資金ショートを起こしますので、早めのリスケが重要です。
この点で、リスケをするにも時間がかかることを理解しておきましょう。取引銀行の数にもよりますが、すべての銀行にリスケを承諾してもらうまで、数ヶ月~半年ていどかかることもあります。
このあいだも、手元のおカネはどんどん減り続けるのですから、やはり遅すぎることがないように、リスケを申し出なければいけません。
また、「税引後利益+減価償却費<年間返済額」の状態だとしても、融資を受けられるうちはまだよいでしょう。
ですが、銀行が融資に応じてくれない、あるいは、応じてくれても少額なのであれば、そこがリスケを実行すべきタイミングになります。言うまでもなく、近いうちに資金ショートが見込まれるからです。
リスケを避けたいという社長の気持ちはわかりますが、リスケが遅すぎれば、結局、資金繰りがもたなかった… となってしまいます。
ですから、ギリギリまでガマンをするのではなく、おカネがあるうちに。前述した2つのいずれも満たす状態になったときには、リスケを検討するようにしましょう。
リスケのタイミングで挙げた「税引後利益+減価償却費<年間返済額」について。税引後利益の改善を進めることは大前提です。それでも年間返済額を下回るようならリスケ、という順序になります。
また、年間返済額の圧縮も前提のひとつです。借り換え・一本化によって返済額を圧縮することで、「税引後利益+減価償却費>年間返済額」とできないかも検討してみましょう↓
【技術2】返済金額は0円にする
銀行にリスケを申し出るときに、気をつけるべきことがあります。それは、「当面、毎月の返済金額は0円にしてもらう」ということです。
返済金額0円、つまり、まったく返済をしない(利息は毎月支払います)。そんなことができるのか? と、思われるかもしれませんが。結論として、可能です。
そもそも、資金繰りが厳しいからリスケをするのであって、にもかかわらず、返済をするのではリスケの効果が半減してしまいます。ですから、リスケをするなら返済金額は0円一択です。
とはいえ、銀行は「少しでもよいから返済してほしい」と言われます。おカネを貸している銀行にしてみれば、当然の要望でしょう。
ここで、「しかたがないか…」と返済に応じる社長がいます。それも、できるだけがんばって、できるだけ多くの返済をしようとする社長がいます。
その誠実さもだいじなことですが、返済金額が大きくなるほど、資金繰りは厳しくなるのですから、経営・財務の立て直しが難しくなることは理解しておきましょう。
立て直しに失敗すれば、結局、その後の返済をすることができず、銀行だって困ります。これを、銀行にも理解してもらいましょう。
さいごまで返済を続けるために、当面は返済金額を0円にすることが必要。これにより、経営・財務の立て直しを実現して、いずれ、通常どおりの返済ができるようになる。銀行へは、そのように伝えます。
ちなみに、ここで言う「当面」とは。いっぱんに、6ヶ月〜1年のあいだです。ひとまず、そのくらいの期間について返済猶予を認めてもらい、期間が経過した時点で再度、銀行と返済金額の相談をすることになります。
はじめから、2年や3年といった長い期間の返済猶予を認めてもらえることはないものと考えておきましょう。
【技術3】経営改善計画書をつくる
銀行には、返済金額を0円にしてもらいましょう、という話をしました。が、銀行は「少しでも返済してほしい」と考えていることも、お話をしたとおりです。
それでも、返済猶予してもらうためにはどうしたらよいか?
経営改善計画書を作成して、銀行に提示することです。経営改善計画書のおもな記載項目は、以下のとおりになります。↓
- 経営理念・経営方針
- 外部環境(機会と脅威)
- 内部環境(強みと弱み)
- 経営戦略(事業領域)
- 経営課題
- 行動計画
- 損益実績・計画
- 資金繰り実績・計画
こういった計画もなしに、「返済金額を0円にしてほしい」ということになると、銀行としてはどうしても納得しづらい状況になってしまいます。
とはいえ、経営改善計画書がなくてもリスケはできる。返済金額は0円にできる、という話を耳にすることがあるかもしれません。たしかに、そういうケースもあるでしょう。
ところが、問題の「本質」はそこではありません。リスケは手段であって、ゴールではない。これが本質です。
繰り返しになりますが、リスケを申し出るのは、経営・財務を立て直して、いずれ通常の返済をできるようにするためです。そう考えると、リスケはゴールではなく、スタートだとも言えます。
では、リスケをした会社がゴールにたどり着けるのか? といえば。その可能性はけして高くない、というのが現状です。
それでも、ゴールまでたどり着ける会社があるとすれば、「経営改善計画書を策定して、その実行・管理をしている会社」というのが、わたしの理解になります。
逆に、経営改善計画書を策定していない会社、策定したとしても実行・管理ができない会社(計画をつくりっぱなしで放置する会社)は、立て直しの可能性が低い。
だから、リスケをするにあたって、経営改善計画書をつくることをおすすめしています。結果として、銀行の理解を得やすく、返済金額0円にも応じてもらいやすくなるはずです。
まとめ
銀行借入について、返済がどうしても厳しいときにとりうる手段が「リスケジュール」です。
言うなれば「返済猶予」で失敗しないためには、どうすればよいのか? そんな疑問に対する答えとして、リスケジュールの技術について押さえておきましょう。
- 早くリスケをする
- 返済金額は0円にする
- 経営改善計画書をつくる