会社が設備資金の融資を受けるときに、銀行に伝えるべきポイントについて、ケース別にお話をしていきます。
伝えられるかどうかで、融資の受けやすさが変わる。
会社が銀行から融資を受けるときには、「資金使途」が必要になります。つまり、借りたおカネをなにに使うのかがはっきりしていなければ、融資を受けることはできません。
その資金使途は、大きく2つにわかれます。設備資金と運転資金です。このうち設備資金は、文字どおり、設備投資をするためのおカネになります。いっぽうの運転資金は、設備資金以外のおカネ(仕入代金や経費の支払い)です。
本記事では、設備資金の融資を受けるときに、会社が銀行に伝えるべきポイントを「ケース別」にお話ししていきます。具体的には、次のようなケースです↓
- 本社の新築・増改築
- 工場の新築・増改築
- 倉庫の新築・増改築
- 機械設備の購入・更新
- 新店舗の出店
これら設備資金の融資について、銀行に伝えるべきポイントを押さえているかどうかで、融資の受けやすさが変わってきます。
それではこのあと、それぞれのケースを順番に見ていきましょう。
ケース別/設備資金の融資を受けるときに銀行に伝えるべきポイント
本社の新築・増改築
本社の新築・増改築をするために、設備資金の融資を受けるのであれば。まずは、本社の新築・増改築によるメリットを、銀行に伝えることです。
考えられるメリットはおもに2つ、「業務効率化」と「人材確保」になるでしょう。
本社の新築・増改築によって、より働きやすい職場環境ができることで、業務効率がどのように上がるのか、どのくらいあがるのか。できるだけ具体的に伝えられるようにしましょう。
加えて、職場環境がよくなれば、採用面での効果が期待できること、人材の定着率が上がることなどをアピールします。食堂やカフェスペースなど、福利厚生施設の設置があてはまるでしょう。
いっぽうで、本社の新築・増改築によるデメリットについても、伝える必要があります。デメリットの内容とていど加減、また、そのデメリットをいかに解消するかについてです。
では、本社の新築・増改築のデメリットとは? 一方的な支出となり、利益が増えない可能性があることです。
さきほどのメリットで挙げた「業務効率化」や「人材確保」による利益を、できるだけ具体化・数値化して伝えることで、デメリットに対する銀行の不安をやわらげましょう。
また、本社の新築・増改築に関わる支出については、可能な限りムダを省いたこと、けして華美や豪奢な内容ではないことも説明できるとよいでしょう。
工場の新築・増改築
前述の本社の新築・増改築と同じく、工場の新築・増改築にともなうメリットとデメリットを、銀行に伝えます。
まずは、メリットから。工場の新築・増改築によるメリットは、おもに「原価引き下げ」と「売上アップ」です。
たとえば、いままでは製造を「外注」していたところ、工場の新築によって「内製」に切り替えることで、原価を引き下げられるケースがあります。
また、既存の工場を増改築することで生産量を増やして、売上アップにつながるケースもあるでしょう。これらのメリットを、数値化して伝えられるようにしましょう。
これまでと比べて、どれだけ原価を引き下げることができるのか、どれだけ売上がアップするのか、です。
いっぽうで、デメリットは。工場の新築・増改築による「経費増加」と、「需要予測の不確かさ」になります。
メリットとして、原価を引き下げる効果はあるものの、工場の維持コストを吸収できるのか? 売上アップとは言うけれど、生産した分を売り切れるだけの需要があるのか?
このあたりもまた、「具体的な数値(維持コスト)」で説明すること、あるいは「客観的な統計データ(需要予測)」などを用意することがだいじになります。
倉庫の新築・増改築
倉庫の新築・増改築のメリットは、おもに2つ。「売り逃し減少」と「物流コストの削減」です。再三の繰り返しになりますが、これらのメリットについて、数字で伝えられるようにしましょう。
たとえば、いままでは倉庫がないことで、在庫を確保できず、どれくらいの売り逃しが発生していたのか。倉庫の新築によって、売り逃しはどれくらい減るのか。
また、倉庫の新築によって、これまでと比べて、どれくらい物流コストを抑えることができるのか。銀行は、このあたりのところを気にしています。
逆に、デメリットは「需要予測の不確かさ」と「経費増加」です。売り逃しが減るというけれど、倉庫を新築するほどの需要があるのか。倉庫の維持コストは吸収できるのか。
やはり、「客観的な統計データ(需要予測)」や「具体的な数値(維持コスト)」を用意して、銀行に説明をすることがだいじになります。
なお、銀行は設備投資について、「固定長期適合率」という指標に注目しているものです。固定長期適合率とは算式で言うと、「固定資産÷(純資産+固定負債)」になります。
固定資産を所有するにあたり、純資産(自己資本)や固定負債といった長期・安定的な資金でまかなえているかどうかの指標です。そういう意味では、固定長期適合率は低いほどよい、との見方になります。
どれくらい低ければよいのかは、業種によってだいぶ差があるところです。客観的な統計データとして、経営自己診断システムが役立ちます↓
自社と同業他社との固定長期適合率を比較しつつ、妥当な固定長期適合率の範囲内で設備投資していることを、銀行に説明できるとよいでしょう。
機械設備の購入・更新
機械設備の購入・更新のメリットは、おもに2つ。前述した工場の新築・増改築と同じく、「原価引き下げ」と「売上アップ」です。
たとえば、機械設備を購入することで、外注から内製に切り替えられる。それによって、原価を引き下げることができるケースがあります。
また、従来の機械設備よりも性能が高い機械設備を導入することで、生産量が上がり、売上アップにつながることもあるでしょう。
いずれにせよ、そのメリットを数値化して伝えることは、これまでのお話のとおりです。いっぽうで、機械設備の購入・更新のデメリットとは?
こちらも工場の新築・増改築と同じく、「経費増加」と「需要予測の不確かさ」になります。
これに関連して、機械設備の購入・更新について、「単独」の数値計画を作成して、銀行に提示するのがおすすめです。
つまり、購入・更新する機械設備による売上高から、その機械設備にかかるコストを差し引いて、利益がいくら残るのか? その利益で、今回借りようとしているおカネを返済できるのか?
これを計画としてまとめることで、銀行が抱く「経費増加」に対する不安を払拭しようというわけです。計画の書式については、こちらの記事を参考にどうぞ↓
また、「需要予測の不確かさ」については、RESAS(リーサス)を利用するのもおすすめです。地域別や産業別に、販売量や生産量の推移データを取得することができます↓
客観的な統計データとして、計画に添えることで説得力が高まるはずです。
新店舗の出店
新店舗の出店におけるメリットは、おもに2つ。「売上アップ」と「経営資源の合理化」です。
出店によって、あらたな地域・客層に、あらたな商品・サービスを提供することができます。結果として、売上アップが可能です。
また、複数の店舗があることで、店舗間で人材や商品・材料などの資源を共有することができます。人件費削減や、廃棄ロス削減につながるところです。
このあたりの効果を、具体的に数値で、銀行に伝えるようにしましょう。
これに対して、デメリットは2つ。前述した工場と機械設備と同じく、「需要予測の不確かさ」と「経費増加」になります。これらデメリットに対する銀行の不安をやわらげるためには、前述した数値計画を作成・提示するのが効果的です。
加えて、もうひとつ。新店舗の出店にともなう融資では、銀行から「赤字の補てん」を疑われることを覚えておきましょう。
つまり、銀行は「既存店舗の赤字による資金不足を補うために、新店舗の出店としておカネを借りようとしているのではないか?」を疑っています。
そこで、新店舗の数値計画に加えて、既存店舗の実績と計画も提示するようにしましょう。これにより、既存店舗が赤字ではないこと、今後も赤字の心配がないことを示せれば、銀行の疑いを払拭できます。
まとめ
会社が設備資金の融資を受けるときに、銀行に伝えるべきポイントについて、ケース別にお話をしていきます。融資を受けやすくすることができるように、押さえておきましょう。
- 本社の新築・増改築
- 工場の新築・増改築
- 倉庫の新築・増改築
- 機械設備の購入・更新
- 新店舗の出店