銀行が考える良い会社と、社長が考える良い会社とは違います。その違いがわからずにいると、会社は融資が受けにくくなってしまうので気をつけましょう。という、お話です。
良い会社といっても、いろいろある。
ひとくちに「良い会社」といっても、その考え方はひとつではありません。たとえば、銀行が考える良い会社と、いっぱんに、多くの社長が考える良い会社とには違いがあるものです。
この点で、融資を必要とする会社であれば、「銀行が考える良い会社とは?」を理解しておく必要があります。にもかかわらず、社長が考える良い会社に寄りすぎれば、融資が受けにくくなってしまうからです。
では、銀行が考える良い会社と、社長が考える良い会社の違いとは? おもなところでは、次のとおりです↓
- 借金がある会社と、借金がない会社
- 急ぎで借りない会社と、急ぎで借りられる会社
- 利益を出す会社と、利益を抑える会社
- 規模が小さな会社と、規模が大きな会社
- 預金が多い会社と、預金が少ない会社
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行が考える良い会社・社長が考える良い会社
借金がある会社と、借金がない会社
借金がないのが良い会社だ、と考えている社長がいます。ここで言う「借金」とは、銀行借入のこと。つまり、銀行借入がない、あるいは、できるだけ少ないのが良い会社だ、ということです。
いっぽうで銀行は、借金があるのが良い会社だと考えています。銀行はおカネを貸すのが商売であり、「借金がある=借金できる信用がある」という見方をしているからです。
事実、借金がない会社のなかには、「借りたくても借りられない会社」があります。決算書の内容が悪かったり(利益や純資産が少ない)、ブラック情報があったり、といった理由です。
なので銀行は、借金がある会社に対して、一定の信用を置いています。もちろん、「借りすぎ」はよくないわけですが、まったく借入がなかったり、借入が少なかったりするのも問題だということです。
そこで、実際にやりがちなこととして気をつけたいのが、「繰り上げ返済」になります。借金がないのが良い会社だと考えている社長ほど、やりがちな行為です。
結果、借金がなくなる・減ると、その分だけ信用も減ることは覚えておかなければいけません。それに、繰り上げ返済されると、銀行は利息収入が減ってしまいますから「迷惑行為」です。
うかつに繰り上げ返済をしないよう、気をつけましょう。
また、借金がないのが良い会社だと考えて、創業時に融資を受けない社長もいます。できるだけ自己資金でなんとかしようと考える社長です。
ところが、創業後しばらくは思いどおりに売上も増えず、資金繰りは厳しくなります。そのときになって融資を受けようとしても、信用(借入実績)がないことから融資は受けにくくなるものです。
銀行は、借金がない会社を、必ずしも良い会社だとは見ていません。
急ぎで借りない会社と、急ぎで借りられる会社
借金があるほうが良いとはいっても、急ぎで借りようとする会社を銀行は嫌います。急ぎで借りられる会社は良い会社だ、と考えている社長は気をつけましょう。
銀行は急ぎで借りようとする会社に対して、いくつかのイメージを持っています。まずは、「計画性のない会社だ」というイメージ。資金繰り計画が立てられず、おカネのやりくりがいきあたりばったり。当然、銀行からは嫌われます。
また、「なにかマズいことが起きている会社だ」というイメージもあるでしょう。売上減少や損失発生など、なにか問題が起きたことで資金繰りが悪化。だから、急ぎで借りようとしているのではないか。そんな会社に融資はしたくない、と銀行は考えます。
急ぎで借りられるに越したことはありませんが、急ぎで借りずに済むようにしましょう。向こう1年ていどの資金繰り予定表をつくって、計画的に前もって融資を受けることです。そういう会社は銀行からも好まれます。
利益を出す会社と、利益を抑える会社
もしかすると、じょうずに節税をできるのが良い会社だ、と考えている社長がいるかもしれません。たしかに、「じょうずに節税」であれば、そのとおりでしょう。
ですが、実際には、あまりうまくない節税をしている会社は少なくありません。はっきり言えば、節税とすら言えない行為を、節税だと勘違いしている会社があります。
たとえば、「税金を払うくらいなら、おカネを使って経費を増やせばいい」という考え方。節税としては間違いです。経費を増やすことで、税金は減りますが、それ以上におカネも減ります↓
というわけで、「じょうずに節税」とは本来、おカネを減らさずに税金を減らすことをいいます。
目先の税金を減らすために、やみくもに利益を抑えるのを良い会社だと、銀行が考えることはありません。銀行が考える良い会社は、利益を出す会社・利益を出せる会社です。
また、気づかないうちに利益が抑えられているケースもあります。売上至上主義に陥っている会社では、値引・割引で利益を削ってでも、売上を増やそうとするケースは増えるものです。
すると、売上は増えているのに、利益は増えない。むしろ、利益が減っている… 利益を返済原資と考える銀行からすれば、当然、好まれない会社だと言えます。
規模が小さな会社と、規模が大きな会社
規模が大きな会社が良い会社だ、と考えている社長がいます。それもひとつの考え方ではありますが、規模のなかみによっては、規模が小さいほうがいいと考えるのが銀行です。
さきほどもふれた売上至上主義について。とにかく売上を増やそうとする会社では、結果として、不良債権が増えることがあります。売上先の与信管理をおこたり、売りまくった挙げ句、売上代金を回収できなくなるケースです。
売上を増やせば、代金未回収のあいだは「売掛金」という資産(債権)が増えます。資産が増えれば、資産規模が大きくなりますから、良い会社だと思われるかもしれませんが。
そのなかみが、回収できない「不良債権」であれば、実質的に資産規模が大きいとは言えません。銀行は、決算書を実質で見ていることを理解しておきましょう。
また、固定資産についても注意が必要です。華美な本社家屋、オーバースペックな機械、豪華すぎる社長車など。これらによって、資産規模が大きくなっている会社はどうでしょう?
銀行は、「ムダ使い」という見方をします。ムダ使いをするくらいなら、固定資産はないほうがいい。そういう意味での資産規模は小さな会社のほうがいい、と考えます。
決算書に掲載されている、表面的な金額ばかりを見るのではなく、実質的な金額で見るようにしましょう。
預金が多い会社と、預金が少ない会社
大企業にあっては、「預金が多い=ムダが多い」との見方があります。おカネを遊ばせておくのではなく、どんどん投資に回してもうけを増やしましょう、ということです。
これと同じように考える中小企業の社長がいますが、大企業の論理を中小企業に持ち込むには危険があります。大企業が、おカネを投資に回せるのは、いつでも資金調達できるチカラがあるからです。
ところが、中小企業にそこまでのチカラはありません。不特定多数の人たちから出資をしてもらうのは困難ですし、銀行がいつでもすぐにおカネを貸してくれるわけでもありません。
にもかかわらず、預金が少ないようでは、いざというときに困ってしまうでしょう。だから、銀行は、預金が少ない会社よりも預金が多い会社を、良い会社だと考えています。
実際、預金が多いほうが、融資提案を受けやすくもなるものです。
また、預金をするなら、融資を受けていない銀行にあずけるほうがいい、というハナシがあります。つまり、融資を受けている銀行に対しては、預金は少ないほうがいい、と。
銀行からすると、これは逆です。融資をしている銀行は、じぶんのところの口座に預金があるほうが安心ですし、もうかります↓
ゆえに銀行は、預金が多い会社を、良い会社だと考えていることを覚えておきましょう。
まとめ
銀行が考える良い会社と、社長が考える良い会社とは違います。その違いがわからずにいると、会社は融資が受けにくくなってしまうので気をつけましょう。という、お話です。
- 借金がある会社と、借金がない会社
- 急ぎで借りない会社と、急ぎで借りられる会社
- 利益を出す会社と、利益を抑える会社
- 規模が小さな会社と、規模が大きな会社
- 預金が多い会社と、預金が少ない会社