融資を受けている銀行に対して、社長が怒りをぶつけるということもあるでしょう。ですが、銀行に怒りをぶつけることで、7つもの損をする可能性があります。という、お話です。
怒るのであれば、覚悟が必要。
融資を受けている銀行に対して、社長が怒りをぶつけるということもあるでしょう。
たとえば、銀行担当者が親身になってくれない、対応が遅い、お願いしたことを忘れている。あるいは、理不尽なことを言われたり、されたり、というのは見聞きするハナシです。
社長も人間、怒りをぶつけたくなることだってあります。が、基本的には、怒りをぶつけてもあまりよいことがありません。むしろ、マズいことになるケースもあるほどです。
したがって、よほど腹に据えかねるような場合を除いては、ガマンをすることも検討しましょう。それでも、怒りをぶつけるのであれば、これからお話をする「7つの損」を覚悟しておかなければいけません↓
- 担当者の足が遠のく
- 白黒決めるのは銀行
- ほかの銀行にも伝わる可能性がある
- 将来にわたって融資が受けにくくなる
- 融資条件が悪くなる
- 取引先との関係も悪くなる
- 結局、社長自身が後悔をする
これらの損を負ってまで、銀行に怒りをぶつけるべきかどうか。それではこのあと、7つの損を順番に見ていきましょう。
銀行に怒りをぶつける社長は7つもの損をする
1.担当者の足が遠のく
銀行担当者に対して、社長が怒りをぶつける場合。その担当者の足は遠のくでしょう。つまり、なかなか会社には来なくなってしまう。結果、情報提供や融資提案もなくなってしまいます。
「そんなこと言ったって、担当者も仕事なのだから来るだろう」と、考えるのであれば。どうやら、それは違うようです。ある銀行員の方いわく、「いつも小言ばかり言う社長の会社には、正直、行きたくなくなりますね」だそうです。
社長の小言(あるいは怒り)が、クレームのたぐいであれば、担当者はそれを上司に報告する必要があるでしょう。すると、銀行は「減点主義」の世界なので、クレームが減点対象になる可能性があります。
減点が重なれば、昇進にもひびきますから、担当者の足が遠のくのも当然です。銀行から情報提供を受けるにしても、融資を受けるにしても、担当者が窓口であることを忘れないようにしましょう。
2.白黒決めるのは銀行
じぶんは小言など言っていない。銀行のほうがあきらかに悪いから、それについて指摘をしているんだ! と、思われるかもしれません。たしかに、理屈としてはとおっています。
けれども、「銀行のほうが悪いかどうか」を決めるのは銀行だ、というのが現実です。
第三者から見れば、あきらかに銀行のほうに問題があるのにもかかわらず、銀行内部では、会社(社長)のほうに問題があるものとして、事実が書き換えられることがある。
という事例をわたし自身が見ていますし、ほかから見聞きもしています。
とくに、「言った言わない」は典型です。社長が「言った」と主張しても、銀行は「言ってない」の一点張り。よほど、強固な証拠がない限り、社長の主張はとおらない… ということがあります。
そう考えると、だいじなことは文書で伝えることも大切です↓
3.ほかの銀行にも伝わる可能性がある
あまりの怒りで、社長が激昂した。という、ケースもありえます。このようなおおやけの場に記載するのがはばかられるような言葉で、銀行を罵倒してしまうようなケースです。
この場合には、ちょっと怖いことが起きる可能性があります。それは、「どういうわけか、ほかの銀行にも、社長の激昂が伝わってしまう」ということです。
会社の評判・社長の評判は、銀行どうしの垣根を超えて伝わることもある。と、銀行員の方から聞いたことがあります。これは、「守秘義務」とはまた違った部分でのハナシです。
ではもしも、A銀行に対して激昂したのが、B銀行やC銀行に伝わってしまったら。B銀行やC銀行も、その会社・社長に対して「要注意」と考えることでしょう。
場合によっては、担当者の足がとおのくことも考えられます。そうなると、どの銀行からも融資が受けにくくなる可能性があるわけですから、一時の感情に任せた激昂だけは避けなければいけません。
4.将来にわたって融資が受けにくくなる
怒りをぶつけるにしても、激昂するにしても。ほとぼりが冷めればまた、元どおりになるだろう。と考えているのであれば、それは少々甘すぎるといってよいでしょう。
銀行は、「記録」に残しています。それも、こちらが考えている以上にです。「どうもD銀行からは融資が受けにくいなぁ」と思ったら、何年も前に、担当者と社長とでモメたことが原因だった… ということがあります。
当時の担当者はすでに異動、支店長もまた異動していて、モメたことを直接知っているような人はほぼいないはずなのにです。それでも、何年も前のことが原因になるのは、銀行内部にきちんと記録が残っているからにほかなりません。
こちらが忘れたとしても、銀行は忘れていない。ということは、よく覚えておきましょう。いちど怒りをぶつければ、将来にわたって融資が受けにくくなることもあります。
5.融資条件が悪くなる
銀行に怒りをぶつけることで起きるデメリットは、融資が受けにくくなることだけではありません。融資を受けられたとしても、融資条件(返済期間、金利、担保・保証など)が悪くなるというデメリットもあります。
銀行が融資をするか否かについて、会社の評価をするときに、決算書が重視されるのはよく知られているところです。ただ、そればかりではなく、ほかの「要素」も評価をしています。
そのひとつが、「経営者の資質」です。ここは、おもに銀行担当者の主観にはなりますが、社長の言動や性格などは、銀行から見られているものと考えておきましょう。
この点で、怒りをぶつけたり、激昂したりする社長は、「取引先や社員などに対してもそうなのではないか?」という見られかたをしてしまいます。となると、事業にも影響が出るでしょうから、融資をするのも心配だなぁ、となりかねません。一事が万事です。
6.取引先との関係も悪くなる
怒りをぶつけられた銀行が、嫌気をして融資を引き上げるということもありえます。すぐに貸し剥がしをするようなことはないにしても、新規融資を渋りながら回収を進める… というケースはあるものです。
こういったようすを見ている第三者として、信用調査会社があります。おもなところでは、帝国データバンクです。その帝国データバンクが調査をするときには、「借入先」をチェックしていることを覚えておきましょう。
具体的には、決算書に付随する「勘定科目内訳明細書」でチェックします。必ずしも見せなければいけないわけではありませんが、見せなければ、その部分での評価は上がりません。
では、見せた場合に、なにが問題になるかというと。いままで借入をしていた銀行の、借入残高が減少していること(最終的にはゼロになっていること)です。
これを見た帝国データバンクは、「なにか問題があって、融資が受けられなくなったのでは?」と考えます。帝国データバンクは、会社の規模に見合った借入残高や取引銀行数を評価するので、借入残高が減ったり、取引銀行数が減ると評価が下がる可能性があります。
すると、自社について調査依頼をかけた取引先などから「警戒される(取引解消や取引条件の悪化など)」ということにもなりかねません。影響が広く及ぶこともあるわけです。
7.結局、社長自身が後悔をする
ここまで、6つの損を確認してきました。これらが実際に、社長の身に及んだとしたらどうでしょう? おそらく、ほとんどの社長が後悔をするはずです。
あぁ、あのときガマンができていれば… と、考えることもあるのではないでしょうか。そういった「後悔」が、社長にとっては一番の損になるものと考えます。
そこで、じぶんのことは棚に上げて提言を申し上げると、「怒りは、いちど飲み込みましょう」ということです。
カッとなると、どうしても理性よりも感情が前に出ます。その感情をすぐに言葉にするのではなく、いちどは飲み込んでみる。まず、その場ではグッとこらえる。
そのうえで、ひと晩眠ったあと、それでもなお感情がおさまらないのであれば、言葉にして伝えることを考えます。ですが、多くの場合、ひと晩たつと怒りはおさまるものです。
そのときに、本記事でとりあげた7つの損を思い出してみましょう。そんなタイヘンなことになるのであれば、わざわざ怒りをぶつけるほどでもないか、とも考えられるはずです。
まとめ
融資を受けている銀行に対して、社長が怒りをぶつけるということもあるでしょう。ですが、銀行に怒りをぶつけることで、7つもの損をする可能性があります。
それらの損を理解して、よほど腹に据えかねるような場合を除いては、ガマンをすることも検討しましょう。中長期の視点で見れば、得になるはずです。
- 担当者の足が遠のく
- 白黒決めるのは銀行
- ほかの銀行にも伝わる可能性がある
- 将来にわたって融資が受けにくくなる
- 融資条件が悪くなる
- 取引先との関係も悪くなる
- 結局、社長自身が後悔をする