社長がふだんしている「資金繰り・資金調達」。それ、社長の「ほんとう」の仕事ではありませんよ。という、お話をしていきます。
そんなことはないっ! と思われるかもですが。
社長がふだんしている仕事として、「資金繰り・資金調達」が挙げられます。では、その資金繰り・資金調達は、社長にとって「ほんとう」の仕事ではありません、と言ったら。
もしかすると、「そんなことはないっ!」と思われる社長もいることでしょう。
が、それでもやはり、資金繰り・資金調達は、社長にとって「ほんとう」の仕事ではない。と、わたしは考えています。それなら、社長の「ほんとう」の仕事とはなんなのか?
また、社長が「ほんとう」の仕事に集中するために必要なことについて、このあとお話をしていきます↓
- 社長の「ほんとう」の仕事とは?
- まず、おカネを持つ
- そして、銀行対応の回数を減らす
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
社長の「ほんとう」の仕事とは?
冒頭、資金繰り・資金調達は、社長の「ほんとう」の仕事ではない、と言いました。ところが、現実には、資金繰り・資金調達に「奔走」している社長もいます。
ふだんから資金繰りが厳しく、資金調達をするための銀行対応に時間を奪われている。また、奪われているのは時間ばかりでもないでしょう。
あの銀行は融資をしてくれるだろうか、あの売上先は売上代金を期日までに払ってくれるだろうか。今月は、資金ショートせずに乗り越えられるだろうか… と、心までもが奪われていることはあるはずです。
それでもなんとか、資金繰りにめどをつけられた社長は安堵します。そこにあるのは、ある種の「達成感」です。いやぁ、よくやった。そう思われるかもしれません。
ですが、その達成感は「ほんもの」でしょうか?
厳しいことを言うようではありますが、資金繰りの苦労は「そもそも、しなくてもよい苦労」です。だとすれば、奪われた時間・心は「もったいない」と考えるべきでしょう。
では、社長が達成感をえるのにふさわしい仕事、つまり、社長にとって「ほんとう」の仕事とはなんなのか? 言うまでもないことですが、「経営」です。
経営は、社長(経営者)にしかできない仕事であり、まさに社長の仕事にほかなりません。経営とは、言い換えると、「会社のあすを考えて、きょう手を打つこと」だと言えます。
資金繰り・資金調達は経営か? 未来を見すえた設備投資にともなう資金調達は別として、目先の「おカネのやりくり」をするための資金繰り・資金調達を、経営とは呼べないでしょう。
おカネのやりくりとは、いうなれば、「過去のあと始末」にすぎないからです。その過去に、きちんとおカネを準備していれば、いまやりくりをする必要はありません。
ゆえに、資金繰りの苦労は「そもそも、しなくてもよい苦労」なのです。
というわけで、資金繰り・資金調達に時間や心を奪われている社長は、いかにして、いまよりも「経営」に集中するかを考えましょう。社長の代わりはいません。社長以外に、会社を経営してくれる人はいません。
経営者不在、社長不在の会社がどうなるかは… 火を見るよりも明らかです。
まず、おカネを持つ
とはいえ、どうしたら社長は経営に集中できるのか? 答えは、おカネを持つことです。それも、「借りてでもおカネを持つこと」です。ちなみに、ここで言う「借りる」の相手は、銀行になります。
理想を言えば、利益をあげておカネを増やすのがいちばんです。でも、それが難しいからこそ、資金繰りが厳しくなっている現実があるのでしょう。実際に、事業は山あり谷ありです。
それにもし、「1,000万円のおカネを増やそう」と考えた場合。税引前利益率5%の会社でも、3億円以上を売り上げる必要があります。中小企業にとっては、カンタンな数字ではありません。
そこで、「借りてでもおカネを持つ」という話につながります。これを聞いて、「いやいや、借りたら返さなければいけないし、利息もかかるでしょう」と、思われるかもしれません。
そのとおりです。
が、1,000万円を借りても、借金だけが増えるわけではありません。借入をすれば同時に、1,000万円のおカネも増えます。借りたおカネをムダ使いさえしなければ、借りたおカネを返すだけです。
また、利息と言っても、いまは低金利が続いています。会社の利益率に比べたら、金利のほうがだいぶ低くなるはずです。であるならば、借りたおカネを事業に使うことで、利益を伸ばすことができます。
いわゆる「レバレッジ効果(てこの原理)」です。これにより、自己資金だけで事業を続けるよりも、会社の成長速度を上げげることができます。
と、聞いて。「いやいや、そんなカンタンに利益率は上がらない…」と言われるかもしれませんが。その利益率を上げるためにこそ、社長が経営に集中する必要があります。
いままで、目先の資金繰りに時間や心を奪われて、経営に集中できないことがあったのであれば。それは、まだまだ利益率を上げる「余地」があるということです。
そのときは、借りてでもおカネを持つことで、「余地」を活かしましょう。利益率を上げることができれば、借りた分の利息を払っても、じゅうぶんに利益を増やせるものと考えます。
なお、銀行から融資を受けやすいタイミングは、「利益が出ているとき・おカネがあるとき」です。ところが、これとは逆のタイミングで融資を受けようとしている社長は少なくありません。
利益が出ているときこそ、おカネがあるときこそ、「会社のあす」を考えて資金調達に動きましょう。このように、あすを見すえた資金調達(≠あと始末の資金調達)は、社長の仕事だと言えます。
そして、銀行対応の回数を減らす
借りてでもおカネを持ちましょう、という話をしました。とはいえ、借りたあとには「返済」がはじまります。基本的には、「毎月分割返済」が多いことでしょう。
これにより、毎月返済が進むとどうなるか? 当然、手元のおカネは少なくなっていきます。すると、またもとの状態に逆もどりです。ゆえに、ふたたび銀行融資を受ける必要があります。
この点で、つど銀行融資を受けようとするのは、得策ではありません。銀行融資を受けるのにも時間がかかるから、社長が銀行対応に要する時間がかかるからです。
社長が銀行対応にかかわる回数が増えれば増えるほど、やっぱり、社長は経営に集中できる時間を失うことになります。ですから、銀行対応の回数をできるだけ減らすことを考えましょう。
では、どうするか? ずばり、1年にいちどだけのタイミングで、向こう1年分の資金調達をすませてしまうことです。
具体的には、決算書ができあがったとき(税務申告がおわったとき)に、銀行に決算報告をするタイミングで、向こう1年分の「融資提案を依頼」することになります。
ポイントは「融資提案を依頼」することです。「融資を依頼」するのではありません。つまり、「おカネを貸して」とは言わない。代わりに、「なにかよい提案があればお願いします」と言いましょう。
もちろん、銀行が「融資をしたい!」と考えなければ、融資提案を受けることはできません。けれども、銀行のほうから提案をしてもらえれば、融資は格段に受けやすくなります。
こちらから「おカネを貸して」と言うよりも。銀行のほうから「借りませんか」と言ってもらえるほうが借りやすいですよね。
そこで、銀行が提案をしやすくなるように、決算書のコピーとあわせて「向こう1年の資金繰り予定表」を銀行に提示しましょう。そのなかに、必要な借入金額を折り込み、借入をしてもきちんと返済できることを数字で示します。
口頭だけではなく、書面で伝えるところに、銀行は「計画性」と「誠意」を感じるものです。結果として、融資提案を引き出しやすくなります。資金繰り予定表のつくりかたについては、こちらの記事も参考にどうぞ↓
まとめ
社長がふだんしている「資金繰り・資金調達」。それ、社長の「ほんとう」の仕事ではありませんよ。という、お話をしてきました。
社長にとって「ほんとう」の仕事、いちばんに集中すべき仕事は「経営」です。というのは本来、言うまでもないことではありますが、現実はそうでもありません。
まずは、経営に集中するために必要なことについて、取り組んでみましょう。具体的には、おカネを持つこと。そして、銀行対応の回数を減らすことです。