決算書の「利息増加・金利上昇」がトレンドになる

決算書の「利息増加・金利上昇」がトレンドになる

世の中は依然として、低金利が続いています。ところが、これからの決算書は「利息増加・金利上昇」がトレンドになるかもしれない、というお話です。

目次

低金利でも利息が増える時代。

世の中は「低金利」が続いています。結果として、会社の決算書を見てみると…

  • 利息の金額はそれほど大きくない
  • 借入金に対する利息の割合も低い

といった傾向が見られました。が、これからは、その傾向も変わっていくものと考えます。つまり、「利息増加・金利上昇」がトレンドになる、ということです。

そうなれば、その分だけ利益は影響を受けますから、無視するわけにはいかないトレンドだとも言えるでしょう。ではなぜ、「利息増加・金利上昇」が起こるのか? おもな理由がこちらです↓

決算書の「利息増加・金利上昇」がトレンドになる理由
  • プロパー融資が増える
  • 資本性ローンが増える
  • オンライン融資やファクタリングが増える

それではこのあと、順番に確認をしていきましょう。

決算書の「利息増加・金利上昇」がトレンドになる理由

プロパー融資が増える

コロナ禍においては、売上不振による資金繰りの悪化から、銀行融資を利用する会社が増えました。なかでも増えたのが、信用保証協会の保証付き融資です。

基本的に、銀行は「業績が悪い・資金繰りが悪い会社」には融資をしません。言うまでもなく、貸しても返してもらえない可能性が高いからです。けれども、保証付き融資はその例外にあたります。

保証付き融資は、会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりをする融資です。したがって、銀行としては「返してもらえない可能性」の心配をせずに融資ができます。

というわけで、コロナ禍では「業績が悪い・資金繰りが悪い会社」に対する、保証付き融資が増加しました。ところが、保証付き融資には、会社ごとに「限度額」が定められています。

ゼロゼロ融資の無利子期間がおわると…

コロナ禍における保証付き融資である、いわゆる「ゼロゼロ融資」は、当初3年間は実質無利子でした。その後は、利息の支払いがはじまります。融資金額が大きいうえに、据置期間もあって返済も進んでいないと、その利息は意外と大きなものです。

その限度額いっぱいまで借りている、という会社はけして少なくないはずです。すると、今後の融資は「プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)」しかありません。

プロパー融資は、銀行としてはリスクが高い融資ですから、金利を高くせざるを得ない面があります。ゆえに、プロパー融資を利用する会社の決算書では「利息増加・金利上昇」が起こるのです。

もっとも、「業績が悪い・資金繰りが悪い会社」が、そもそもプロパー融資を受けられるのか? という疑問はあります。ただ、ここは「以前よりは見込みがある」といえるところです。

2019年末に金融検査マニュアルが廃止されて以降、各銀行の融資審査は少しずつ「独自性」と「柔軟性」を持つようになりました。

業績が悪いから貸さない、資金繰りが悪いから貸さない、という杓子定規な判断ばかりではなく。金利を高くすることで、一定のリスクを負ってでも融資をしようという銀行もあります。

もちろん、そういった銀行であっても、ただただ融資をするわけではありませんから。いま業績が悪い・資金繰りが悪いとしても、「将来性があるかどうか」で融資の可否判断をすることになります。

そのうえで、「将来性あり」であれば、金利は高くても融資はするということはあるわけです。

はじめてプロパー融資を受ける場合には、「金利が高すぎる」とおどろいてしまうかもしれませんが。プロパー融資とは、そういうものです。また、借入実績・返済実績を積み重ねることで、少しずつ引き下げていけるものでもあります。

資本性ローンが増える

コロナ以降、「資本性ローン」という言葉を、よく見聞きするようになりました。「いや、聞いたことがない」という社長は、ぜひここで覚えておきましょう。

資本性ローンとは、なんなのか? 決算書上は「借入金」、でも、銀行の評価上は「自己資本(純資産)」と見なされるのが「資本性ローン」です。それが、銀行融資にどう影響をするのか?

コロナ禍で業績が悪化して、「自己資本が過小」あるいは「債務超過(資産<負債)」に陥っている会社は、資本性ローンを活用することで、借入しながらも自己資本を増やすことができます。

自己資本が増えれば、銀行からの評価は上がりますから、さらに銀行融資が受けやすくなる、というのが資本性ローンの効果です。

そんな資本性ローンの代表格である、日本政策金融公庫の「資本性劣後ローン(新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付)」は、2020年8月の制度開始以降、利用が増え続けています。

と、良いことずくめに見える資本性ローンですが。注意すべきことがあります。金利の高さ、です。

具体的に、さきほどの「資本性劣後ローン」で見てみると。金利は、業績連動型。会社の「税引後当期純利益額が0円以上か0円未満か」で金利が異なるしくみです。

2022年2月3日現在、税引後利益が0円未満の場合の金利は0.50%、税引後利益が0円以上の場合の金利は、返済期間に応じて2.60%~2.95%に定められています。

銀行融資の金利水準としては、高いほうだと言えるでしょう。したがって、資本性ローンを利用する会社の決算書では、「利息増加・金利上昇」が起きることになります。

なお、資本性ローンについては、金融庁が「定義」を定めています。そのなかのひとつが、「配当可能利益に応じた利益」です。これを見てわかるとおり、資本性ローンとは、融資というよりも出資(資本金)に近いものであり、利息ではなく配当というのが適切なイメージだと言えます。

配当と考えると、さきほどの金利は高すぎるものではないでしょう。

コロナによって決算書が傷ついた会社にとって、資本性ローンの利用は選択肢のひとつです。利用のハードルはけして低くはありませんが、選択肢から漏れることがないように覚えておきましょう。

オンライン融資やファクタリングが増える

最近の傾向として、オンライン融資やファクタリングの「案内(広告)」が増えている、と感じています。

このうち、オンライン融資とは。その名のとおり、「申し込みから審査・入金までオンライン(インターネット)を利用して行う融資」のことです。

銀行口座の取引履歴、会計データ、企業間の決済情報、ソーシャル情報(インターネット上の口コミ)などの膨大な情報を「 AI( 人工知能)」によって分析するところに特徴があります。

ゆえに、審査の手間が小さく、審査が速いことから、「すぐにおカネを借りたい会社」には魅力的な融資です。

いっぽうで、従来の銀行融資に比べると、融資期間は短期、融資金額は少額、金利は高い、という特徴もあります。決算書の「利息増加・金利上昇」につながるところです。

ひいては、資金繰りの悪化にもつながりますから、オンライン融資の「常時利用」は避ける。緊急時のみの利用と位置づけるというのが、おすすめの利用法になります。

これに対して、ファクタリングとは。ひとことで言うと「売掛金(売上債権)の売却」です。自社の売掛金を、入金期日前にファクタリング会社に売却することで、早期に現金化することができます。

このファクタリングについて、見慣れないサービス名称を付して、あたかも「あたらしい資金調達方法」かのように案内されていることがしばしば。案内の内容をよくよく見てみると、「要するにファクタリングじゃんかっ!」ということなのですが。

それはそれとして、売掛金を「タダ(無料)」で現金化してくれるわけではなく、ファクタリング会社に「手数料」の支払いが必要になります。

厳密には、「利息」ではなく「手数料」なのですが、意味合いとしては利息のようなものでしょう。この手数料が、銀行融資の利息に比べると高額です。

ファクタリングには、大きく「二社間ファクタリング」と「三者間ファクタリング」とがあります。より手数料が高額な「二社間ファクタリング」では、一般的に手数料相場が「10〜30%」くらいです。

最近では、より低額なサービスも出てきましたが、それでも銀行融資に比べると、高額であることに変わりありません。ファクタリングの手数料は「1回あたり」ですから、年利換算するとタイヘンな金利に相当します。

オンライン融資と同じく、常時利用は避けるべき資金調達方法だと考えておくのがよいでしょう。

まとめ

世の中は依然として、低金利が続いています。ところが、これからの決算書は「利息増加・金利上昇」がトレンドになるかもしれない、というお話をしてきました。

決算書に「利息増加・金利上昇」が見られるのであれば、その理由を確認するようにしましょう。受け入れられる理由もあれば、受け入れるべきではない理由もあります。後者については、本文の対応を参考に、改善を進めてくことが大切です。

決算書の「利息増加・金利上昇」がトレンドになる

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