世の中には、いろいろな種類のビジネスがありますが。モノを仕入れて売るビジネスをしている社長に対して、銀行が聞きたいことについてまとめてみます。
世の中には、いろいろなビジネスがある。
世の中には、いろいろな種類の「ビジネス(商売)」がありますが。なにか「モノ」を仕入れて売る、というビジネス。いわゆる「小売」や「卸売」といったビジネスをしている会社について。
融資を受けようとしたときに、銀行が、その会社の社長に「聞きたい」と考えているであろうことをまとめてみます。おもなところで言うと、次のとおりです↓
- 主力商品は? その理由は?
- 仕入先・仕入ルートの特徴は?
- 在庫はあるか? 在庫回転期間は?
- 主要売上先は? 売上先の件数は?
- 今後の売上見込みは?
これらを聞かれたときに、社長がスムーズに回答できれば、銀行からの融資は受けやすくなります。また、聞かれずとも積極的に伝えることが、融資を引き出すきっかけにもなるでしょう。
というわけで、このあと順番にくわしく確認をしていきます。
モノを仕入れて売るビジネスをしている社長に対して銀行が聞きたいこと
主力商品は? その理由は?
モノを売る、と言っても。いろいろなモノがありますから、まずは、「なにを売るのか」を知りたい、と銀行は考えています。なかでも、「主力商品はなんなのか?」です。
この点で、その商品の「仕様」や「特徴」はもちろんとして、「価格(単価)」についても銀行に説明するようにしましょう。似たような商品だとしても、安いモノもあれば高いモノもあります。
そのうえで、「薄利多売」のビジネスなのか、逆に「厚利少売」のビジネスなのかをあきらかにすることも大切です。ちなみに、資本力が乏しい中小企業にとって、薄利多売は不向きだと言えます。
したがって、基本的には「いかに利益率(売上総利益率)を高めることができるか」が、商売の良し悪しを左右することを理解しておきましょう。銀行もまた、そのような見方をしているものです。
加えて、「なぜ、その商品を売るのか」という「理由」についても、銀行に伝えるべきことになります。主力商品はもちろんのこと、ラインナップに挙げている商品をふまえて、それらの商品を取り扱う理由はなんなのか。
商品に対する社会のニーズについて、あるいは、会社・事業をはじめたきっかけに話が及ぶこともあるでしょう。気をつけたいのは、取扱商品数が多いケースです。
品揃えを良くするため、との理由はありえますが。ほとんど売れていない商品を多数取り扱っている。結果、在庫が多くなっているケースがあります。銀行としては、懸念材料です。
仕入先・仕入ルートの特徴は?
言うまでもありませんが、仕入に「強み」がある会社は、同じモノを売るにしても優位に立てます。より安価に仕入れることができるとか、より品質の良いモノを仕入れることができるとか。
ほかの会社では扱うことができない商品の仕入ルートを持っている、というケースもあるでしょう。そういった仕入の強みは、売上先に対してだけではなく、銀行にもアピールをしたいところです。
また、各仕入先との取引歴や、取引量(取引金額)などは、銀行が気にするポイントになります。取引歴が長い仕入先や、取引量が大きい仕入先があれば、今後も安定的な仕入をイメージすることができるからです。
そのいっぽうで、取引歴が長いがゆえに「取引価格(単価)」が硬直しているケースは少なくありません。相応の価格交渉ができていない、というケースです。これについては、取引価格の推移を銀行に説明できるとよいでしょう。
また、取引量(取引金額)が、特定の仕入先にかたよっている場合には、仕入先の倒産による影響を銀行は心配するものです。仕入先の状況についても、情報提供できるとよいでしょう。
信用調査会社(帝国データバンクや東京商工リサーチなど)を利用して、「仕入先の状況を定期的に確認している」といった話ができると、銀行からは「リスク管理ができる会社」として評価されるはずです。
在庫はあるか? 在庫回転期間は?
モノを仕入れて売る以上、在庫の問題がついてまわります。不良在庫が増えれば、財務状況は悪くなるため、銀行は在庫を「とても警戒している」ことは覚えておきましょう。
もっと言えば、架空在庫による粉飾決算もありますから。自社にとっての「適正な在庫量」はどれくらいなのかを、あきらかにすることも重要です。
適正な在庫量に対する「目安」を持っている会社と、持っていない会社とでは、銀行からの信用度はまるで変わります。目安がある会社は「在庫管理の意識が高い」との見方であり、逆に、目安がない会社は「在庫管理がずさんかも」との見方です。
具体的な目安として、「在庫回転期間(在庫金額÷平均月商)」の指標を利用するとよいでしょう。銀行も必ずチェックをしている指標です。自社にとって、在庫回転期間がどのくらいが適正な在庫量と言えるのか。目安を決めておき、銀行にも伝えるのがおすすめです。
なお、モノを仕入れて売る商売でも、在庫を持たないケースがあります。いわゆる「消化仕入(売上仕入)」のケースです。この場合には、「そもそも在庫がない」ということを銀行に伝えるようにしましょう。在庫リスクがないのは、ひとつの強みにもなるところです。
主要売上先は? 売上先の件数は?
これまた言うまでもありませんが、「売上先」はビジネスをするうえで、重要な要素のひとつです。ゆえに、銀行も注目をしていますから、きちんと情報提供をしていきましょう。
まずは、主要売上先について。このとき、その売上先が「エンドユーザー(最終消費者)か否か」もあわせて伝えることが大切です。同じモノを売るにしても、相手がエンドユーザーのケースもあれば、そうではないケースもあります。
いずれであるかによって、ビジネスモデルは大きく異なりますから、銀行も確認をすべきところです。が、決算書を眺めているだけではわからないことであり、銀行もよくわかっていないことが少なくありません。
商流図を描くなどして、銀行に自社の商売を理解してもらうようにしましょう↓
また、売上先の「件数」もやはり、ビジネス上の重要な要素になります。件数が多いから良い、少ないから良いというわけではなくて、どちらにも一長一短はあるものです。ゆえに、どちらのタイプかを銀行に知ってもらうことが大切になります。
この点で、売上先リストを提示するのがおすすめです。リストには、相手先名称、住所、取引歴、取引量(平均的な取引金額)、入金サイト、与信評価などが記載されているとベストです。
今後の売上見込みは?
どんなビジネスであってもそうなのですが、銀行は「今後の売上見込み」を気にしています。貸したおカネを返せるだけのチカラがあるかどうか、に関わるからです。
これに加えて、モノを仕入れて売るビジネスの場合、銀行が「今後の売上見込み」を気にする理由があります。それは、「融資金額を増やせる可能性」です。
売るためには、先に仕入が必要ですから、仕入れるためのおカネが必要になります。そして、売上見込みが大きいほど、たくさんの仕入が必要であり、たくさんのおカネが必要になります。
また、売上が増えれば、売掛金や在庫が増えるものです。売掛金とは、売上代金の未回収(ツケ)であり、入金されるまでは資金繰りを悪くします。在庫もまた、売れるまではおカネになりませんから、資金繰りを悪くする一因です。
したがって、モノを仕入れて売る商売では、売上に先立っておカネの手当てをしなければいけません。その手段が、銀行融資になります。
そこで、今後の売上見込みが大きいのであれば、銀行としては融資のチャンスです。ただし、見込み違いというのでは困りますから、見込みの「確実性」を示すことがだいじになります。
具体的には、過去の売上推移や注文書のコピー、商談内容が記された書類など。なにかしら、売上見込みの裏付けとなる資料を、銀行に提示するようにしましょう。銀行からの融資提案を受けやすくなります。
まとめ
世の中には、いろいろな種類のビジネスがあります。そのなかから、モノを仕入れて売るビジネスをしている会社を取りあげてみました。銀行が、社長に聞きたいと考えていることを理解して、積極的に伝えられるようにしておきましょう。
- 主力商品は? その理由は?
- 仕入先・仕入ルートの特徴は?
- 在庫はあるか? 在庫回転期間は?
- 主要売上先は? 売上先の件数は?
- 今後の売上見込みは?