飲食・理美容業は現金商売だから運転資金の融資は受けられないのか?

飲食・理美容業は現金商売だから運転資金の融資は受けられないのか?

「飲食業や理美容業は現金商売だから、運転資金は必要ない」との話がありますが。それは、ほんとうなのか? 運転資金の融資を受ける方法はないのか? について、お話をしていきます。

目次

飲食・理美容業に、運転資金は必要ない。

会社が銀行から融資を受ける場合には、「資金使途」が必要です。資金使途とは、平たく言えば「借りたおカネの使いみち」のこと。その資金使途は大きく2つ、「設備資金」と「運転資金」とに分かれます。

このうち、設備資金とは「設備投資をするためのおカネ」であり、運転資金とは「設備資金以外のためのおカネ」です。よって、設備投資をするのでなければ、銀行から受ける融資の資金使途は「運転資金」となります。

その運転資金について言われているのが、「飲食業や理美容業は現金商売だから、運転資金は必要ない」との話です。これがどういうことかは後述するとして、運転資金が必要ないということは、運転資金の融資が受けられないということを意味しています。

それは、ほんとうなのか? 運転資金の融資を受ける方法はないのか? このあと確認をしていきましょう。話の流れは、次のとおりです↓

このあとの話の流れ
  • 現金商売だと運転資金の融資が受けられない理由
  • 飲食・理美容業でも必要な運転資金がある
  • 設備投資とあわせて運転資金を借りる
  • オンライン融資を利用する

それでは、順番にお話をしていきます。

現金商売だと運転資金の融資が受けられない理由

銀行が考える「運転資金」とは、算式で言うと次のとおりです↓

売掛金(売上代金の未入金) + 棚卸資産(在庫) ー 買掛金(仕入代金の未払)

これを「経常運転資金(正常運転資金)」と呼びます。

売掛金や棚卸資産は、おカネになるのを待っている状態であり、それらの金額が大きいほど、そのあいだをしのぐためにおカネが必要になる。逆に、買掛金はおカネの支払いを待ってもらっている状態のため、「売掛金+棚卸資産」からはマイナスをします。

こうして計算された「運転資金」の金額を、銀行は融資をするときの目安にしているのです。

が、飲食・理美容業においては、お客さまから売上代金をすぐに現金で受け取るとすれば、売掛金がありません。棚卸資産も、ほかの業種に比べると少ないものです。これを前述の算式にあてはめると、「運転資金はほとんどない(あるいはマイナス)」ということになります。

これが、「飲食・理美容業の会社は、運転資金の融資が受けられない・受けにくい」と言われる理由です。

飲食・理美容業でも必要な運転資金がある

それなら、飲食・理美容業の会社は、ぜったいに運転資金の融資が受けられないのか? といえば。そういうわけでもありません。飲食・理美容業であっても、多からず、売掛金や棚卸資産は存在するからです。

最近では、現金以外にも、電子マネーやクレジットカードで決済できるお店が増えています。このうち、とくにクレジットカードについては、利用日から入金日まであるていの時間がかかるケースが多く、「売掛金」として運転資金が必要です。

また、飲食業であれば、食材や飲料の在庫(棚卸資産)もあるでしょう。食材は日持ちしないのであまりないにしても、飲料はそこそこある。ワインをはじめ、比較的金額も大きなお酒を在庫に持つお店はあるものです。

理美容業であっても、シャンプーやドライヤーなどのヘアケア商品を在庫に持つお店もあります。そういった飲食・理美容業であれば、必要な運転資金はあるということです。

とはいえ、銀行には「飲食・理美容業に運転資金は必要ない」との一般的な見方もありますから。一般的ではないことを示すために、資料の作成や説明をするようにしましょう。

資料としては、毎月の売上高に占めるクレジットカードの割合や金額の推移表(1年ていど)、毎月の在庫の入出庫・残高の推移表などがあるとよいでしょう。それらの資料をもとに、銀行に対して、運転資金の必要性を説明することが大切です。口頭だけでは伝わりにくいので。

また、運転資金の融資を受けられそうであれば、あわせて「手元資金」の融資についても依頼をしてみましょう。手元資金とは、文字どおり、手元に置いておくためのおカネです。

最近では、新型コロナがありました。事業を続けていれば、不測の事態によって売上が落ち込み、急におカネが必要になることはあります。そういったときに、当座をしのぐためのおカネが会社には必要です。

銀行もそこはわかっていますから、運転資金とあわせて「プラスアルファ」のおカネを、手元資金として融資してくれることがあります。業績がよいときが、手元資金の融資を受けやすいタイミングであることも覚えておきましょう。

設備投資とあわせて運転資金を借りる

飲食・理美容業では、設備投資をする機会が少なくありません。飲食業であれば、厨房設備やテーブル・椅子など。理美容業であれば、シャンプー台やカット椅子、パーマ用機器など。新規購入のほかに、時間がたてば更新も必要です。

また、新店舗の出店も、飲食・理美容業では設備投資にあたります。そういったときには、あわせて運転資金を借りるチャンスです。あたらしい設備を入れたからといって、すぐに売上に結びつくとは限りません。そのあいだをしのぐためのおカネとして、あるていどの運転資金が必要だとの考え方があります。

また、あらたに設備投資をすることで、あらたに「費用」が増えるケースもあるでしょう。調理師を増やす、理美容師を増やすとか、設備のランニングコストとか。そういった費用も、運転資金にあたります。

設備投資の融資を受けるときには、設備投資計画書をつくって、必要なおカネの内容・金額を、銀行に説明できるようにしましょう。設備投資計画書について、書式などくわしくはこちらの記事もどうぞ↓

なお、業績が悪いときには、設備資金の融資を受けにくくなります。設備資金として借りたおカネを赤字補てんに使われてしまったり、赤字で返済ができなくなる可能性を、銀行が心配するからです。

したがって、設備投資に適したタイミングは「業績がよいとき」であり、少なくとも「赤字ではないとき」であることを理解しておきましょう。

オンライン融資を利用する

最近では、おカネを借りる方法のひとつに「オンライン融資」があります。オンライン融資とは、「申し込みから審査・入金までオンライン(インターネット)を利用して行う融資」のことです。

銀行口座の取引履歴、会計データ、企業間の決済情報、ソーシャル情報(インターネット上の口コミ)などの膨大な情報を「 AI( 人工知能)」によって分析するところに特徴があります。

従来の銀行融資のように、「決算書」や「試算表」といった書類を必要とせず、運転資金に対する考え方も柔軟です。前述したような算式によって計算をしているわけではなく、会社全体の返済能力を見ていることから、「飲食・理美容業であっても運転資金の融資が受けやすい(銀行融資に比べて)」と言ってよいでしょう。

オンライン融資は、「金利が高い、返済期間が短い」といったデメリットがあるため、多用をおすすめするものではありません。ですが、そもそも運転資金の融資が受けにくい飲食・理美容業にあっては、困ったときの選択肢として覚えておくのがよいでしょう。

オンライン融資を受けるには、一定期間のあいだ、特定の会計ソフトを使っているとか、特定の銀行口座で取引をしているといった条件を満たす必要があります。融資を受けたいからといって、そのときすぐに申込みできるものではありません。

オンライン融資の利用を検討するのであれば、あらかじめ調べておくようにしましょう。たとえば、アルトア(弥生会計)、freee資金調達(freee)、dayta(住信SBIネット銀行)などが挙げられます。

まとめ

「飲食業や理美容業は現金商売だから、運転資金は必要ない」との話がありますが。それは、ほんとうなのか? 運転資金の融資を受ける方法はないのか? について、お話をしてきました。

運転資金の融資を受けにくいのはたしかですが、まったく受けられないわけではありません。本記事を参考に、融資を受けられるタイミング・方法を検討してみましょう。

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