会社が銀行から設備資金の融資を受けるときの注意点をまとめます。融資の受けやすさにかかわるところですから、もれなく押さえておきましょう。
設備資金とは設備投資をするためのおカネ。
会社が銀行から融資を受けるときには、資金使途(=おカネの使いみち)が必要になります。銀行は、使いみちのわからないおカネを貸すわけにはいかないからです。
その資金使途は、大きく2つ、「設備資金」と「運転資金」とに分かれます。設備資金は「設備投資をするために使うおカネ」であり、運転資金は「設備投資以外に使うおカネ(仕入代金や経費の支払い)」です。
では、このうちの設備資金について。会社が銀行から融資を受けるときの注意点をまとめてみます。具体的にはこちらです↓
- 利益で返済できるのか?
- 運転資金に回らないか?
これらの注意点について、このあとくわしく確認していきましょう。
銀行から設備資金の融資を受けるときの注意点
利益で返済できるのか?
設備資金の融資を受けるときの注意点、ひとつめは「利益で返済できるのか?」です。
耐用年数以内に返済できるか
設備資金の融資における「返済原資」は、利益です。設備投資によって生み出される利益によって、借りたおカネを返済することになります。
たとえば、1,000万円の機械装置を銀行から借りたおカネで購入するとして。この機械装置によって、毎年あらたに 100万円の利益が見込めるとすれば、返済にかかる期間は 10年です(1,000万円 ÷ 100万円)。
ところが、もし、機械装置が使える期間(耐用年数、と呼びます)が 10年未満であった場合、さいごまで返済をすることができません。
たとえば、耐用年数が8年とすると、そのあいだの利益は 800万円です(100万円 × 8年)。機械装置をそれ以上使えないのだとすれば、あと 200万円は返済することができません(1,000万円ー800万円)。
ゆえに銀行は、設備資金の融資を検討する際、「設備投資による利益で、耐用年数以内に返済できるのか?」を見ています。
そこで会社は、「設備投資計画」を提示することが大切です。その設備投資による利益で、借りたおカネを返済できるのかを、計画書として「数字」でまとめます↓
設備投資の金額が大きいほど、設備資金の融資金額が大きいほど、銀行は慎重になるものです。会社は、銀行への説明を「口頭」で済まそうとするのではなく、「文書(計画書)」にまとめることで、融資の実行可能性を高めるられるものと考えておきましょう。
足りなければ自己資金も
ではもし、今回の設備投資による利益では、耐用年数以内に返済ができないときにはどうするか? 設備投資の金額を抑えるというのは、ひとつの方法です。
いっぽうで、設備投資の金額はそのままに、「自己資金+銀行融資」で対応する方法もあります。さきほどの例を思い出してみましょう。耐用年数8年、1,000万円の機械装置を購入するとして。毎年の利益が 100万円であれば、200万円は返済することができない、という例でした。
この場合、返済に足りない 200万円については自己資金で、残りの 800万円は銀行融資で、と考えることができます。これを設備投資計画に織り込んで、銀行に説明するとよいでしょう。
ちなみに、ここで言う「耐用年数」とは、基本的には「法定耐用年数」と呼ばれるものになります。設備の種類ごとに、税法で定められている耐用年数です。
法定耐用年数はインターネットでも調べられるので、まずは、設備の耐用年数を調べたうえで、その耐用年数以内に返済できるかを検討してみましょう。
運転資金に回らないか?
設備資金の融資を受けるにあたって、もうひとつの注意点は「運転資金に回らないか?」です。
資金使途違反
世の中には、「設備投資をする」とウソをついて、実は、違うことにおカネを使う会社があります。いわゆる、資金使途違反です。
なお、実際の設備投資額よりも多く融資を受けて、残りを別のことに使ってしまうのも、資金使途違反にあたります。なので、もし、当初の金額よりも安く購入できたような場合には、すぐに銀行へ相談しましょう。
なにもいわずに黙っていると、資金使途違反と見られる可能性があります(おカネを使っていなくても)。資金使途違反になると、一括返済を求められたり、以降の融資が受けられなくなったり、大きなペナルティをこうむるのが問題です。
会社は、資金使途違反をしてはいけませんし、疑われることがないようにも気をつけましょう。
この点で、設備資金の融資を受けるのであれば、あわせて運転資金の融資も受けることをおすすめします。設備投資をすれば、その投資の効果が出るまでにコストがかかることはあるものです。
たとえば、機械稼働にかかる人件費・光熱費、材料仕入など。こういったものは、設備投資にともなう運転資金として、融資を受けておくとよいでしょう。
そういったコストを自己資金でまかなうとなると、その分だけ資金繰りは厳しくなってしまいます。「だから、実際の設備投資額よりも多く、設備資金の融資を受けよう」と考える社長もいるようですが。さきほど話をしたとおり、資金使途違反になってしまいます。
設備資金と運転資金とは、きちんと分けて考えるようにしましょう。
赤字補てん
会社が赤字の場合、銀行融資が受けづらくなります。いうまでもなく、返済原資である「利益」がないからです。
赤字になると資金繰りが悪化します。でも、融資が受けられない… では、どうするか? 設備資金として融資を受けて、運転資金に回そうとする社長がいます。いわゆる、赤字補てんです。
実際に、増産対応のための設備投資のためとか、新店舗出店のための設備投資のためとか、もっともらしい理由で融資を受けて、赤字補てんに回そうとするケースがあります。
銀行は、そのようなケースをいくつも見ているため、「そもそも赤字の会社」に対する設備資金の融資を警戒しているものです。つまり、赤字の会社は、設備資金の融資が受けにくいということになります。
したがって、設備資金の融資を受けて設備投資をしたいなら、「会社が黒字のうち」がベストです。ところが、黒字のときには資金繰りも順調であることから、融資を受けずに自己資金で設備投資をすることが少なくありません。
その結果、のちのち赤字になったときには、手元資金が足りなくなる。銀行に融資を依頼しても、赤字なので融資が受けにくい・受けられない… とうことが起こりやすくなります。
設備投資をするなら、黒字のうちに。自己資金ではなく銀行融資を受けて、手元資金を確保しておくことを考えましょう。
まとめ
会社が銀行から設備資金の融資を受けるときの注意点をまとめました。融資の受けやすさにかかわるところですから、もれなく押さえておきましょう。
設備資金はいっぱんに金額が大きく、運転資金に比べて融資を受けるにも難易度が高い、という一面があります。会社の成長に欠かすことができない設備投資。融資を受けられずに、設備投資ができなかった… という事態は避けなければいけません。
- 利益で返済できるのか?
- 運転資金に回らないか?