銀行からおカネを借りるのであれば、長期で借りたほうがいいのかというと。必ずしもそうではありません。なぜなら、短期で借入しないと資金繰りが悪化することもあるからです。
長期で借りたほうがいい。
会社の銀行融資について、「おカネを借りるのであれば、長期(の返済)で借りたほうがいい」と考えている社長がいます。半分は正解で、半分は不正解です。
長期で借りることを優先するあまり、短期の借入を毛嫌いし、せっかくの融資を見逃している可能性があります。つまり、銀行から短期で借り入れしないと、資金繰りが悪化する可能性があるのです。
では、会社が考えるべき短期の借入とは? 具体的には次のとおりです↓
- 賞与資金・納税資金の融資
- 短期継続融資(当座貸越・手形貸付)
- 銀行からの融資セールス
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行から短期で借入しないと資金繰りが悪化する
賞与資金・納税資金の融資
銀行から融資を受けるにあたって、だいじなものといえば「資金使途」。つまり、借りたおカネの使いみちはなんなのか? これが不明瞭だと、銀行はおカネを貸してくれません。
この点で、賞与を支払うためのおカネ(賞与資金)や、納税するためのおカネ(納税資金)は、銀行からおカネを借りられる資金使途に該当します。
賞与は夏と冬の年2回で支払われることが多く、賞与資金の融資の返済期間は「6ヶ月」です。納税(法人税)は年2回であることから(予定申告分と確定申告分)、納税資金の融資の返済期間もまた「6ヶ月」になります。
これを聞いて、「そんな短期で借りても、すぐに返さなければいけないじゃないか」とおもわれるかもしれませんが。それでも、資金繰りに与える影響は小さくありません。
もし、300万円の納税があるとして。融資を受けずに納税すれば、当然、手元のおカネが 300万円目減りします。いっぽうで、納税資金の融資を受ければ、300万円の税金を6ヶ月で分割払いしているのと同じです。
納税にしても、賞与にしても金額が大きいほど、また、手元のおカネに不安がある会社ほど、融資を利用したほうがよいことがわかるでしょう。
ちなみに、賞与資金や納税資金は、比較的借りやすい融資だといえます。前述のとおり、短期であることから銀行にとっては回収不能リスクが小さく、資金使途が明確なので銀行も貸しやすいからです。
借りやすい・貸しやすいということは、「プロパー融資」を受けるチャンスでもあります。プロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資です。保証がない分、通常は借りにくいプロパー融資ではありますが、賞与資金や納税資金についてはチャンスがあります。
銀行に融資を依頼するときには、ぜひ、「プロパー融資でお願いします」と伝えてみましょう。いままでプロパー融資を受けたことがない会社であれば、これをきっかけに、以降の融資(返済期間が長期の融資)についても、プロパー融資を受けられるようになるかもしれません。
銀行融資は「実績」が大切です。まずは、「小さな実績(少額・短期の融資)」からはじめて、少しずつ大きな実績を狙っていくのがよいでしょう。
短期継続融資(当座貸越・手形貸付)
いわゆる「経常運転資金」の融資として、短期での借入がおすすめです。そもそも経常運転資金とは、算式でいうと「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」をいいます。
端的にいえば、経常運転資金分のおカネがないと、会社の資金繰りは回らない。とはいえ、自己資金で準備するのもタイヘンだから、銀行融資を受けよう。というのは、財務のセオリーです↓
その経常運転資金分のおカネを、長期の分割返済で借りている会社が少なくありません。すると、どうなるか? 毎月返済をするごとに手元のおカネは減っていきます。借りた当初は必要なだけのおカネがあったとしても、返済するごとにおカネが不足していくということです。
そこで、「短期継続融資」という借りかたがあります。具体的には、「当座貸越」や「手形貸付」による融資です。
当座貸越であれば、銀行が定めた「一定の限度額(極度額)」まで、会社が自由に借りたり返したりできます。つまりは、借りっぱなしにできるということです。
手形貸付は、会社が銀行に対して支払期日1年以内の手形を振り出し、おカネを借ります。ただし、期日がきたら審査のうえで期日を更新することで、やはり、借りっぱなしにできます。
というように、返済期日は短期でも、継続的に借りられるのが「短期継続融資」です。長期の分割返済に比べて、会社の資金繰りがラクになることはわかるでしょう。経常運転資金の金額が大きい会社ほど、その効果は大きくなります。
逆に、経常運転資金の金額が大きい会社が、長期の分割返済で融資を受けていれば、資金繰りは厳しいものになっているはずです。取引銀行(基本はメインバンク)に相談をして、短期継続融資に切り替えてもらいましょう。
ただし、当座貸越は、比較的規模が大きく、業績が良い会社に限られる傾向があります。また、信用金庫や信用組合よりも、地方銀行のほうが積極的です。
銀行からの融資セールス
銀行の決算時期(9月・3月)の少し前あたりになると、取引銀行から「融資を受けませんか?」とセールスされることがあります。もっと露骨に、「おカネを借りてください」といわれることもあるでしょう。
いうまでもありませんが、銀行にも「営業目標(ノルマ)」があるからです。決算に向けて、融資残高を積み上げる必要があります。なので、目標に足りなければセールスもしなければいけないのです。
このとき、お断りするのも1つの選択ではありますが。基本的には、融資を受けることをおすすめします。
理由の1つは、会社が借りたいときに借りられるとは限らないから。借りられるうちに借りておきましょう、ということです。理由の2つめは、セールスを受けることで銀行との関係性がよくなる可能性があるから。あまり期待をすべきではありませんが、銀行に恩を売る効果がゼロではないでしょう。
とはいえ、それでも「そんなに借りたくない」「借りる必要はない」とおもわれるかもしれません。そのときには、短期で借りることも検討してみましょう。つまり、銀行の決算日までは借りて、決算日を過ぎたら返済します。銀行としては「それでも、ありがたい」ということはあるでしょう。
この場合には、短期の借入となりますが、銀行との関係性が深まり、以降の融資が少しでも受けやすくなるのであれば、資金繰りも良くなるわけですからメリットです。逆に、融資セールスを断れば、そのメリットは得られないことになります。結果、相対的に資金繰りは悪化します。
なお、当座貸越を利用できる会社であれば、自社の決算日前には、当座貸越で少しでも借入をしておくのがおすすめです。なぜなら、決算書(勘定科目内訳明細書)に当座貸越の借入が記載されるので、それを見た銀行から「当座貸越を利用できるくらい良い会社」だとの評価を得られるからです。
これにより融資が受けやすくなるのであれば、資金繰りを良くすることに役立ちます。
まとめ
銀行からおカネを借りるのであれば、長期で借りたほうがいいのかというと。必ずしもそうではありません。なぜなら、短期で借入しないと資金繰りが悪化することもあるからです。
会社が考えるべき短期の借入について、押さえておきましょう。
- 賞与資金・納税資金の融資
- 短期継続融資(当座貸越・手形貸付)
- 銀行からの融資セールス