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他行の動きを気にする銀行と会社はどう付き合うのがよいか

他行の動きを気にする銀行と会社はどう付き合うのがよいか

融資の審査で見られるものの1つに、「他行の動き」があります。というわけで、他行の動きを気にする銀行と、会社はどう付き合うのがよいか? についてのお話です。

目次

A銀行はB銀行を気にしている。

会社が融資を受けるときには、銀行の審査をクリアしなければいけません。審査のなかで見られるものはいろいろあります。有名どころでいえば、決算書です。でも、それだけではありません。

たとえば、「他行の動き」が挙げられます。A銀行とB銀行から融資を受けているのだとすれば、A銀行から見たときのB銀行、B銀行から見たときのA銀行は他行です。

その他行がどのように動いているかが、融資の審査に影響します。ということを、意外と知らずにいる社長もいるようです。そこで、本記事では、他行の動きを気にする銀行と会社はどう付き合うのがよいか? をテーマにお話をしていきます。

話の内容は以下のとおりです↓

本記事の内容
  • そもそも一行取引はマズい
  • 業績が良いときにどうするか
  • 業績が悪いときにどうするか

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

そもそも一行取引はマズい

冒頭、銀行は「他行の動き」を気にしている、という話をしました。ではなぜ、銀行は他行の動きを気にしているのでしょうか?

ひとことでいうなら、競争意識です。A銀行から見れば、B銀行には負けたくない。B銀行から見れば、A銀行には負けたくない。というのが、競争意識です。

いまでこそ、銀行どうしの「再編(提携・統合・合併)」が進んでいますが、その手前には、銀行どうしの生き残りをかけた争いがあるわけで。競争をしいられてきた背景があります。

では、自社が「1つの銀行としか取引をしていない」という場合はどうでしょう? この状態を、「一行取引」などと呼びます。

まず覚えておきたいのは、「そもそも一行取引はマズい」ということです。もしかすると、1つの銀行と親密なお付き合いをするのがよい、とおもわれるかもしれませんが。

ウラを返せば、その銀行からしか借りるすべがない状態… ともいえます。すると、お付き合いをしている銀行から「足元を見られる」ことが少なくありません。

つまり、金利が高くなったり、過剰な担保や保証を求められたり。銀行からすれば、「ほかに借りるアテがないのだから、多少ムリを言ってもとおるはず」という考えです。

それよりなにより、金利が高くなっていることや、過剰な担保や保証を求められていることに、社長が気づいていないケースも少なくありません。ほかの銀行とお付き合いをしていないので、比べる基準がないからです。

なので、銀行融資を受ける会社は、複数の銀行とお付き合いをすること。複数の銀行どうしを競わせるようなカタチで、融資を受けやすい環境・融資条件がよくなる環境をつくるのがセオリーです。

業績が良いときにどうするか

それでは、複数の銀行から融資を受けていることを前提に、自社の業績が良いときにどうするかを確認していきましょう。

融資先の業績が良いときには、どの銀行も「貸したい」と考えているものです。とはいえ、業績(数字)にはあらわれない問題があるかもしれませんから、ほかの銀行の動きにも注目します。

たとえば、A銀行、B銀行、C銀行の3行から融資を受けている場合。A銀行であれば、B銀行やC銀行が融資を増やしているか、少なくとも、融資が減っていないか、を確認します。

そのうえで、B銀行やC銀行が融資を増やしているようであれば、「ウチも負けずに貸さなければ」となるでしょう。さらには、「B銀行やC銀行の融資分も、ウチで取り上げて融資をしよう」とさえ考えることもあります。

いずれにせよ、会社から見れば「借りやすい」ということです。

借りやすいうちに借りておくのはもちろん、銀行どうしを上手に競わせることで、自社に有利な融資条件を引き出すようにしましょう。各銀行が「貸したい」と考えているうちであれば、融資条件の交渉もしやすいからです。

具体的には、「借入金一覧表」を作成して、それを各銀行に提示しながら、より良い融資条件の提案を求めるのがよいでしょう。

また、取引銀行の変更を考えているのであれば、業績が良いときに実行しましょう。いまはA銀行をメインバンクとしてお付き合いをしているが、B銀行をメインバンクに変えていきたい、といったケースです。

このとき、A銀行の融資残高が減少していきますが、他行の動きを気にする銀行は「なにか問題があったのか?」と考えることがあります。つまり、A銀行は融資先に不安を感じて回収をはかっているのではないか、ということです。

とくに、A銀行はメインバンクですから、本来、積極的に融資するはずのA銀行が融資残高を減らすのはおかしい… ということにもなるでしょう。結果、ほかの銀行も融資を躊躇する、回収をしはじめることになれば、会社は困ってしまいます。

この点、業績が良いときであれば、ほかの銀行がメインバンクの動きに追随するのを抑えやすくなるものです。また、あらたにメインバンクになる銀行も、メインを引き受けやすくもなるはずです。

したがって、お付き合いする銀行を変えるのであれば、業績が良いうちにしましょう。なお、メインバンクをA銀行からB銀行に変更した場合、C銀行は「なにかあったのか?」と心配になります。メインバンク変更の経緯を伝えておくとよいでしょう。

お付き合いする銀行を変えるだけではなく、あらたにお付き合いする銀行を増やすのも、業績が良いときがベストタイミングです。あらたにお付き合いする銀行もまた、他行の動きを見ますから、業績が良く融資が増えている状況であれば、はじめての融資もしやすいものです。

業績が悪いときにどうするか

自社の業績が悪くなると、どの銀行も融資に消極的になることはわかるでしょう。すると、どこかの銀行が融資をしなくなることで、負の連鎖を招くケースが少なくありません。

たとえば、A銀行、B銀行、C銀行の3行から融資を受けている場合。A銀行が融資をしなくなるのを見たB銀行とC銀行も融資をしなくなる… ということです。

これを防ぐのに必要なものが、メインバンクになります。前述したとおり、メインバンクとは本来、積極的に支援するはずの銀行です。それは、融資先の業績が悪いときでも変わりません。

したがって、ほかの銀行であれば融資を躊躇するような場面でも、メインバンクであれば融資を受けられることはあります。

これにより、ほかの銀行もメインバンクに追随して融資をしてくれたり、あるいは、ほかの銀行が融資をしてくれなくても、メインバンクがその分をあわせて融資をしてくれることはあるものです。

ただし、メインバンクといっても、自社が勝手にそう考えているだけではいけません。銀行のほうも「自行がメインバンクだ」と考えていなければいけません。自社がメインバンクだとおもっていても、銀行がそうはおもっていないケースもありますから気をつけましょう。

では、どうしたらメインバンクになってもらえるのか。その銀行とのコミュニケーションを深めることです。

一般的に、取引銀行のなかでいちばん融資残高が多い銀行がメインバンク、との見方がありますが。それは、表面的な要素に過ぎません。本質的には、自社の商売(ビジネスモデル)や将来性を理解してもらえているかどうかです。

とはいえ、一朝一夕にはいきませんから、定期的に試算表を提示するなかで会話量を増やし、少しずつ理解を深めてもらう必要があるでしょう。これを、業績が悪くならないうちに進めておくことが大切です。

その結果として、融資残高が多くなる。だから、融資残高がいちばん多い銀行がメインバンクになるものと考えておきましょう。

話を戻します。業績が悪いときには、メインバンクに融資を求めるのが先です。メインバンクから融資を受けることができたら、その情報をほかの取引銀行にも伝えます。メインバンクの融資が確認できれば、ほかの銀行も融資をしやすくなるはずです。

この順番が逆になると、融資が受けづらくなりますから気をつけましょう。

まとめ

融資の審査で見られるものの1つに、「他行の動き」があります。というわけで、他行の動きを気にする銀行と、会社はどう付き合うのがよいか? についてのお話をしてきました。

自社の業績が悪いときに、他行の動きが問題になることは少なくありません。自社の業績が良いときに「できることをやっておく」という考え方・行動が大切です。

他行の動きを気にする銀行と会社はどう付き合うのがよいか

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